第210話 お出迎え
「俺が巻き込んだみたいな感じになってごめんね」
「いえ!全然大丈夫です!むしろ助かってるくらいです!」
俺は集合場所である学園の練習場にソフィと共にやってきた。というか留学生が来る場所が何も無い練習場でいいのかと思ったのだが、どうやら獣人とドワーフ側の希望らしい。俺を指定して、集合場所が練習場って…もしかして戦う気満々?
俺達が集合場所に着くと、既にシャナとクラウディアさんはその場に集まっていた。なので、まずクラウディアさんに今日からの事を謝った。特に気にしてなく、むしろ喜んでいたのでよかった。
ちなみに助かってるというのは、留学が来ている間は授業を受けなくても良くなるからだそうだ。しかも、上手くできたら、登校しなくてもテストだけで良い俺達と同じ状態にしてくれるらしい。それにしても、上手くできたらって何だろう?留学生達から高評価だったらってことなのかな?
「あ、来たみたいだな」
ぞろぞろと誰かが話しながら歩いてくるのが聞こえる。というか、話し声が聞こえてきたのは獣人のベクアとドワーフのグラデンの声だけだけど…。
そして扉を勢いよく開けて留学生達が入ってきた。
「ゼロス!久しぶりだな!!」
「久しいな!会いたかったぞ!!」
扉が開いてすぐにベクアとグラデンから大声でそう言ってきた。これを言ってきた相手が女の子だったらどれほどよかっ……。いや、男同士の友情も良いものだな!だからソフィ…重力魔法を解いてくれないかな?かなり重いよ?
「初めまして俺はゼロス・アドルフォと言います。それでえっと…ベクアの後ろの2人とグラデンの横にいる2人はどちら様?」
ベクアの後ろに隠れている獣人の2人と、グラデンの横にいるドワーフと2人は初対面だと思う。前回の対校戦に参加していた2人とも違う。ちなみにエルフはエリーラただ一人だった。
「それはあとから紹介するわ!とりあえず…!」
そこまで言うと、ベクアは俺に向かって走り出した。そしてゆっくり腕を振りかぶった。
そしてそのまま殴りかかって来たので剣の腹で受け止めた。周りから見たら勢いよく殴っただけだが、俺からするとわざと受け止められるように手加減して殴ったのが分かった。
「前のリベンジをさせて貰おうか」
「普通は自己紹介が先だと思うけど?はぁ…分かったよ」
多分自己紹介よりも先に俺が戦った方が都合が良い何らかの理由があるのだろう。…あるよな?早く戦いからとかの理由だったら後で引っ叩くぞ。
「では、ゼロス対ベクアの模擬戦を行います。両者準備はいいですか?」
「大丈夫」
「ああ!」
「では、始め!」
俺は剣を構えて、ベクアは拳を構えた。ベクアは相変わらず素手のようだ。
今回、俺達の模擬戦の審判をするのはソフィだ。もし命が危ないと判断した時はすぐにソフィが止めに入る。
「雷電トリプルエンチャント、雷電纏」
「氷雪鎧」
俺は始まってすぐにトリプルエンチャントと雷電纏を使った。一応まだ追加でハーフエンチャントと精霊降臨は使えるが、魔力消費などを考えて残しておいた。そして、何よりも厄介なのは、ベクアが多分進化してるってことなんだよな…。
「行くぜ!」
「来いよ」
ベクアが勢いよく俺に向かって来た。ベクアは身体に氷と雪を纏っている。攻撃する時に雪が自由自在に形が変わっている。そして雪の中から尖った氷が飛び出たりしている。前戦った時の氷だけよりも、遥かに戦いにくくなっている。
「へぶっ!ぶはっ!」
でもその程度ならソフィの魔法の方がよっぽど嫌だ。ソフィの魔法は理不尽の塊だ。とりあえずあれが見たいので一方的にベクアをボコった。ベクアは剣の刃で攻撃しても氷や雪で防いでくれるので、剣を振り切れるので楽だ。これで俺が苦戦しているようだと見たいものを見してくれずに終わりそうなのでベクアには一旦距離を摂ること以外に何もさせる気は無い。まあ、これが模擬戦ではなく試合とかならもう気絶とかさせようとするんだけどね。
「うそ…兄者が完全に遊ばれてる…」
「で、でも…ベクア兄様にはまだ奥の手が…」
外野からそんな声が聞こえてきた。ベクアの後ろに隠れていた2人の獣人はどうやらベクアの弟と妹だったようだ。一応戦闘中なので、耳を細かく確認して何の獣人か判断はできない。
「くそったれ…まるで相手にならねぇーじゃねーかよ!」
「悪態をつくなら笑いながら言うなよ」
ベクアは一旦俺から距離を取って言葉とは裏腹に楽しそうな良い笑顔でそう言った。
「でも、何で仕留めようとしないんだ?仕留められる場面はいくらでもあっただろ?」
「見たいものがあるからな」
「これがみたいんだろっ!獣化!!!」
そう言うとベクアは一旦氷雪鎧を解除した。そして普通の人型から3m程の白い熊へと変わった。
今までのベクアは熊のような形を模した氷と雪を纏っていた。しかし、今は熊に氷と雪を装備したような姿になった。一応俺は獣王の親戚?でもある種族なので、獣と契約したことによる獣化を見てみたかったのだ。
「待たせたな…」
「熊でも喋れるのか」
ベクアはいつもよりも少し低い声で話しかけてきた。ちなみにベクアは獣化が完了するのに1分程かかった。もしかすると獣化を取得したのは割と最近だったのかもしれない。まだそこまで獣化に慣れていないように見える。
「グガァ!」
そしてベクアは四足歩行で突進するかのように向かって来た。もしかすると、獣化させる前に勝った方が良かったかもしれない。でも、これは模擬戦だからベクアには全力を出して欲しい。なので、これで良かっただろう。
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