和風な「物の感じ方・考え方」(基本語彙編)

 

 和風な「物の感じ方・考え方」を言葉から考えるとは、いったい何のことだろう、きっと読者様方はそう思っているに違いありません。しかし、もうすでにその題材があります。「言葉」。ことのは、つまり古代人は、私たちが口に出して言うことが、枝にたくさんつく葉っぱのように思えたのでしょう。これが和風な「物の感じ方・考え方」です。

 最初に、その語がどう形成されたかの型の種類を、今回は出ないものも含めて書いておきます。

自然型:自然を基にした語形成

人間型:人間の体、行動を基にした語形成

信仰型:信仰概念(神など)を基にした語形成

基本型:基本語彙を基にした語形成



〈季節の名前〉

 少しわかってきましたでしょうか? では本題に入りましょう。まずは四季を考えます。春夏秋冬は、私からすればそれぞれ次のような語源であると考えられます。(くわしくはこちら:https://kakuyomu.jp/works/1177354054896286550/episodes/1177354054896287012

春:はる:生命の力が植物の芽などに宿り、膨張し、

夏:なつ:成長しきった植物などに、実などが

秋:あき:たくさんの収穫があって、食べるほどに食べ物がある

冬:ふゆ:秋に収穫して、少なくなったものが(殖ゆ)はじめる


 冬が「増える」からきていることはかなり違和感がありますが……、全体を見るとみな「自然」に関係していることがわかりますね。もっと言えば、農産物に関連しています。古代では、アニミズム的な考えがあったようで、「たましい、たま」という霊力が、様々な生き物に宿り、巡ると思われていました。そのサイクルが春夏秋冬という季節の名前になっているということです。そういえば「言葉」も自然の観念がありましたね。これは(信仰)自然型です。どうでしょうか、和風な「物の感じ方・考え方」が少しわかってくるころではないですか。


〈命、生命〉

 次は命です。まずこれにかかわる語源を見てみましょう

命:いのち:息をして、生きる霊力。

生きる:いきる:息をして生きる

死ぬ:しぬ:をする力がなくなる(往ぬ)


 少々語源があやふたなところがありましたし、シとか、ヒとかなんだかよくわからないものがありますが、取り合えず、この三語はすべてが影響しあっています。息をする原動力が命で、それがあるから生きることができて、息をする力がなくなると死んでしまう。生きることが、最も基本的な行為から造語されているのですね。これは人間型です。


〈日〉

 日は最も重要な自然要素です。ここから、日から差し込む光、日が照る時間帯である昼、また同じく光を発して、暖かい火がそれぞれ言葉にされたのでしょう。最も重要なのはやはり日です。自然型。


〈あめ〉

 古くは、天のことを「あめ、あま」といっていました。そこから転じて、空から降る水を、雨というようになりました。たぶん雨は、最初は「あめみず」などと言われていたんでしょうけれど、それがどんどん音が脱落していってあめになったのでしょうか。これも自然型でしょう。


〈かみ〉

 上のことを、かみと言っていましたから、ここから上の、天に住む者たちを神と言って、さらに上が鳴る、もしくは神が鳴らしているものをかみなりといったのでしょう。これは……分類が難しいのですが、まず基本語彙から信仰に飛び、さらに自然に飛んだので、信仰自然型とでもいえるでしょうか。



 はい、まずはこれくらいにします。これくらいといっても、古代の語生成のクセや物の感じ方は、十分にわかってきたと思います。その昔はやはり太陽や水、土などの「自然」が生活に深くかかわるものでしたから、様々な語に派生し、最重要視されていたのですね。また今回は少なかったのですが、アニミズムや神、天皇などの信仰概念もかなり影響していると言っても過言ではないでしょう。

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