第64話 実力検査
「ソフィはどうする?」
「私は少しやりたいことがあるので気にしなくて大丈夫ですよ」
「わかったよ」
あれからそのまま家に帰った。そして今は夜中の庭である。王都に来てから深夜の特訓をしなくなったがソフィからまた始めませんか?という提案があったので再開することにした。
「とりあえず本気で向かってこい」
「はい…」
「がんばってね!」
そして俺は今から呼び出したジールと模擬戦を始める。今のジールとユグのことは俺以外から見えないようにしてある。そんなことできるなら帰りも俺の中に入らなくてよかったのではないかと思ったがこの状態にするにも俺のMPを使ってしまう。ちなみに俺から出てきても俺にしか触れることができないらしい。なのでジール達を呼び出して魔物の盾にしようとしてもできない。
「雷エンチャント!」
そして今は俺がどれくらいの実力かを測るテストらしい。それによって教えることが変わるらしい。なので本気で向かった。
「遅すぎる」
「は…?」
そしてジールに2本の剣で斬りかかったが2本ともジールの親指と人差し指で掴まれてしまった。剣は触れられるのかよっと思った。
「そして判断も遅い」
「かはっ…」
剣を掴まれたことで一瞬思考が停止すると腹を蹴られた。そして俺が剣を離すとジールの手からも剣がすり抜けた。どうやら俺が持っているものなら触れるらしい。
「俺が相手でよかったな。ユグが相手ならもう腕の5、6本無くなっているぞ」
「ユグはそこまで加減下手じゃないよ!」
腕がそんなに無いってことには誰も何も言わないのね…。もしかして腕を無くして生やしてまた無くすってこと?
「反応は早いんだけどな〜」
「反応はって…」
こいつらにとっては俺は反応しか取り柄がないみたいになってないか?
「ほらっまだまだ来い!」
「轟け!サンダーバースト!」
雷の最上位精霊のジール相手に雷魔法を使って意味があるのか?ということは置いておいてとりあえず俺の中で一番強力な魔法を放った。
「うん。悪くない」
雷が消えると当たり前だが無傷のジールが現れた。あっ周りへの影響全く考えてなかった…。大丈夫かな?
「でも良くもない」
そう言うとジールは俺の前まで移動した。それにしても速すぎて俺の前で止まるまで全く見えない。
「余ったから返すわ」
「やば」
「電撃」
「がっ…」
危機感知が反応して急いで避けようとしたが間に合わず腹に手を当てられて雷を食らった。俺の雷魔法を吸収しやがった。やっぱり雷魔法はまずかった。
「雷の攻撃手段は放つだけじゃないぞ」
「あばばば…」
「ゼロは雷耐性持っているのか」
体が痺れて動かない。雷を食らった体勢のまま固まってしまった。雷耐性あってこれならなかったら今頃気を失ってるだろう。
「お前の雷なら好きに操れるから周りには全く気付かれないようにしておいたぞ」
「ありがとう…!」
なんとか動くようになった体に鞭を打ってどうにか一発は当てようと拳を振り抜いた。
「そうだ。それでいい」
「あはは…もうギブ……」
しかしそれは当たり前のように手で止められてしまった。本当にさっきのが最後の悪あがきだったため、そのまま俺は後ろに倒れ込んだ。
「今日は終わりだ。明日からはびしばし鍛えていくからな!」
「お手柔らかに…」
「それは無理だな!」
「あはは…」
「ユグもお手伝いするからね!」
「ありがとう…」
明日からは地獄のような訓練になりそうなのにどこかそれを楽しみに思っている。ちなみに俺はドMでは無いぞ?ただ前世では俺に期待してここまで協力してくれる人はいなかったから期待されると嬉しいってだけだ。
「ソフィ!ごめん!あとよろしく……」
「ふぅ…え?お兄ちゃん!?なんでそんなにボロボロになってるの!?だ、大丈夫!?生きてる!?」
ソフィの今までで一番慌てている声を聞きながら意識が薄くなっていった。ちなみにジール達は俺が意識を失うと自動的に俺の中に戻ってしまうらしい。だから俺を部屋に戻す係をソフィにお願いした。それにしても俺のことが見えなくなるくらいソフィが集中するなんて初めてだ。しかも気にするなと言っても無理なほど結構俺たちは暴れていたはずだ。ソフィも何かあったのかな?もしかしてとうとう兄離れか?それはそれで少し悲しいな…。
『ピコーン!』
『シスコンを獲得しました』
最後のアナウンスが聞こえる前に俺の意識は完全に落ちてしまった。
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