第10話
エンリケこと村人Aは目の前の出来事に納得ができなかった。
あの後従魔が勇者と戦うというので地上に上がってきて観戦していたのだが
Eランクの自分でさえぼこぼこにできるモンスターにあの埃高き勇者が散々に打ちのめされたからだ。
ウィル「ね。やっぱ勇者はエンリケよりも弱いでしょ!」
目をキラキラさせてエンリケに話しかけている。
俺「きっと体調が悪いのだろう。きっとそうだ。俺のことをあそこまで罵倒して苛めた奴らだ。俺より強いに決まっている!」
ウィルはまただよと言わんばかりに手をひらひらさせている。
俺「とりあえず俺は町に戻るよ。今まで世話になったな。」
ウィル「突然何を言うかと思ったら。私も行く!」
俺「お前はダンジョンマスターだろう?いいのか?」
ウィル「うん!お父様にも自由に生きろって言われてるし。」
そんなこんなで2人で一番近くの町、ローガンへと向かうこととなった。
しかしこの2人である。
歩くなどという考えは初めからなく、それぞれ魔素、酸素をまとい馬の10倍以上もの速度で走っていく。
本来5日かかるところを30分ほどで駆け抜けた彼らは汗1つ流すことなく、ギルドへと足を運んでいる。
信用されるわけもないのだが一様自分の身の上に起きたことを伝えておこうという彼らなりの親切だった。
俺「よし。入るぞ。」
ウィル「OK。喧嘩売ってきたやつはやっちゃってもいいの?」
俺「そもそも俺たちでは勝てるわけがない。だからできるだけ温厚に対応しよう。」
覚悟を決めドアを押し開ける。
実に3か月ぶりのギルドだった。
エンリケが入ると凍り付いたように全員が固まったがそれも一瞬だった。
居合わせた冒険者は口々に
「なんで生きてるんだよ!」
「またサンドバックにしようぜ。」
など好き勝手なことを言っている。
2人はそれらを無視し、受付へと向かう。
受付嬢「なぜいまあなたがここにいるんですか?」
俺は素直に答える。勇者に落とされたこと。そのついでにこれまでの横暴さも耳に入れておいてあげた。しかし、思っていたとおりに無視され、
受付嬢「あなたは死んだことになっています。今ここにいられると私たちは困ります。あなたよりも強い勇者のほうが大切ですし。」
と困った顔をしている。相変わらず村人Aとしての彼は存在があってないようなものなのだ。
受付嬢「ですがギルドにも優しさはあります。この依頼を受けてください。そうしたらあなたの生存を認めましょう。」
とても黒い笑みを浮かべながら渡された書類に目を通していく。
場所:魔の樹海
内容:開拓
報酬:開拓した土地
だ。
魔の森よりも広く迷いやすくモンスターも強い魔の樹海だ。
普通の人なら断るのだろうが村人Aには拒否権はない。
よって俺の答えは
「わかりました。引き受けましょう。」
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