第103話 代表戦1日目 午後1

「ゼロ兄様はあの獣人をどうやって倒すのですか?」


ベクアの試合を見て、うーん…っと唸っていたら隣で一緒に試合を見ていたソフィに話しかけられた。ソフィにも指を刺したのは俺に対する挑発と分かったようだ。


「どうやってあの氷の鎧を突破してダメージを与えるか…なんだけどわかんないんだよね…」


「え?わざわざ相手の土俵で正面から相手するつもりなんですか?」


「え?」


「…え?まさかそのつもりだったんですか…」


「あはは…」


ソフィの言う通りだ。確かに近接戦で真っ向から勝負するつもりだった。でもソフィの言う通りわざわざそんな事しなくても試合に勝てばいいだけだもんな…。


「ソフィならどうする?」


そこで話題を少し逸らしてソフィならどうやって戦うかを聞いてみた。


「そうですね…とりあえず効きそうな魔法を試してから効果があった魔法で地雷でも作りますかね?」


「効きそうな魔法?」


「はい。きっと氷の鎧を作っているのでさすがに火とかの熱対策はしっかりとしているでしょう。なのであえて凍らせるとか生き埋めにするとかなんかが効果的だと思います」


「ほ、ほうほう…」


「それにゼロ兄様と同じように魔法を消せる能力があるらしいですね。しかし魔法が苦手な獣人はゼロ兄様が私のストームを斬り消した時のように、強力な魔法を一撃で消すなんてことはできないでしょう。なので強力な魔法を連発なんかも効果的かもしれませんね」


「…さすがだね。ソフィは…」


「ありがとうございますっ!」


やはり作戦を考える力は俺よりもソフィの方が格段に優れている。ちなみにベクアに俺と似たように魔法を殴り消せると伝えたのは俺だ。


「ベクア対策を一緒に考えてくれる?」


「はい。もちろんです!しかしまずはそれよりも今日の試合ですよ?」


「もちろん!ちゃんとわかってるよ!」


代表戦だからといっても別に何もかも俺一人でやる必要は無い。確かにいざ戦う時は1人だが、この大会はチーム戦だ。俺は作戦を立てるのが上手くないのでそこは適材適所でできる人に任せよう。決して俺が作戦を考えるのが面倒とかではない。


「では、まだ少し早いですが移動しましょうか!」


「そうだね」


ちなみにシャナはやりたいことがあると言って俺達とは別行動している。きっと今頃は俺達と同じように代表戦の控え室に向かっているだろう。


「お待たせしました!それでは代表戦1日目午後の部を始めたいと思います!!」


「「「うぉーーー!!」」」


「それでは先鋒!入場してください!」



「き、緊張する…」


「が、が、がが頑張ってください!」

「がんば…」

「応援してます!」

「がんばれ!!」


「い、行ってきます…」


そして俺達の先鋒が闘技場に上がって行った。ちなみに俺達は闘技場の舞台の場外で試合を見ている。そして俺達のオーダーは先鋒に園内戦4位のサロナさんで、次鋒に3位のワッツさん、中堅にシャナ、副将にソフィ、そして大将が俺というのでほぼ固定だ。最初だからということもあってサロナさんはとてもガチガチになっている。ついでにワッツさんも噛みまくりだったので察しが付くが、ガチガチだ。俺も控え室に来るまでは、これほどまででは無いが一応緊張はしていた。だがなんかガチガチになるほど酷く緊張している2人を見ると、なんか逆に冷静になって緊張が解けていった。この2人…これで大丈夫だろうか……。


「では!先鋒!試合開始!」


そうして俺達の試合も始まった。





「ごめんなさい…。」


「だ、だだ、だ、大丈夫!」

「どんまい…」

「大丈夫ですよ」

「ドンマイドンマイ!」


あっという間に負けてしまった。



「それでは次鋒!入場してください!」


「い、行ってくる……」

「がんば…!」

「頑張ってください!」

「がんば!」

「…頑張ってください……」


そして次もガチガチに緊張しているワッツさんだ。なんか残念ながらさっきと同じ展開になりそうな予感がしてしまう…。大丈夫だよな…?



「では!次鋒!試合開始!」









「ごめんなさい…」


「どんまい…」

「次頑張りましょう!」

「ドンマイ!」

「………」



全く大丈夫じゃなかった。やばい…。特に話すことも無いほどにトントンっとテンポよくあっさり2連敗だ。2人とも緊張のあまり硬くなりすぎていて、いつも通りの動きが全然出来ていなかった。相手は留学生でもなかったのでいつも通りの実力が出せていたら、こうも簡単に負ける相手では無かっただろう。




「それでは中堅!入場してください!」


「行ってくるね…」


「負けても私とゼロ兄様がいるので大丈夫ですよ?」

「シャナ…頑張ってね」

「…頑張ってください…」

「…俺たちの分まで頑張ってください……」



「ソフィアが負けてもいいようにちゃんと勝って来て上げる」


ソフィの挑発に答えてから悠々と緊張を感じさせないほど自然に舞台へと上がって行った。



「では!中堅!試合開始!」


そしてシャナの試合が始まった。シャナ以降の相手は留学生だ。そして今の俺達の流れはとても悪い。この悪い流れをここでシャナに断ち切ってほしい。


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