第114話 パーティー1

「はぁー…」


「ゼロ兄様、行きますよ」


「わかってるよ…」


結局昨日は帰ってすぐに寝てしまった。そして起こされた時にはあと2時間ほどでパーティーが始まるからと、急いで準備をさせられた。その2時間でエリーラとベクアになんて言おうか考えた。エリーラには精霊王のユグのこと以外は正直に言ってもいい気がする。そしたら留学した時に精霊魔法を教えて貰えるかもしれない。ただ問題なのが、最上位精霊の中でもジールはユグのお世話係として偉いというのがバレた場合はとても面倒なことになりそうだ。そしてベクアは…どうしようか…何も考え付いていない。



「ゼロ兄様、着きましたよ」


「うん。そうだね…」


そして会場に着いて、偉い人からの話を聞かされてパーティーが始まった。正直この国の偉い人には興味が無いのであまりちゃんと聞いていなかった。そんなことよりもその話している人達は何を考えているか感情が全く読めなかったことが気になった。分からなくするような魔道具でも付けているのだろうか…?いや!それよりもパーティーが始まったので急いで隠密を使って隅っこの方に移動しないと。


「どこに行こうとしているの?」


「あはは…」


隠密を使ったにも関わらずエリーラに捕まってしまった。


「ちょっといいわよね?」


「はい…」


俺はエリーラに連れられてバルコニーのようなところに移動した。もしかして俺達が初めてなんじゃないか?パーティー始まって1分くらいで何も持たずにバルコニーに移動するなんて。


「それでちゃんと説明してくれるのよね?」


「説明するよ」


話さないと帰さないという雰囲気があったので、もうある程度のことは諦めて精霊王であるユグのこと以外は話した。





「ごめんなさい。ちょっと整理させて…」


「ど、どうぞ」


そして全てを話し終わったらエリーラは顔を下げながら頭を抑えて何か考え出した。そして3分ほどそうしていると急に顔を上げた。




「まず何個か質問させて貰うわよ?」


「どうぞ…」


そしてそこからはエリーラの質問タイムが始まった。


「その精霊魔法を教えてくれたっていうエルフの名前は?」


「ごめん、分からない」


ギルド長はギルド長としか呼んでいないので、そう言えば名前を知らない。


「そのエルフの契約している精霊の属性は?」


「闇」


「そう」


一応これはギルド長の個人?情報だが別に名前は言ってないから誰かわからないからいいよね?


「実際に地面に書いた魔法陣の形は?」


「ごめん、詳しく覚えてない」


「あなたの他に精霊魔法を使える人間はいる?」


「分からない。けど俺以外で使えるって言うのは聞いたことがない」


質問に答えながら思ったが、俺は精霊魔法関連のことほとんど知らなかった。帰ったらギルド長に詳しく聞こう。




「…そう。ありがとう」


その後も何個か質問が続いたが、エリーラは最後にそう言ってバルコニーから出ようと歩き出した。よかった…。エリーラについては何とかなったようだ。あとはベクアか…。



「あ、もう1つ聞いてもいいわよね?」


「な、何?」


何かを思い出したかのように急に振り返ったのでびっくりして吃ってしまった。何とかなったと安心した後にそれはやめてほしい。


「あなたの契約している精霊は本当に雷の最上位精霊でいいのよね?」


「う、うん」


一瞬ドキッとしてしまった。実際俺は雷の最上位精霊のジールと契約しているので嘘にはならない。しかし去り際にこんなタイムリーな質問をされるとは思わなかった。


「(おかしい…女王様は雷の最上位精霊だけは大嫌いだって公言してたはず……)」


「ん?何?」


「なんでもない。ありがとう」


そう呟いてエリーラはバルコニーから出ていった。その前に何か言った気がするが何も聞こえなかった。もしかして俺はよく漫画やラノベにいる難聴系主人公と同じことをしてしまったのだろうか?しかしあれはどう頑張って聞こうとしてもこの位置からでは聞こえなかった気がする。


「よう!ゼロス!ここにいたか」


「あっ…」


そしてエリーラと入れ替わるような形でベクアが入って来た。


「それじゃ…少し話そうや」


「あっ!その前に飲み物と食べ物取ってこない?」


「おっ!それもそうだな!」


ベクアの手にも何も持っていなかったので、どうにか少し時間稼ぎをして何をどう言うか考えた。ちなみにソフィとシャナをチラッと見たら、他の国の男の人達に囲まれていた。あっちはあっちで大変そうだ。


「じゃあ話すか」


「ああ…」


料理を取って、再びバルコニーに戻ってきた。だが結局何を言うかは考え付いていない。本当にどうしようか…。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る