第125話 依頼完了

「護衛お疲れ様、報酬はギルドで貰ってね」


「ありがとうございました」


「ありがとうございました」


蛇の魔物以降は特に魔物は現れなかったので、無事に護衛依頼を終えることができた。あれからはソック達も野営の準備を手伝ってくれたので楽になった。そしてわかったことはソックが俺達…というより俺の熱狂的なファンというだけで、他のメンバーの俺達に対する気持ちは普通に尊敬している人?という括りの方が近い。ソックはできるだけ俺の真似をしようとしているようで、今回もパーティを代表して依頼主に感謝を伝えたらソックも真似した。真似するのは全く問題ないのだが、常に正しいことをしなければならないという謎のプレッシャーがある。



「俺達はちょうどいい王都までの護衛依頼があったらそれをやりながら帰るけどソック達はどうするの?」


「俺達はここで少し討伐依頼を受けてから帰ろうと思います」


俺達は護衛依頼を受けたかっただけなのでこの街に何か用事があった訳では無い。なのですぐに帰るつもりだったが、ソック達はここで討伐依頼を受けるようだ。





「じゃあまたな」


「ありがとうございました」


ギルドに依頼完了の報告に行くと、ちょうどよく今から王都に向かう護衛依頼の定員が空いていた。その依頼を受けたのでソック達とはここで別れた。









「疲れた〜」


「さすがに疲れましたね」


「ふぃ…」


王都に帰ってきたが、休み無しの往復護衛依頼は少し無理があったようで疲れた。護衛中の3日間は特に何も問題が起こることがなかったからこそ暇で大変だった。


「依頼完了報告行くか〜」


「そうですね」


「ん…」


今日は夕方なので報告して解散の予定だ。明日は休むか話し合ったが、皆んなストレス発散のために魔物を討伐したいとの事だったので、普通に依頼を受ける。



「人多いね…」


「そうですね」


「…ん」


ギルドに着くと、ちょうど夕方ということもあるのかギルド内が混雑していた。いつもは人が少ない時を狙っているので、ここまで多いのはあまりない。依頼完了報告は今日必ずやらなければいけない訳でもないので、今日は帰って明日報告することにした。


「ちょっと待って」


「またですか…」


再び後ろからギルド長が現れた。こんな忙しそうなのに俺たちに構っていていいのか?


「君達はちょっと特殊だからギルド長室で私が依頼完了してあげるわよ」


ギルド長は隠密でも使っているのか俺達…いや、俺以外には見えていないようだ。2人とも急に止まった俺を不思議そうに見ている。そんな2人に事情を説明してギルド長に着いて行ってギルド長室へと向かった。また面倒なことを押し付けられるかもしれないが、なんやかんや依頼料もいいので素直に着いて行ってしまった。



「これで依頼完了」


ギルド長はテキパキとものの数十秒で帰りの護衛依頼完了と行きの護衛依頼の追加分を払ってくれた。一応気を使ってくれたのか、行きの護衛依頼はソック達と同じ依頼料しか貰っていなかった。追加は嘘だったのか?と少し心配してたけど無用な心配だったようだ。



「ちょっとソフィアちゃんとシャイナちゃんは席を外してくれるかな?」


「嫌でs…」


「ソフィお願いできる?」


「………わかりました」


ソフィが凄く渋々部屋から退出した。本来ならあまりギルド長とは2人っきりになりたくないが、今回は初めて真剣な顔をしていたので2人に席を外してもらった。


「今回の護衛依頼は私としてはあなたのためになると思って受けさせたの。冒険者として下に慕う人がいることはとても大きいわ。でも、無理やり受けさせたのは悪かったと思う。謝罪するわ」


「…え、急にどうしたんですか…?」


正直頭の中が真っ白になった。何か面倒事を起こしてしまったのかと思っていたが、まさか謝罪されるとは思わなかった。まだ上から目線ではあるが、これは立場柄仕方がないだろう。


「シャドウに怒られたの」


『事情が分からず失礼な事を言うなら致し方ないが、ある程度察しているのにも関わらず今回のようなことは許されない』


ギルド長の影から黒い人型の精霊が現れてそう付け足した。


「別に問題ないよ?ゼロくんも誰かに振り回されるのには慣れてるし、良かれと思ってやった事だもん」


今度は俺からユグが出てきて膝の上に座った。まあ出てきたと言っても、出してって言ってきたユグを俺が出したのだが。ちなみに膝の上に座ったのはユグの意思だ。俺は横に座れるようにしたはずだ。それよりも、俺は振り回されるのに慣れたくないんですけど…。


「でも、もし今回のことに少しでも悪気があったら……分かってたよね?」


「申し訳ありませんでした」


『二度とこの様な事が無いようにさせます』


いつもは、にこにこしていて可愛らしい女の子のようなユグから2人が咄嗟に頭を下げてしまうほどの圧が出ている。それなのに真後ろにいる俺には全く影響はない。契約者だからか?


「なら問題ないよ!シャドウまたね!」


そしてユグは再び俺の中に戻ってきた。なんというか自由奔放って感じだな。


「要件はこれだけだから退出して構わないわ」


「わかりました」


本当に今回は謝罪をするためだけに2人きりになったようだ。


「あっ、あなた達が倒した蛇みたいに最近この辺で見ないはずの魔物が王都周辺にも出現してるから気を付けてね」


「わかりました」


部屋から出る直前にそれを聞かされた。こういった時はラノベの異世界物だと大体強い魔物に怯えて逃げているという展開なので注意しておいた方がいいだろう。


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