第117話 伝説の剣
「ここが第3宝物庫だ」
まず最初に第3宝物庫に案内してもらった。第3宝物庫の見た目はとても豪華でいかにも宝物庫という感じだった。そして国王様が第3宝物庫を開けると、俺とソフィ、シャナの3人以外はこの宝物庫の中で欲しいものを探し始めた。その場に監視役のための騎士達数人と、第3宝物庫にある物の一覧のようなものを持った人達を残して俺達は第2宝物庫へと向かった。
「そしてここが第2宝物庫だ」
第2宝物庫は第3宝物庫よりも見た目は質素ではあるが、第3宝物庫よりもどこか頑丈そうに見える。
「では、この中から好きな物を選びたまえ」
国王様が扉に触れると人知れずに扉が開いた。そして国王様の許可が出たので俺たち3人は欲しいものを探すために中に入った。
「広いな……」
「広いですね」
中はとても広かった。普通の一軒家分の広さはありそうだ。
「2人ともこっち来て」
「ん?」
「どうしました?」
急にシャナが俺たち2人を引っ張ってどこかに案内した。
「なんだこれ…!」
「凄いですね」
シャナに案内してもらったところにはデカい大剣が刺さった石の台座が置かれていた。グリップと、見えている剣身から考えると、大剣の全長は2m以上程はありそうだ。
「抜いてみて」
「俺?」
「うん」
シャナが俺にそう言ってきた。俺は台座の上に登って大剣を握った。もしかしてこれは俺が武器屋を見る度に欲していた伝説の剣なのではないか?
「ふぅ…よしっ!」
緊張して手が震えてしまっているので1度深呼吸をしてから大剣を抜こうと引っ張った。
「……抜けない」
俺は抜けなかった。でも別に抜けなくてもいいだろう!俺がこんなバカでかい大剣を抜いたところで使い道無かったはずだ!俺の戦闘スタイルは二刀流だ!自分のスタイルを変えてまでこの大剣を使いたいとは思わなかったもん!はぁ…使うかは別として抜きたかったな…。
「ゼロ兄様、ソフィにもやらしてください」
「え?ソフィもやるの?」
大剣を握ったまま落ち込んでいると後ろのソフィからそう声をかけられた。ソフィに大剣は俺以上に必要ないと思うのが、やる必要があるのだろうか?
「はい。抜けたらゼロ兄様にあげるためにやろうと思います」
「…剣泣くよ?」
剣としてはやっと自分にふさわしい相手が見つかったのにすぐ別の人に渡されるってことだ。剣の気持ちを考えるととても可哀想だ。でも欲しいと思ってしまう自分を否定できない…。
「んっ…!」
そしてソフィも俺と同じようにグリップを持って大剣を引っ張った。
「抜けませんね」
ソフィも抜けなかった。ソフィも俺同じく結構な力を込めたみたいだが抜けなかったようだ。いや、なんなの?この大剣?
「シャイナもやりますか?」
「私は1度やって抜けなかったからいい」
「え?やったことあるの?」
「うん」
話を聞くと王族は10歳の誕生日にこの第2宝物庫に入ってこの剣を抜けるか試すらしい。
「この剣ってなんなの?」
「わかんない」
「えー……」
この剣はこの国の初代国王であった勇者が使っていた剣と書物に記述されているだけでそれ以外の情報は何も分かっていないらしい。なのでこの剣は少なくても数百年誰にも使われていないらしい。
「私はこの第2宝物庫は1度入ったことあるからとりあえず案内するよ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
シャナにこの第2宝物庫を一通り案内してもらいながらどこにどんなものがあるかを教えてもらった。そしてそれが終わると今度は個人で欲しいものを探し始めた。
「……力ずくで抜けないかな?」
俺はどうしてもこの大剣が気になってしまったので戻ってきた。選ばれた人じゃなくても無理やりなら抜けるなんてことはないかな?
「よしっ…」
今度は力ずくで抜くために大剣の鍔を握った。
「雷鎧、精霊ジール、雷エンチャント!!」
俺の最強3点セットを全て総動員して大剣を思いっきり引っ張った。この国に帰る途中に馬車の中で試したが、雷鎧の雷も吸収できた。しかし吸収している間はその分だけスタミナの減りも激しくなった。だからあまり意味がなかった。ちなみに雷鎧と帯電の同時使用はまだ試していない。明日にでも試したい。
「ふんーー!!!!」
雷鎧で雷吸収して魔力を得るなら10秒ほどは全く問題なくこの3点セットが使えるのは帰りに試した。それ以上やるとスタミナか魔力のどちらかが枯渇し始めてしまう。なので引っ張っていられるタイムリミットは10秒だ。
べキッ!!
「えっ!!」
ちょうど10秒のところで大剣からやばい音が聞こえてきた。台座から聞こえてきたならまだ良かった。大剣から聞こえてきたのが問題だ。3点セットを解除して恐る恐る大剣を見てみた。
「やっば……」
大剣が綺麗に縦に真っ二つになっていた。上から見てみるとグリップの部分まで綺麗に割れていた。剣身を触ってみても確かに割れている。台座で見えない部分までは分からないがどうしよう……。
「ゼロ兄様どうかしましたか?」
「いや!なんでもないよ!」
ソフィが纏っていた雷の音を聞いたのかここにやってきた。慌てて大剣から手を離して、体全体を使って大剣を隠して何も無かったことを表現する。いや…これは明らかに大剣を隠している格好だな…。
「その大剣がとうかしたのですか?」
「あ、いや…」
ソフィは俺の後ろを覗くようにして大剣を見てしまった。まあどうせいつか誰かにバレるのなら早くバレた方がいいか…。という気持ちでソフィに隠すのを諦めた。
「…別に何もなっていないじゃないですか?」
「え!?」
慌てて後ろを振り返るとそこには無傷の大剣がそこにあった。
「ゼロ兄様も早く欲しいものを決めましょうね」
「そ、そうだね…」
何とかなってほんと良かった。あれ?でも壊したとしても台座ごと貰えば問題なかったのかな?いや、でも抜けなければ渡すことはできないとか言われるのだろうか?
「驚かせるなよ」
慌てさせられた仕返しとして軽く大剣を殴った。これくらいの八つ当たりはいいだろう。
べキッ!
「ぬぇ!?」
「ゼロ兄様?」
「なんでもない!!」
嘘だろ!?軽く殴っただけで再び割れてしまった。慌てて手を離すと再び大剣は元通りに戻った。
「なんだ…?」
今度は軽く大剣に触れた。すると再び大剣は割れた。手を離すと元に戻る。これを何度か繰り返した。
「ねえ、ソフィー!」
「なんですか?」
「ちょっと大剣に触ってくれない?」
「??いいですよ?」
欲しいものを探しているソフィを呼んだ。そしてソフィに大剣を触ってもらった。すると何も起こらなかった。
「ありがとう、もう大丈夫」
「?」
ソフィはきょとん?としながら欲しいものを探しに戻った。つまり俺が触ると割れるということなんだろう…。そして俺は雷鎧と精霊ジールエンチャントを使ってもう一度大剣を引っ張ってみた。雷をエンチャントするのはスタミナ的にも魔力的にもキツイので諦めた。
「やっぱり抜けないよな…」
割れているだけで大剣はうんともすんとも言わない。一体これは何なのだろうか?
「…わからん」
いくら考えても結論は出ないので、この大剣は諦めて俺も欲しいものを探しに向かった。
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