「ﾌﾞﾋﾋﾋ！」

「ｶﾞｧ……」

デブオークが人型ドラゴンに何か言うと、こちらに人型ドラゴンが歩いてきた。どうせ言われたのは俺を殺せとかそんなことだろう。

「精霊ジール、雷ダブルエンチャント、雷電鎧」

俺は急いで最強セットを使った。下手するとさっきのオークもどきと同じように瞬殺されてしまう。それだけは全力で避けなくてはならない。そして人型ドラゴンはいきなりスピードを上げて攻撃を仕掛けてきた。

「ｶﾞｧ?」

「はぁ…はぁ…」

人型ドラゴンの攻撃は一撃で終わった。それはただのパンチだった。しかし当たるだけで即死レベルの攻撃でもあった。それを何とか躱して距離を取る事ができた。人型ドラゴンは躱されるなんてことを考えていなかったのだろう。今も首を傾げている。そして傾げた首を元に戻すと再び攻撃を仕掛けてきた。その攻撃は三撃だったが、いずれも大振りな攻撃だったので躱すことができた。

「ｶﾞｶﾞｧ….」

人型ドラゴンがニター…っと笑った気がした。ドラゴン顔なので表情なんて分からないが、そんな気がした。俺はゾワッと背筋が凍った。そしてそこから悪夢のような時間が始まった。

「ｶﾞｶﾞｧ!!」

「くっ…」

人型ドラゴンはまるで新しいおもちゃで遊ぶかのように俺に攻撃を仕掛けてきた。ただただ楽しい！そんな感じで俺は殺されそうになっている。こいつはステータスが俺より遥かに高いが、技術が乏しい。そのおかげで今も何とか生きることが出来ている。

「くそっ…」

そして俺が距離を取ってMPポーションを飲もうとすると、人型ドラゴンは飲み終わるのを待っている。そして飲み終わって俺が構えると再び向かってくる。

「轟け！サンダーバースト！」

剣で攻撃している余裕は全くないが、並列思考で何とか魔法を放つことができた。今のうちにMPポーションを飲んだ。

「ｶﾞｶﾞｧ!!」

「…嘘だろ」

魔法による砂煙が晴れると、無傷な人型ドラゴンが出てきた。もう正直心が折れそうになった。この魔法は俺の魔力をほぼ最大値使った。それなのに無傷というのはもう無理だろ…。

「ｶﾞ…ｶﾞｧ?」

そして人型ドラゴンは何か変な動きをしている。一体何をしたいのだろうか？

「ｶﾞ…ｶﾞｧ!!!」

「！？」

そしていきなり口を大きく開けて巨大な火の玉を放ってきた。俺は慌ててその火の玉を斬り裂いた。

「ｶﾞｯｶﾞ!」

「は、はは…」

さっきの変な動きは魔法を使おうとしていたみたいだ。これって俺の真似だよな…。俺が魔法を使ったから使ったのだろう。今でさえ俺よりも強いのにまだ強くなる気かよ…。俺は今にも折れそうな心で再び向かってくる人型ドラゴンのなんとか相手した。

「ｶﾞｧ!!」

「はぁ……はぁ……はぁ…」

人型ドラゴンは膝を着いた俺に早く起てというかのように叫んだ。あれから今度は一点集中の雷魔法を全力で放ったり、他の属性の魔法を全力で放ったりも、どうにか隙を作らせて剣で斬りかかったりもした。けど人型ドラゴンは無傷だった。さらに人型ドラゴンは俺と戦いながら確実に強くなってきている。最初は大振りの全力パンチしかしていなかったのに、今では蹴りもフェイントもジャブも使っている。それらは最初は試すかのように始めていた。まるで俺で実験しているかのようだ。そしてまだそれらの新たな攻撃はぎこちないので何とか躱すことが出来ている。でもそのぎこちなさもだんだん無くなってきている。そろそろ躱し続けるのも限界だ。

「ｶﾞｧ？」

人型ドラゴンはもしかしてもう限界なの？みたいな視線を向けてくる。あれ？俺はいつから魔物の考えまで読めるようになったんだ？というかこの魔物は俺が思考を読めるほど深く考えれる知能あるってことだよね…。

「ｶﾞｧ!!」

「…ははっ…もう無理だよ……」

そして俺が立ち上がるのを待ちながら、人型ドラゴンは上を向いた。何をするのかと思ったが、人型ドラゴンは口から炎のブレスとレーザーの様なものを出した。ブレスは10m、レーザーは50mほど上空まで届いていた。そして少し離れている俺にも熱が伝わってくる。俺は雷を纏っているのにも関わらず。もう心が完全に折れてしまった。何をやっても通用しない。俺はまだ全ステータスはまだ2倍になっているのに。何をしても勝ち目がない。でも時間稼ぎとしての役割は十分果たしたしもういいだろう…。