第102話 代表戦1日目 午前

「これより!代表戦1日目を始めます!!」


「「「わぁーーー!!!」」」


代表戦の1日目が始まった。一昨日はみんなでサバイバル戦の祝勝会として学園長の奢りで少し高級の夕ご飯を食べた。そして昨日は少しでも強くなるためにそれぞれ特訓をした。


「では!ルールを確認します!」


そして歓声のために代表戦のルール確認が始まった。代表戦はサバイバル戦のように変な空間でやらず、そのままの闘技場の舞台内で行われる。だがそれでも死ぬほどのダメージを負ったら場外に出される結界は存在している。なので代表戦も本物の武器を使う。そして代表戦では場外に飛ばされて出てしまうということはなく、死ぬほどのダメージを受けて結界の効果で場外に出されるか、降参すると負けとなる。逆に言うと、気を失っても場外に出ない限り試合は終わらない。


「それでは先鋒!入場してください!」


そうアナウンスがかかると武国ガラテインとアナタイト鉱国から1人ずつ入場してきた。まだ午前の部なので俺達が戦う午後の部まで数時間も時間があるけど少し緊張してきた。


「では!先鋒!試合開始!」


そうして代表戦1日目の午前の部の試合が始まった。











「それでは大将!入場お願いします!」


何だかんだでもう5人目の大将同士の対決だ。これまでアナタイト鉱国が3勝1敗で優勢だ。とは言ってもこの点差では大将が勝つと3点なのでこの大将同士の対決で勝った方の国が勝つ。ちなみに両方の国の留学生は中堅、副将、大将と最後にに固まっていた。ドワーフと獣人の対決はパワー対決で見ていて楽しかった。


「では!……ん?どうしました?」


そして試合開始をアナウンスしようとしたが途中で止まった。なぜなら急にベクアが正面のグラデンから目線を逸らしてキョロキョロし始めたからだ。


「っ!」


そしてキョロキョロしているベクアと観客席で試合を観察していた俺の目が合った。するとベクアは体の向きを俺の方に向けて俺に向けて指を指した。称号の以心伝心が合っても顔の表情も見えないし、距離もそれなりにあるので何を伝えたいのか分からない。そしてベクアは再び前を向くとグラデンと何か話している。当然観客席まで会話が聞こえてくるわけはない。だがお前は眼中に無いとばかりのベクアの行動に文句を言っているのだろう。


「よ、よろしいですか?」


そのアナウンスにベクアとグラデンは頷いた。そしてベクアはガントレットを付けた腕でファイティングポーズを取り、グラデンはハンマーを振りかぶって構えた。


「で、では!大将!試合開始!」


そのアナウンスがかかるとベクアは全身に氷の鎧を纏ってハンマーを構えているグラデンに向かって行った。








ドカンッ!

ドカンッ!

ドカンッ!

ドカンッ!

ドカンッ!



「おい…まじかよ…」


何とベクアは俺が一撃でも食らったら一発退場だと思ったグラデンの爆発するハンマー攻撃を全く防御せずにずっと食らっている。また、そのおかげで攻撃だけに専念しているベクアの攻撃をグラデンは食らい続けた。

グラデンの攻撃でベクアに全くダメージが入らないのでもう勝負は決まったも同然だ。



「しょ、勝者!べクア・ルキウェル!」


「「「わぁーーー!!」」」


そして着々とダメージを受け続けたグラデンは場外に出されて負けた。


「よって!1日目午前の部!勝者!武国ガラテイン!!」


「「「うぉーーー!!」」」


正々堂々の殴り合いで観客たちのテンションは上がっていたため、歓声はとても大きかった。



「ベ、ベクア選手?どうしました?」


勝者のアナウンスがかかると勝った選手は退場する。しかし歓声が鳴り止んでもまだベクアは退場していなかった。そのためどうしたのかとアナウンスがかかった。

そのベクアはというと歓声が鳴り止むと再び俺の方を向いて指を指した。そしてゆっくりと闘技場から出て行った。


「なるほどね……」


そこまでされたらさすがに何が言いたいか分かった。要するにベクアは俺にこう言いたいのだろう。


『この氷の鎧を砕いて俺を退場させるほどのダメージを与えて勝てるのか?』と。


あれは俺がヒビを入れた鎧よりも遥かに硬くなっているだろう。だがあれを砕いてベクアにダメージを与えないと俺に勝ち目はない。


「はぁ……」


これはエルフがどうのこうと言っている場合では無くなったかもしれない。


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