第134話 オーク軍団討伐

「「「ブモォーー!!!」」」


俺が街の外に出るとオークの鳴き声が聞こえてきた。まだ目視では見えないにもかかわらず鳴き声が聞こえるということはかなりの数がいるのだろう。


「ふぅ…ジールよろしく」


「派手にやっていいんだよな?」


「ごくっ…うん。思いっきりやっちゃっていいよ」


まだオークが見えないうちにジールに魔力をほぼ全て渡しておいた。そして俺はMPポーションを飲んで減った魔力を回復させた。ソフィから貰ったMPポーションは最大MPの70%を回復させるという効果の少し高価なものだ。他にもMPを100、200回復させるというのもあるが、ある程度MP量が増えてしまえば%で回復させる方が安上がりで効率的だ。

そして数分経つとオークの軍団が走ってきているのが見えてきた。あれ?どう考えても、その数は千体ちょっと程しかいない。数千と言っていた情報と異なる。そしてここからではオークキングも見当たらない。後ろにでもいるのだろうか?どこか聞いていた情報との違いに違和感を感じた。


「いくぜ!!雷龍!」


そして俺の魔力を貰ったジールが魔法を放った。今回は素材回収をする余裕なんて無いのでジールには遠慮なくやってもらった。ジールは文字通り雷の龍を放った。その龍はオーク達を縦横無尽に駆け回った。そして、その魔力を無駄にしないために、魔法が消える寸前で龍は俺の元へとやってきた。俺はジールの雷龍の魔力を吸収して、再び魔力がほぼ満タンになった。そして頭の中ではレベルアップのアナウンスが何度か鳴った。


「ジール行くぞ!」


「おうよ!」


俺は再び魔力を半分以上渡した。そして今度は常に雷吸収を使ってジールの放った魔法を吸収できるようにした。俺達は効率重視のために別行動でオークを撃破して行く。


「回復、雷ダブルエンチャント!」


千を越えてはいるが、ジールと一緒なので一対千にならない。だから一騎当千が発動しないかもしれないと思っていた。だが、ジールは俺とセットという認識なのかは分からないが、一騎当千は発動している。そのため、俺の全ステータスが2倍になっている。なのでダブルエンチャントの片方を回復魔法にしてもオーク達の相手をするのにかなり余裕がある。今1番気をつけなければならないのが、スタミナ切れなので回復魔法をエンチャントした。スタミナだけはポーションでも回復できない。


「はぁっ!!」


俺はオークの軍団の中を駆け回りながらオークを2本の剣で斬りつけていった。俺の俯瞰の目はこういった集団戦で1番役立つ。俺の周りでオーク達がどう動いているのかが全て見える。









「これで最後だ!」


「「ブモォ…」」


最後に纏まっていた2体のオークを斬りつけた。これでオークの軍団を全て討伐した。ジールが雷龍を放ってから1時間と少しで終わった。途中でオークがちりちりに逃げ出したので、思ったよりも時間がかかってしまった。


「ジール…」


「ああ、これはおかしいな…」


俺達が不安がっているのは、オークキングが一体も見当たらなかったということだ。ちなみにオークメイジやオークウォリアーなどのオークの上位種は一応少しはいた。だが、どの上位種も弱かった。正しくは低レベルだったと言った方がいいかもしれない。俺は鑑定を持っていないのでステータスを見ることが出来ないが、戦い方が全く分からない…と言うよりも生まれたてのようにすら見えた。



「行くしかないかな?」


「…そうだろうな」


もう目的を達成したので父様達と合流してもいいかもしれない。しかし俺がいなくなった瞬間にオークキングが街を占拠したりしたらまずい。そしてまだ戦闘が終了してないという判定なのか、全ステータスが2倍になっている。たから一旦引いてから行くよりも今行った方がいいだろう。一応隠密を使って慎重に森の奥へと歩いて向かった。




「どこから来たのか分かりやすいのはいいね」


「そうだな」


オーク達が大勢で通ったことによってオーク達が来た方向が丸わかりになっている。だが、逆に分かりや過ぎるので、どこかに誘われている気がしてしまう。しかし魔物にそんなことを考える知能はあるのか?俺の考え過ぎだろうか…?









「「「ブガガァッ」」」


「……」


そして十数分ほど歩いて行くと、まるで俺を待ち構えているかのように立っている20体近くのオークと対峙した。先頭のオークと俺は完全に目が合っているので今から逃げるなんてことは無理だな。きっと逃げたらずっと追いかけてくるだろう。どうやら隠密が効かなかったみたいだ。俺は今よりもさらに警戒しながらゆっくりオーク達に近付いた。


「っ!!?」


オーク達に近付いたからこそ分かったことがあった。それはオーク達が4m弱程の大きさだったことだ。ちなみに資料で見たオークキングの大きさは3mくらいだった。だからこのオーク達はオークキングよりも大きいということになる。しかしすぐにそんな大きさのことなんて気にならなくなった。

なぜなら、このオーク達の体の至る所に緑の鱗が付いていたからだ。


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