お前たちの眼鏡を30本ほどよこせ

various(零下)

お前の、お前の、お前の眼鏡をよこせ〜! 30本だけでもいい〜

 駄目だ! 目が疲れすぎてなにもできない!

 とか言いながらも、黙々と作業を続けていたけれど、先日、愛用している眼鏡の一つが真ん中からボキッと折れた。

 一番、大切にしていた眼鏡だったのに! 

 残りの眼鏡は、3つ。こいつらをローテーションさせて使う日々を、これから送らなければならない。

 では、私が持つフザケタ眼鏡たちを紹介しよう。


 ①遠近両用&乱視超特化&ブルーライトカット&ブラウンカラーレンズ。

 ①の眼鏡は、視力と引き換えに何かを差し出さなければならないほどに、強い。何を差し出しているのかというと、安眠、脱力した筋肉、安定した思考回路、金、作業時間、他多数。

 ①の眼鏡をかけることで得られるものは、視力、作業時間、商品、不眠、頭痛、内耳炎、首や肩の張り(凝りを通り越して張る)、他多数。

 視力を得て商品を作ることが可能となるが、頭痛薬の購入により金が減り、不眠と重度の肩や首の張り、内耳の痛みにより、数日間は作業ができなくなる。作業ができなくなるため、その間は商品を作ることができない。

 だがしかし。この眼鏡をかけることで細やかな作業が可能となり、精巧な商品が完成する。

 だがしかし! なんなんだ、この馬鹿みたいな強さは! 何時間もかけていると発狂しそうになる。ああもう、ぶん投げてやる!


 ②遠近両用&乱視・近視特化&ライトブラウンカラーレンズ。

 ②の眼鏡は年代物で、ブルーライトカットが施されていない。主に歯科の仕事中に使用していた眼鏡で、日によって見え方が異なる。というよりも、私の目のコンディションによって見え方が違う。

 とうの昔に戦線離脱していてもおかしくない眼鏡だが、目のコンディションによっては、強力な戦力となる。

 この眼鏡をかけると、細やかな部分を見落とすものの、無難な商品が出来上がる。しかし、やはり細部の見落としが致命的となる場合があるため、ルーペを出動させなければならない。

 まあまあ使える眼鏡だ。

 だがしかし! フレームがすぐに曲がる。レンズを拭いたくらいで曲がるなよ! というわけで、この眼鏡のフレームは、だいたいいつも曲がっている。ああもう、ぶん投げてやる!


 ③遠近両用&乱視矯正そこそこ&ブルーライトカット&ブルーカラーレンズ。

 ③の眼鏡は、全く見えない。ぼやける。スマホの文字も読めない。眼科で処方箋を出してもらって作った最新の眼鏡だが、最悪だ! 

 なんだ、このフザケタ眼鏡は! 作業どころか、日常生活もままならない!

 どうして、こんな酷い眼鏡が手元にあるのだろう。そう嘆いていたけれど、実は、この最新の眼鏡は、なんと視力を1.2〜1.5まで矯正するらしい。

 私の裸眼は、右目が0.03、左目は0.01。ぼやけすぎて何がなんだか分からない世界が広がっている。そんなぼやけた世界を、視力1.0以上に見えるようにしてくれる、すごい眼鏡だった。

 眼鏡は見え方に左右差があると困るのだが、③の眼鏡には見え方に左右差がある。コイツが、どうしても慣れない。

 慣れなくて困っていたけれど、だんだんと慣れてきた。やっぱり見え方に左右差があるが、それがあまり気にならない。

 この眼鏡をかけると、想像していたものとは全く違う商品が完成する。私が作る商品はジャンルがまちまちで、とあるジャンルでは、想定外かつ私の個性を見せるような商品が完成する。

 実は、この文章も③の眼鏡をかけて書いている。

 なんだ、使えるじゃん! 目のコンディションによっては使えるじゃん!

 だがしかし! 見えない日のほうが圧倒的に多い! 見えなさ過ぎてイライラする羽目になる。

 見えない! 今日は見えるけど、どうせ明日になれば、また見えなくなるんだろう! ああもう、ぶん投げてやる!


 一本の眼鏡のみを使い、充分に目を慣れさせればいいじゃん。自分でもそう思うけれど、裸眼0.01〜0.03の世界は、本当にヤバい。自分の思い通りになってくれない。

 ソフトコンタクトも、ハードコンタクトも、とうの昔に試した。ずっと使ってきたけれど、私の乱視を矯正できる商品がなくなってしまった。

 コンタクトレンズと眼鏡のW使用が最適のようにも思えるが、深夜帯の暗闇の中で困る羽目になる。普段からあまりにもしっかりと見えていると、眼鏡のみや、弱い眼鏡、裸眼では歩行すら困難になる。

 もしも眼鏡を失った状態で災害が起きたら、私は逃げることが可能なのだろうか。逃げている最中に落としたり壊れたりした場合は、どうする?

 そう考えると、視力の矯正は、ほどほどにしたほうがいいのだろう。

 しかし、商品が作れない。仕上がり方が違う。作業終了と共に強烈な眼精疲労を伴う。

 強い眼鏡も、そこそこ見える眼鏡も、見えにくい眼鏡も、結局のところ、とてつもない眼精疲労を伴うのは、同じなのだ。

 今、③の眼鏡をかけて、約二千字を書いた。眼精疲労が半端じゃない。


 結局、なにが言いたいのかというと、家にある眼鏡は、すべて眼精疲労をピークにさせる酷い眼鏡だ。

 この文章を読んだ読者は、眼鏡に弄ばれる私に、いま現在かけている眼鏡を差し出さなければならない。

 キャッチコピーに、ちゃんと書いたはずだ。読んだはずだ。

「お前の眼鏡は俺のもの、俺の眼鏡も俺のもの」──!


 ちなみに、いくつか用意してある防災リュックの中にも眼鏡を入れているため、自分の眼鏡が何本あるのか、自分でも把握していません。

 また、冷蔵庫の中には、キンキンに冷えたコンタクトレンズがコロコロと。使い捨てコンタクトレンズを冷蔵庫の中で保管すると、使用期限が一年以上過ぎても使えるとか、なんとか(良い子はマネしないでね)


 ↑眼精疲労に負けたので推敲していません。

 寝ないのかって? こうやって寝る前になにかをやって夜更かしするのが目に負担をかけるんですよねー。

 ……でも、夜更かししちゃうんだよね。



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