第135話 変なオーク達
「…ゼロ」
「ああ…」
オークのような得体の知れない魔物を目の前にして俺は頭が真っ白になっていた。しかし横にいるジールに声をかけれて冷静になることができた。この魔物が何なのかは分からない。でもきっとこの魔物が今回のオーク大量発生の原因だろう。
「雷、火ダブルエンチャント…!」
俺はジールに目線で合図を送ってから真っ直ぐ走り出した。俺が接近戦をして、ジールには後ろから遠距離支援をしてもらう。そのため、ジールをエンチャントするわけにはいかない。なので攻撃重視のダブルエンチャントを使った。雷電鎧はスタミナの関係上、このエンチャントでマズいとなった時に使おう。
「は?」
しかしオークもどきはバラバラに散った。だからと言って俺から逃げるているわけでもない。一定の距離に離れてこちらを見ている。
「…誘っているのか?」
その様子はまるで1対1で戦おうと言われているように感じる。どこまで勝ち進められるかな?といった感じだろうか?いや…これは考えすぎだろう。
「…ジール1人で勝てる?」
「勝てるな」
「なら右をお願い!」
「分かった!」
わざわざ1対1にしてくれるならそれの方が俺達は助かるので、1対1で戦うことにした。俺はジールとは反対の左のオークもどきに走っていった。
「はぁっ!!」
「カブゥ…」
一太刀入れてわかったのは、1対1なら絶対に勝てるということだ。まだ一騎当千が発動しているのでステータスはこちらの方が上だ。それにそこまでこのオークもどきは戦い慣れていない。剣の攻撃も腕でガードするせいで毎回傷が入っている。
「これで最後だ!」
「ブカッ…」
そして約5分間一方的に何度も剣で斬り続けてた。オークもどきの体はあちこちに傷がついている。そしてその傷を庇うように動いたせいで首が無防備になった。その隙を逃さず、俺はオークもどきの首を斬り落とした。すると脳内でアナウンスが流れた。
『ピコーン!』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『【称号】ドラゴンスレイヤー を獲得しました』
え?こいつドラゴンなの?ドラゴンよりは色的にワイバーンの方が近いと思う。【称号】収集のおかげで、獲得するのが緩和しているとはいえこのオークもどきはドラゴンと関係あるのだろう。俺は急いで不眠不休を外してドラゴンスレイヤーをセットした。なぜ外す称号を不眠不休にしたかと聞かれても、称号を上から見て、今必要ないと思ったのがそれだったからだ。今は戦闘中なので無駄に時間は使えない。
「「ブガガ……」」
「ちっ…」
そして今度は2体のオークもどきが攻撃を仕掛けてきた。俯瞰の目の範囲外にいるジールを横目でチラッと見ると、まだオークもどき1体と戦っていた。ジールは1人でも時間があれば倒せそうなので俺は2体のオークもどきに集中することにした。というか1対1で戦ってくれるという予想は外れたのか。
「くそっ…!」
俺は一旦距離を取ってMPポーションを飲んだ。今、俺は5体のオークもどきと戦っている。あれから2体組を倒すと次は3体組…3体組を倒すと4体組…4体組を倒すと5体組…というように倒す度に1体ずつ追加されていくオークもどきと戦っていた。何故かこいつらは俺が一旦距離をとっても追いかけてこない。だが、逃げる素振りを少しでもした瞬間に囲んでくる。何がしたいかがまるで分からない。ちなみにジールは2体のオークもどきと戦っている。ジールは魔力を温存しながら戦っていて、俺が危険になったらすぐに手を出せるように常にこちらに注意を向けていた。そしてオークもどきと会ってから大体1時間ほど経っている。MPポーションも無限にある訳では無いしどうしようか…。ジールと雷のダブルエンチャントと雷電鎧で一気にこの場にいる全員を倒そうかと考えていたその時だった。
「ガアァァァァァァ!!!!!」
つい耳を塞いでしまうほどの大音量の雄叫びが森の更に奥から聞こえてきた。これはまずいと急いでジールを俺の中に戻して、いつでもジールをエンチャントできるようにした。
「いつっ…」
『おい…ユグ!』
『しょうがないじゃん!こうしないとゼロ君は…』
急に頭の中を直接鈍器で思いっきり殴られたような鋭い痛み襲ってきて、思わず蹲ってしまった。その時に何やら俺の中でジールとユグが言い争っている声が聞こえたが、痛みに耐えるのに必死でその話の内容までは分からなかった。
「やっば…」
こんなところで蹲っている場合ではない。痛みは少しづつ和らいでいるので、急いで顔を上げた。そして周りを見ると、オークもどきは膝を付いて頭を下げていた。
「ブヒヒヒヒ……」
すると森の奥から大きさ4m強の赤い鱗のあるオーク5体が現れた。その5体は悪趣味な何かの骨で作られた輿ごと、それに乗ったものすごく太っているオークを担いでいた。もう自力で立てるかどうかも分からないほどデブなオーク。そいつが座っている悪趣味な輿。それを担いでいる5体の赤い鱗のオーク。という3つのこれ以上ないほどのインパクトのある光景を目にしておきながら、俺の目線はそんなものを見ていなかった。俺の目線はそれの横でただ1体の歩いているやつに注がれていた。俺がさっき戦っていたオークをもどきと、今回現れた5体も少しデブい豚顔のオークに、鱗と鋭い手足の爪を装着したような姿だった。だが、今回俺の目線の先にいるやつは違った。痩せた筋肉質な全身が赤黒い鱗に覆われている。更にドラゴンの様な鋭い尻尾、そしてドラゴンの様な顔だった。正しく人型のドラゴンのようなものだった。
「ブヒヒ!!」
悪趣味な輿の上のオークが何か言うと、オークもどき達は一斉に人型ドラゴンに攻撃を仕掛けた。
「ガァァ…」
そして人型ドラゴンに瞬殺された。何が何だか分からなかった。とりあえず人型ドラゴンを観察すると、身体中に今のでは無い血の跡が付いていた。でも傷は見えなかった。
「あっ…」
その時に1つの仮説が立った。もしかしてオークキング達は全てこいつに殺されたのではないか?という仮説だ。何故そんなことをするのかと聞かれたら、レベル上げのためとしか言えない。魔物にもレベルがある。レベルが上がると強くなる。この人型ドラゴンのレベルアップのために、何千ものオークを犠牲にしたのだろうか。そして今までの俺に対する変な攻め方は人型ドラゴンがレベル上げをする時間稼ぎだったのだろうか?
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