第209話 明日の予定
「疲れた……」
「まあ…こんだけ模擬戦やれば疲れるよ」
俺とシャナだけでも模擬戦は何十回とやった。そして最終的にはシャナの鎌が頬に掠った。
「これだけやっても掠るだけって……」
「まあまあ」
ちなみにシャナのレベルは80ほどらしい。単純にレベル差20もある相手に勝つことはほぼ無理だろう。
「やっぱり、ゼロス達兄妹はおかしい。うっ…思い出しただけで気持ち悪くなってきた…」
「大丈夫?」
「大丈夫…だと信じたい」
今は俺がシャナを背負いながら森から帰宅中だ。なぜ背負っていることかと言うと、シャナが疲れて目を開けられなくなってしまったからだ。そうなった原因の大部分は俺では無い。
俺に攻撃が掠ったので、最後にシャナとソフィで模擬戦を1回だけしてから終わろうということになった。その際にソフィの深層心理を見てことでこうなったのだ。
「何で前に模擬戦した時よりもお兄ちゃんで大量にあるの…。もうこれじゃあもう一種の洗脳…」
シャナは時間短縮のために、深層心理を見た時には、「見えた情報から必要な情報を選んで読み取る」のでは無く、「見えた情報を片っ端から読み取っている」らしい。だからソフィが考えている俺の事が延々と脳内に入ってきたそうだ。
「私もゼロスのことを好きなんだと錯覚するくらいいっぱい入ってきた…」
多分その効果がまだ少しあるのだろう。シャナは俺の背中にぎゅっと強くくっついている。というか普通にソフィが俺の事を好きなのがシャナにバレちゃってるけど良いのかな?
「ソフィア、明日の事分かってるよね?」
「はい。もちろん分かってますよ」
「明日なんかあるの?」
模擬戦の話が終わると、2人が明日の事を話し出した。俺は何も聞いていないので、きっと2人の共通の予定なのだろう。
「…もしかして、ゼロスに伝えてない?」
「伝えてませんよ」
「いや…伝えてなさいよ」
どうやら明日の予定とやらはソフィによって意図的に伝えられていなかったようで、俺にも関係あるみたいだ。
「それで明日の予定って何?」
「明日はお兄ちゃん、私、シャナの3人で留学生をお迎えするんですよ」
「あ、そっか」
そういえば、もうそんな時期なのか。改めて考えると、登校しなくてもテストだけ合格すれば進級できるの凄いな。
「そっか、エリーラが留学してくるのか」
タイミング的に留学してくるのはエリーラだろう。何だって一緒に王都に来たし。おそらく、女王は多分その事を王城に伝えに行ったのだろう。
「はい。それと獣人、ドワーフも留学してきます」
「…もうそれって全部じゃん」
どうやら、留学してくるのはエリーラだけでは無いそうだ。
「でも、それって対校戦はどうするの?」
1つの国に留学生が集中してしまうと、他の国の学校が勝つのは難しいと思う。ちなみに、今まで1つの国に留学生が集中するなんて状況はなかったそうだ。
「その辺は国王様が各国と協議中」
「まあ、そうだよね」
留学生を参加禁止というのは少し難しいだろう。今まで参加出来てたのに急にじゃあ不参加でって言われたら不満が出てくるだろう。本当にどうするつもりなのだろうか。
「明日から留学生の面倒頑張ろう」
「ええ、頑張りましょう」
「…明日…から?」
俺が今聞いたのは明日にお迎えをするというものだ。決して明日以降にも何かをするとは聞いていない。
「留学生の滞在中のお世話は私達に一任されました」
「嘘…だろ…」
普通そういう大事な事はもっとちゃんと学園に通っているような真面目なお方がやるべきだ。俺みたいなおかしな奴がやるべきではない。
「何でも留学生側からの希望らしいですよ。滞在中はゼロス・アドルフォと行動を共にしたいという。でも、流石にお兄ちゃん1人では大変そうだからって私達が付けられたんです」
「2人ともありがとう…」
「それと、私の要望で世話役にクラウディアも追加しておいた」
「クラウディアさんにも明日、お礼言わないとな」
どうやら留学生側の希望は俺だったらしい。2人とクラウディアさんは俺に巻き込まれた立場の様だ。ちなみに、ソフィアも知らなかったようだが、明日のお迎えにもクラウディアさんが来てくれるそうだ。
それにしても、エルフ側が俺を指名するのは分かるが、獣人とドワーフが俺を指名するのは分からない。あっ…そういえば、対校戦か終わった後のパーティーで、ベクアがすまんっと謝っていたな…。余計な事を持ち込まれななければいいが…。
「ですので、明日からは頑張りましょうね」
「頑張ろう」
「そうだね…」
もし、学園を退学すれば留学生の相手をする必要は無くなるがそれは出来ない。両親から将来に何かやりたい事が急にできた時に、学園卒はかなりのアドバンテージになるから卒業だけは絶対にしなさいと言われている。冒険者なら学園卒は必要無いんだけどね…。
もうすでに明日は面倒事の予感しかしないが、決まってしまったのなら仕方が無いから頑張るとしましょう。
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