第157話 更に2ヶ月半後の急展開

「今日は残りの魔物を全て殺したら終わりだ」


「了解!!」


精霊降臨の訓練が本格的に始まってから2ヶ月と半月ほど過ぎた。つまり、訓練開始から4ヶ月以上経過した。




「これで終わり!」


最後に剣を振って雷斬を出して止めを刺した。半月前から魔物討伐中は精霊降臨をして良いことになった。そのおかげで、一日で倒せる魔物の数が増えた。しかしそのせいで、一日で魔物がいなくなる度に何度も移動しなければ行けなくなった。

そして今日でレベル98になった。あと2つレベルを上げれば進化できる。ちなみに精霊降臨の魔力漏れの件はまだ試行錯誤中である。でももう少しで上手くいきそうな手応えがある。



「じゃあ今日もやるぞ」


「はい!」


そして帰る前にジュディーさんとの模擬戦が始まった。これは初めて模擬戦をしてから毎回している。そしてここ最近は、精霊降臨とダブルエンチャントと雷電鎧の3点セットを使い始めている。








「はぁ…はぁ…」


「今日はここまでだな。次は明日だな」


「わかりました…」


いつも通りジュディーさんには一撃も入れることが出来ずに負けた。しかし、進展はある。俺が精霊降臨を含めた3点セットを使うようになってからは、ジュディーさんも精霊降臨をするようになったのだ。そして、魔物討伐に精霊降臨をするようになってからは、精霊降臨の練習日が水の日と光の日の週2になった。だから週4は魔物討伐だ。そのおかげで最近はレベルが早く上がる。


「よし、じゃあ帰るぞ」


「はーい…」


そして今日もいつも通り、走るジュディーさんを追いながら帰っていった。









「どうした?」


俺が急に立ち止まったのを見て不思議に思ったのか、声をかけてきた。今までこんなふうに立ち止まるなんてことは無かった。木の根に躓いても止まることはなかった。


「…お前は誰だ?」


「………」


エミリーさんの言いつけで常に魔力感知をするようにしている。魔力感知のスキルレベルが上がると、相手の魔力量なんかも何となくわかる。それでジュディーさんの魔力量が急に変わったのがわかった。いや、変わったと言うより魔力量が分からなくなった。そしてジュディーさんの走り方も少し変わった。俺はもう何百回もジュディーさんの背を追い続けている。走り方が変わったことくらいすぐに気がつく。見た目はジュディーさんなのにこいつはジュディーさんではない。


「バレちゃった。レベルだけじゃなくて、スキルもここまで成長してるとは思わなかったよ。これは嬉しい誤算だよ」


そう言うと体の表面ががドロっと溶けていった。そして本来の姿であろうものが見えてきた。


「え…?」


「久しぶりだね」


そして現れたのはあの僕っ子だった。意味がわからない。


「今は争うつもりは無いからそう警戒しないでよ。僕でも傷つくんだよ?」


「………」


それを聞いても警戒し続けている。今は…ということはいつかは争う気があるということだ。


「改めて自己紹介をするね」


そう言うとにっこりと可愛らしく笑いながら自己紹介を始めた。


「僕は魔族の長をやってるイムだよ」


「え…」


そして証拠を見せるかのように、両手をドロっと液体のように溶かした。


「今日は君にお願いをしに来たの」


「…お願い?」


「うん!今日のところはお願いだよ」


今日のところは…ってことはそのお願いを聞かなかったらどうなるのだろうか?考えたくもないな…。


「そのお願いの内容を言ってもいい?」


「出来れば言わずに帰って欲しいんだけど」


「じゃあ言うよ」


今になって気がついたが、体が震えている。それはあのドラゴン魔族よりもこの僕っ子改め、イムの方が強いと本能的にわかっているからだ。


「あなたには魔族になってもらいたいの」


「………無理に決まってるだろ」


俺と魔物を組み合わせてキメラでも作る気か?そんなんじゃないと俺が魔族になるわけが無い。


「何言ってるの?君には便利なエクストラスキルがあるじゃん」


「っ!?な、なん…の、こ、ことだ…」


「とぼけても無駄だよ?」


「………」


なぜバレている?俺はその事だけで頭がいっぱいだった。


「それで魔族限定の称号を獲得したらきっとあなたも魔族にも進化できるよね?」


「なっ……」


その俺は不覚にも、その提案はできるかもと思ってしまった…。



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