第63話 ソフィア視点

(よくも私のお兄ちゃんを…)


正直言うと私のお兄ちゃんに何が起きているのか詳しくはわかってはいない。ただあいつのせいでお兄ちゃんに不利益なことが起こっているということはわかる。


『早くしろ』


教会から出てきたお兄ちゃんの反応を見るとあいつに会ったのだろうということが分かる。なら私も会えるはずだ。


「妹ちゃんまでどうしt…ぶっ!!」


「白々しい。私のお兄ちゃんに何をしたの?」


まずは1発殴っておいた。会話はそれからだろう。


「えっとそれは…」


「もう1発欲しいの?」


「あっ!言います!言いますから!!」


さらにまだ話そうとしなかったので脅した。そうするとこいつはお兄ちゃんに起こったことを全て話した。


「結局それってお前の管理不足だよね?」


「………」


「前に私が言ったこと覚えてるよね?」


「?」


「もし次に私のお兄ちゃんに何かしたら…私は何をするって言ったっけ?」


「……あっ」


「ちゃんと思い出したみたいだね」


「い、命だけは…!」


「じゃあ今からお兄ちゃんと私のためになることをしたら考えてあげる」


「え…えっと……」


とは言ったものの今の私にはこいつを殺すほどの力はない。だけどお兄ちゃんのためにも何か貰わなければ割に合わない。


「あっ!君たちと最近仲のいいクラウディアは…」


「それはすでに知ってる」


「え!うそっ!なんで!?えっと…じゃあ…」


こいつは私がお兄ちゃんの近くに寄ってくるやつの素性を詳しく調べないとでも思っているのかな?


「ふふっ…ならとっておきを教えてあげる」


「とっておき?」


その時女神の雰囲気が変わった。今までのふざけたような態度は一変した。今は誰がどう見ても威厳のある神にしか見えない。スイッチを切り替えたような変わりようだ。もう別人にしか見えない。



「そう遠くないうちにあなたのお兄ちゃんは負ける」


「負ける…?私のお兄ちゃんが?」


私のお兄ちゃんはまだ最強と言えるほど強くはない。なので負けてしまうことくらいはあるだろう。


「それも全く手も足も出ずに完膚なきまで叩きのめされるっていうおまけ付きで負けるよ」


私のお兄ちゃんなら勝つことは出来なくても完膚なきまでに負けることは無いと思う。私のお兄ちゃんの反射神経は化け物だ。現時点でも騎士団長とでさえ戦えているレベルだ。それに今は精霊魔法だってある。


「でもその詳しい時期は私にも分からない。明日かもしれないし来週かもしれないし来年かもしれない」


「不確かなの?」


「いや、それは必然だよ。学園を卒業する前に必ず起こる」


つまり4年以内には確実に起こるということだ。しかしそんな話は信じられない。


「詳しく教え…ちっ!」


「時間切れだね」


私の体がだんだんと透け始めた。こいつ…わざと時間ギリギリまで黙っていたな…。でも知れてよかった。その時に私がお兄ちゃんの傍にいるならいくらでもお兄ちゃんを守ることができる。



「あっ!ちなみに傍にいれないからね?その時に彼の傍にあなたはいない。その時になってあなたにできることなんて一つもない。だからわざわざ教えてあげたの」


「それっt」


「またね」


そして私は元の教会に戻ってきた。ちっ…あいつは私がどうやってもここで殺せないっていうのもわかっていた。もともと脅しなんて意味なかった。完全に遊ばれていた。私はあの女神について過小評価していたようだ。そして私は煮え切らない気持ちのままお兄ちゃんの元に戻った。


「ソフィ大丈夫?どうしたの?」


「何がですか?もう遅いので早く帰りましょう?」


「ん?そうだね。そろそろ帰ろうか」


だめだ。私が不安がってどうする。必然を変えられるほど私も強くなればいいということだ。そしてお兄ちゃんの事もさらに強くすればそんなことは起こりえないはずだ。
































「本当はあんな事言っちゃダメなんだけどなー」


これじゃあ女神失格だな〜。まぁ本人に伝えてないからギリギリセーフだよね?でもしょうがないじゃん。このままだと私を一番気持ちよく虐めてくれるゼロス君がまた死んじゃうし。



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