第11話

まあ、大方予想通りの展開だったから驚きはしないが、魔の樹海か。

これまで幾度も勇猛な戦士が開拓に向かうも生きて帰った者はいないと言われている

危険極まりない場所というのはギルドが流している嘘でギルドにとって都合の悪い人間を消すための場所だ。過去には当時最強と言われていたパーティーが派遣されたがわずか3日で連絡が途絶えた。しかし不思議なことに樹海からモンスターが出てくることはほとんどなくあまり脅威とされていない。よってギルドはゴミ捨て場として活用しているのだそうだ。

俺がギルドに入ってからも何人かこの依頼を受けていたものの

それっきり会っていない。

勇者と離れられたと思い、気が楽になっていたのに一気に気が重くなる。


俺「じゃあ、知り合いに挨拶だけしてさっさと行くか。

  ウィルは町の外で休憩しててくれ」

ウィル「わかった!早くしてね!」

なぜかすごく楽しそうにしている。

ちなみにウィルは一緒にギルドに入ったもののその場の空気に耐えられず入った瞬間スキルを使って隠れていた。

おかげで大事にならずに済んでよかったよ。

俺「まずは宿からだ。」

しかしこの町もしばらく離れていたから変わってるかもしれないな。


冒険者が多く利用するこの宿はギルドに近く、久しぶりに帰ってきた俺でも迷わずにたどり着けた。

ついこの前まで利用していた宿を改めてみると少し感慨深いな。

いかん。こんなことをしに来たのではないのだ。

早く挨拶に行くぞ。

俺「こんにちーーー」

ゴードン「おい!ユージじゃないか!無事だったか!よかったな!」

ここの店主のゴードンさんだ。ユージというのは村人Aになる前の俺の名前だ。

俺の話を遮ってまで無能である俺の無事を喜ぶ奇妙な人だ。

ゴードン「で、泊ってくか?何泊だ?ウームお前が無事だったお祝いで3泊までは

     ただでいいぞ!ガハハハッ!」

俺「あのーですね、俺はユージではないです。

  そして結論から言うともう泊まることはありません。

  例の厄介払いのクエストに派遣が決まったからです。それで今日は今までのお礼 

  を言いに来ました。本当にお世話になりました。」

ゴードン「魔の樹海か。そうかそりゃ災難だな。それじゃあ開拓が終わったら連絡を 

     くれ。そこに宿屋を移転したいからな。こりゃ儲かるぞ!ガハハハッ!」

俺「きっと連絡はないと思いますよ?まあいいです。今までお世話になりました!」

ゴードン「またな!」

やっぱりこの人は奇妙だ。

無能の俺が開拓なんぞできるわけないだろうになぜかできると信じている。

次会ったらその自信はどこから来るのか聞いてみたいな。

もっともそんな機会は二度と訪れないだろうけど。


その後、お世話になった方々に挨拶して回ったのだが、


デント【鍛冶屋店主】「おお!そうか。俺の店用の土地と素材を取っておいてくれ。 

           約束だぞ!きっと見知らぬ素材に出会えるぞ!

           楽しみじゃぁ」

マリー【雑貨屋店主】「そうですか!目指すのは町ですか?国ですか?

           もうすでに楽しみです!

           デントと同じく店舗の土地は確保しておいてくださいね!」

リューク【リュート商会会長】「開拓ですか。一人では時間がかかるでしょう?

               こちらで建築のスキルを持ったものを付き添わせま 

               しょう。いいですか?

               これは貸しですからね?

               開拓完了後最初に商会を開かせてください。

               それでチャラです。」


あーあ。冷やかしもほどほどにしてほしいね。

リュークさんはもう付き添いの人を呼んできてくれたし、

もしかして本心で行ってるのだろうか?

まあどうでもいいや。

ウィルのところに行こうっと。

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村人Aが強すぎる 坂下ドラン @babygreatsttuf

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