第31話 嫉妬
「お疲れ様です。ゼロ兄様」
「あ、ありがとう…」
顔は笑顔なのに目が笑ってないよ…それに言葉が棒読みで感情を込めていませんよ?
「最後2人で仲良く何を話していたのですか?」
「どこが良かったとか悪かったとかの反省会だよ」
「ふーーーーーん…」
模擬戦が終わったら互いにどこが良かった、どこが悪かったなどの反省会をするのがマナーとなっている。第三王子の時は王子にそんな余裕がなかったので反省会が行われなかった。
「本気を出せなかったことを後悔してますか?」
「うん…」
ソフィは雷エンチャントを使おうとしたが、そこで模擬戦が終了となって雷エンチャントを使えなかったことを後悔しているのかを聞いてきた。
「私はあそこで模擬戦が終わってよかったと思いました」
「え?」
「ゼロ兄様の雷魔法は初見で防ぐのはまず無理でしょう。その大事な初めてをこんな模擬戦で、というのはもったいないです」
「ありがとう」
「本心を言っただけですよ」
きっとソフィは実力の全てを出せずに引き分けで終わってしまった俺を慰めてくれているのだろう。
「ただ次にこんなに後悔しそうな時があったら使うからね?」
「その時は今回と違ってそのすぐそばに私がいて、雷魔法を使っていいか悪いかを判断してあげます」
「ありがとう」
「どういたしまして」
ソフィは俺よりも頭がいいのでそういった雷魔法を使うか使わないかの場面でしっかりと正解を出してくれるだろう。
「これにて模擬戦は終わりだ!しかし!まだ社交界が終わるまで時間がある!これから会場に戻って模擬戦の感想を語り合おうではないか!」
ちょうど俺とソフィの話が終わって少しした時に国王様がそう言って、騎士に会場まで案内をさせた。俺は父に元々着ていた服にまた着替えなさいと言われて着替えに行った。そしてまた会場に戻ってパーティの続きをした。
「本日のパーティはここで終了だ!次は入園の時にまた会おう!」
そう言って社交界のパーティはお開きとなった。
「ソフィ…」
「なんでしょうか?」
「恨むよ?」
「ゼロ兄様に想っていただけるなら私は嬉しいです」
「ならこれからはどこに行くにしても一人で行くことにするよ」
「そんなことができると本気で思っているのですか?」
「………」
帰りの馬車の中で俺はソフィに怒っていた。俺は理由もなくソフィに怒っている訳ではない。模擬戦が終わって社交界に戻ると色んな人から囲まれた。大人から子供まで大勢に。あの魔法はどうやって練習した?あの剣術はどうやって練習した?本当の婚約者はいるのか?いないならうちの娘はどうだろうか?せめてお見合いだけでもどうだろうか?など次々と質問攻めにされた。ソフィに助けを求めるために見つめてもにっこりと微笑むだけで全く助けてくれなかった。
「助けてくれないならお見合いの一つくらい受ければよかっt」
「ストーンロック」
「ストーンロック」
「むぐ…」
シャナと違って全身を固められて全く身動きが取れない状態にされた。そしてストーンロックで口枷のようなものを作って口を塞いでエンチャントをさせない徹底ぶりだ。言ったことを後悔するには遅すぎた。本気で無理やり解こうとすればストーンロックも解けるかもしれないが馬車の中でそんなに暴れるわけにはいかない。
「へー…ゼロ兄様はそんなことを言うのですか?でしたら、私のことしか考えられないようにしないといけませんよね?ゼロ兄様が悪いんですよ?」
「ソフィ…」
同じ馬車に乗っている父からソフィに声がかけられた。父親が救世主に見えた。
「ほどほどにな…」
「むぐっ!?」
「お父様、もちろん心得ております」
父にも見捨てられてしまった…そしてその日の夜はソフィの部屋でソフィアを膝の上に乗せて頭を撫でながらソフィアソフィアソフィアと3時間言い続けて紙にソフィアと描き続けた。しかもこの行動のどれか一つでも心がこもっていなかったら首に噛みつかれた。跡ついてないよね?
あ…やばい…冒険者パーティにシャナが入るって言い忘れた…どうしよう……
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