第62話 称号

「じゃあお祈りするか〜」


俺は教会にやってきてそう小さく呟いた。教会は建物自体が大きく目立つので場所は元から覚えていた。


「ゼロ兄様、お先どうぞ」


「祈るのなら一緒に祈れば良くない?」


「私はゼロ兄様の後がいいんです」


「…?とりあえず了解」


とりあえず何を考えているのか分からないが絶対に譲らないという意志を感じるのでまずは俺だけお祈りすることにした。


「はぁ〜」


実家の近くにある教会と同じであいつの像は生意気にも真ん中にある。5歳の時に祈った時は真ん中にあるくらいだから少しは敬った方がいいのかな?とも思っていたが今はそんな気持ちは一切ない。


『おいっ!俺の称号数が上限とかで新しい称号獲得できないんだけど!どうなってんだ!?これじゃあ【称号】収集がただのゴミスキルになってんじゃないか!』


一応片膝を地面につけて祈る体勢をしてはいるが内心は全く祈ってはいなかった。そして一応の女神相手にすごく上から目線になってしまっているが1回殺されているので別にいいだろう。



「まあまあ落ち着きたまえよ」


「ん?」


あの忌々しい声が聞こえたと思って目を開けると俺は転生する前にこいつと会った時と同じ場所にいた。そして目の前には憎きあいつがいた。


「朗報と悲報どっちから聞きたい?」


「この状況で悲報ある事に驚きが隠せないんだけど」


呼び出したということは称号についての謝罪と訂正があるだけで悲報なんて聞かないはずではないか?


「じゃあ先に朗報から話すね」


「お前は全く話聞かないな!」


「ちゃんと称号数の上限を無くしたし、獲得できなかったやつも獲得できるようになったから」


「そこから悲報なんて聞きたくないんだけど」


「で、悲報の方なんだけど」


「だから俺の話を聞けよ!」


さっきから全く会話が成り立っていない。それよりも俺と一切目を合わせないのが気になる。


「称号はいくらでも獲得できるけど…称号の効果が適応されるのは30個までになっちゃった」


「おい…」


「痛た!痛い!んっ…あんっ…」


俺はこの自称女神にアイアンクローをかまして持ち上げた。


「効果があるの30個ってなんだよ!」


「これでも20個だったのを10個も増やして30個にしたんだよ!そこは褒めてよ!」


「褒められるか!」


「いたっ!」


持ち上げた状態で手を離したら女神が地面にお尻を打った。


「だから時と場合で効果が発動する称号を選んで使い分けてね」


「こいつ…」


「もう…そんなに睨まないでよっ…」


「睨みたくもなるわ!」


現時点でもまだ【称号】収集は強力スキルだが強みが減ってしまった。


「あっ!そろそろ終わりだね。ばいばいっ!」


「は?」


急に手を振られたので何を言ってるんだ?と思ったが俺の体を見ると透け始めていた。


「1発は殴る!!」


殴りつけようと拳を振り上げてた。


「あっ」


そして俺は元の場所に戻ってきてしまった。ちっ…あと3秒あれば殴れたのに…。


『精霊王使いをどうにか獲得しました』

『精霊に愛されている者をギリギリ獲得しました』

『前代未聞を頑張ってなんとか獲得しました』


「おい…」


一応まだ教会内なので小さくそう呟いた。

そしてなんだよ!その不安が残る獲得のさせ方は!今後も本当に称号獲得できるんだろうな!


「ゼロ兄様おかえりなさい」


「…ただいま」


まだ若干不機嫌そうに返事をしてしまった。関係ない人にまで態度を悪くするべきではないのですぐに直さないと。


「ふーん…そっか…」


「なんか言った?」


「どうしました?何も言ってませんよ?では私もゼロ兄様のように行ってきますね」


「行ってらっしゃい」


そう言ってソフィも教会に入っていった。

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