第211話 獣化
「グガァ!」
ベクアは突進の勢いのまま腕を振り下ろしてきたので、それを躱した。その後も何度も腕を振って攻撃をしてきた。それらは全て躱した。
「そうか、なるほど…雷電ハーフエンチャント」
俺はある事を確信したので、一気に勝つためにトリプルエンチャントにハーフエンチャントを追加した。
「ふっ!」
「ガァッ……」
まずはベクアの腹を殴り付けた。すると、腰が引けて顔が下がってきたので、顎を蹴り飛ばした。
「ガア゛…」
「はぁっ!」
「グブッ……」
顎を蹴られたせいで仰向けに倒れようとしているベクアの顔面を殴って頭を地面に叩き付けた。すると、ベクアの獣化は解除された。そして俺は左手に持っている剣をベクアの首元に当てた。
「参った…」
「そこまで、勝者ゼロス」
そのタイミングでベクアが降参を口にして模擬戦は終了した。気絶しているかと思ったが、ベクアは意識保っていた。相変わらず頑丈なようだ。
「…お前獣化できるようになったのいつだよ」
「何とかここに向かうぎりぎりで取得できたから…2週間と少し前くらいだな!」
「はぁ…やっぱりかよ」
獣化での攻撃を見た時から本当に獣化に慣れていないのだと分かった。攻撃は大振りで単調。そして氷雪鎧も見た目だけで、機能はほぼしていない。だから剣ではなく殴って攻撃したのだ。
「なら留学なんかしないで自分の国で獣化をもっと練習しろよ…」
別に留学しないという選択肢もあったはずだ。獣化を練習するなら絶対に他にも獣化できるであろう獣人が居るところの方が上達も早いだろう。
「獣化は誰かに教わったらダメなんだぜ。俺がここに留学してきた目的の1つはゼロスと好きなだけ戦えるからだ!それなら獣化もすぐに上達するだろうからな!」
「教わったらダメなのか?」
「ああ!もし例え同じ種類の獣と契約したとしても、その獣は同じ種類ってだけで同じじゃないからな!」
ベクアの説明を簡単に言うと、同じ種類の獣と契約しても、その獣が攻撃特化だったり、スピード特化だったりと細かい所を含めると違う所はとても多いらしい。それなのに誰かに教わると、自分の長所を無くしてしまうかもしれない。だから少しのアドバイスを貰うのは良いそうだが、肝心の戦闘スタイルは自分でどうにかしないといけないみたいだ。
「それで他にこの国に来た目的は?」
さっきは、ここに来た目的の1つが俺と戦うことだと言っていた。他にも目的があるような言い方だった。
「おう!あと目的は2つある。1つはお前に獣と契約して貰って獣化してもらうことだ」
「いや、ごめん、それは無理だわ」
俺はベクアに精霊2人と契約しているため、獣と契約をすることは無理だと説明した。
「それは困ったな…。まあ、それはこっちで色々調べてみるぜ!」
無理だと説明したが、どうやらベクアは諦めないようだ。俺は契約できるならしたいので少しだけ期待してようかな。
「それで最後の1つの目的だが……」
「ん?」
ベクアはそこまで言うと、チラッと連れてきた獣人2人のことを見た。すると、その獣人2人が勢いよく走ってきた。
「すごい!本当に兄者よりも強い人間がいるなんて!信じられない!すごいよ!」
「べ、ベクア兄様よりもつ、強い……」
「紹介するぜ。俺の弟のウルザと妹のキャリナだ。ちなみにこいつらは双子で、ウルザが狼の獣人で、キャリナが猫の獣人だ」
とことこと現れたのは、ベクアの弟と妹だった。ウルザは灰色の髪とケモ耳で、目は赤色だ。そしてキャリナは濃い紫色の髪とケモ耳のショートカットのくせっ毛だ。そして2人とも身長は150cm程で同じくらいだ。ウルザは女の子と言われても納得してしまうほどの美少年だし、キャリナは守ってあげたくなるような感じの美少女だ。
「あっ!オッドアイ!」
「ぁっ…」
キャリナの右眼が水色で左眼が金色だった。俺がついオッドアイ!と言うと前髪で隠してしまった。
「オッドアイいいな〜、すごく綺麗、羨ましいな」
「えっ…?き、綺麗?う、羨ましいの…?」
「ん?綺麗だし羨ましいよ?」
もしオッドアイだったら俺は何か魔眼的なものに目覚めたかもしれない。様々なスキルで色んなことができるようになったが、魔眼にはすごく憧れる。
「ぐ…ぐずっ…」
「え!?ごめん!何か嫌なこと言ったか!?」
キャリナが急に泣き出したから俺は超慌てた。その様子を見ながらベクアは笑っていた。
「ゼロス、気にしなくていいぞ。ただ、獣人だとオッドアイは不吉だみたいな習わしが少しあるんだ。親族以外に初めてオッドアイを褒められたから喜んでるんだ」
獣人にそんな習わしがあるとは知らなかった。キャリナを傷付けるようなことを言ってしまわなくてよかった。
「いてっ」
「私が少し目を離した隙に何でフラグ立ててるんですか…。私を放置してそんな事しているなんて、お兄ちゃんはいい度胸ですね」
ソフィが練習場の修復を終えて俺たちのところまでやってきた。流石にこれくらいでフラグは立たないと思うから大丈夫だろう。
「話を戻すと、俺が対校戦で負けたと言っても信じないほど、こいつらの中で俺は最強だったんだ。だからお前らに会わせて世界の広さってやつを教えてやりたかったんだ」
ちなみにベクアより強い獣人は両手の数以上はいるそうだ。しかし、その獣人達は全員30歳ほどで今が全盛期だそうだ。だから双子もその獣人達には勝てないのが当たり前だと思っていたんだそうだ。だからほぼ同い年でベクアに勝てるやつなんて存在しないと思っていたらしい。
「そろそろ俺らも話をしていいか?」
「ああ、待たせたみたいで悪いな。好きなだけ話していいぞ」
ベクアの話が一段落着くと、今度はグラデンに話しかけられた。
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