大和言葉と古代日本の思想

凪常サツキ

季節の語源:はる


 皆さんは、春夏秋冬の「語源」について考えてみたことはありますか? 実はここにも、古代の思想がとことんエキスとして詰まっています。ここでは四季全体を「めぐる魂」という考え方を軸にして考察しますので、まずそれを頭に入れておいてくださいね。

 今回は春についてです。



はる(春)は、「張る」という言葉と同根のようです。しかし何が張るのか、そこに疑問が生じると思います。まさにそれが、古代の思想なのですから。

 まず春のイメージとしては、皆さんも「生命の芽生え」などというものをお持ちかと思われます。そう、それが時代を超えて連綿と受け継がれる、古代の思想の欠片です。よかったですね


 古代人は植物や動物の生力の源を「たま」という霊力にみていました。その霊力がによって移り変わる、そういうアニミズム的サイクルで季節も移り変わり、様々な変化が起こるとされていたのです(最初に言っていためぐる魂というやつですね)。

 すこし長引いてしまいましたが、春とはこの霊威が多くの生命を成長させる季節です。そして視覚的に確認しやすい植物の芽などの、日ごとに「張る」ように大きくなる生長に目を向けた古代人は、その様子を切り抜いて春(はる≒張る)と名付けたのです。

 ちなみに、実は春は「張る」、つまり成長する季節であるので、実をいうと生命が増える季節ではありません。意外かもしれませんが、増える季節は冬なのです。



 さて、皆さんが何となく冬の語源に察しがついて色めいてきたでしょうから、今回はここで区切ろうと思います。次は夏と秋の語源についてで、またお会いしましょう。

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