第30話 模擬戦終了

「火エンチャント」


ガンッ!


剣同士がぶつかる時に火エンチャントをしてシャナを吹き飛ばして体勢を崩れさせるつもりだった。しかし多少ぐらついたがすぐにまた体勢を戻して見えなくなった。しかしだいぶシャナのペースが読めてきている。前までだったら風エンチャントなしでシャナの攻撃を防ぐことすら難しかっただろう。称号の以心伝心の効果で相手の行動まで読みやすくなっている。しかしこれだけでは決定打にはならない。魔法としてではなくエンチャントでなら、なんだあれは!と驚かれるだけで済むだろう。出し惜しみして負けるわけにはいかない。



「雷エンチャンt…」


「それまで!!」


「っ!?」


「30分経過しても決着が付かなかったので引き分けとする」


「はぁ…」


もう少し早く雷エンチャントを使うと決心が付いていたら勝てたかもしれない。


「…私どうだった?」


「前よりすごく強くなったね」


「よかった…」


シャナはびっくりするくらい強くなっていた。オークの時だったら俺は雷エンチャントを使わなくてもシャナに勝てていただろう。俺も怠けてはいられないな。


「…学園に入ったら冒険者になるんだよね?」


「なるつもり」


「ソフィア様も一緒?」


「多分ね」


いやきっと絶対一緒だろう。これで俺だけなったとなったら何されるか分からない。


「…2人だけだと足りないことあるよね?」


「ん?」


と言われてまず俺とソフィ2人でパーティを組んだことを考えた。俺が前衛でソフィが後衛だろう。俺の能力だと前衛で攻撃をしながら敵を引き付けられるので盾役はいらないだろう。そしてソフィは回復魔法も使えるのでヒーラーも要らないだろう。となると欲しい人材は決まってくる。


「罠や魔物を探知できる人は必要だろう。それは今の俺とソフィアにはできない。それにできたとしても戦闘中にそれをするのは難しい。自分の身は最低限守れて戦況を見られる人。欲を言えば余裕がある時には前衛を少しやって貰えれば、俺が中衛に混ざれたりできる。だからそんな人をいずれかはパーティに入れたい」


「それ全部私できるよ」


「え?」


「気配探知、魔力探知、罠解除も取得してる。それに隠密で隠れれば自分の身くらいは守れる。それにオークの時みたいにサポートできる」


そこまで言われればシャナがなんて言って欲しいかは分かる。


「どう?私が必要でしょ?」


「シャナが俺のパーティに必要だ」


そう言うとシャナは無表情だが嬉しそうで少し残念そうにしていた。ん?残念そう??


「残念…」


そう言うと懐から球体の何かを取り出した。


「俺にはシャナが必要だって言ったらこれを父様に聞かせて既成事実にしようとしたのに…」


「録音してたの!?」


怖っ!!油断も隙もない!パーティという言葉を抜かしていただけで俺は今頃どうなっていたか……


「…でもパーティに誘ったのは録音したから勝手に冒険者になって2人でやっていたら…これを加工するからね?」


「ちゃんと誘うから…」


どう加工するかは聞きたくない。というか簡単に加工できちゃダメでしょ…


「今度は首に鎖をつけれるように頑張るね」


「違うことを頑張ってくれ…」


最後に冗談を言ってシャナは離れていった。冗談だよね?冗談であってくれよ…


「はぁ…」


後ろを向いてため息を吐いた。後ろの誰が見ても機嫌が悪いです。という顔をした妹様をどうしよう…どうやら俺がシャナと喋っていたのが気に食わないみたいだ。一応模擬戦後ということで乗り込みに行けなかったのだろう…それにパーティにシャナも誘うと俺が言わなければいけないのか…頑張ろう…

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