不可視の七不思議
四次元 ライト・ランチャー
さて、先週告知したとおり、今日はライトな話を。
蛍光灯と呼ばれるそれはパッと見は白く細長い硝子管。だが、その中身はアルゴンガスが酸素や窒素などの一般ピープルを追い出した妖しい路地裏のようなもの。
容赦なく電気という命令を下すことで、特攻神風よろしく電子が飛び道具の如く鋭く切り込み、そこで密やかに待ち構えている微量水銀とドンパチやらかすという代物だ。
わあ明るくなった、と人間共が喜んで見ているそれは、彼らが散らした火花であり、ストレートな物言いをすれば喧嘩というか抗争の副産物。
『あの光はビリヤードで押し弾かれる玉みたいなものか』
「電子が水銀の後頭部をどついたら光輝く目玉が飛び出す、といった方がイメージが近いかも知れません」
『何言ってんだ。わかりにくいだろ』
ともかくそのような強烈な光を放つ現場そのものをガン見していたというのだからいけない。口をだらしなく開けたまま悠長に見ていれば、目を撃ち抜かれてしまうだろう。口封じという名の射的である。
だが愚かな蒼翠琥珀はその蛍光灯から漏れる光をじっと見つめているうちに、硝子管の内外の境界など無いように思えて妙に興味を唆られたらしい。よせばいいのに、手を伸ばして境界の在り処を探ってみたそうだ。
『光の過剰摂取で目がイカれているということに気付いていなかったんだろうな』
「ええ。まだ幼かったとはいえ、蒼翠琥珀は馬と鹿の交雑種に違いありませんね」
今わたしが運転しているモノが
実際にはそんなわけにもいかず、蒼翠琥珀は無様にも手に火傷をこさえた。だがそれでもなお、光を灯し続けた蛍光灯は熱くなるのか、と一人しみじみ納得していたらしい。電流の多くは熱に変換される。
なにせ二昔ほど前の蛍光灯だ。改良に改良が重ねられ、今ではそれ程でもないだろうが、当時の蛍光灯はそれなりに熱くなったものだ。それともあれは白熱灯だったのだろうか。恐らく蛍光灯だと思うけれど。
もしかするとこの時から、蒼翠琥珀は熱やエネルギーをはじめとした『目に見えないもの』に興味を持ち始めたのかもしれない。当時は蛍光灯の原理など知りもしなかったし、もちろん興味を掻き立てられている自覚など無かったのだろうけれど。
この『無色茶論』では
そうして小説の方では蒼翠琥珀が『存在』を追求するべく光だ時間だとかを密かな
時折その地雷を丁寧に掘り起こして「上手に埋めたね」などと言ってくれる者が現れると、一人ほくそ笑みながら尻尾をゆらゆらさせている。本人は素面のつもりだが、誰がどう見てもニヤけ面なのだ。『
『あの狸は脊髄反射を知らなかったのか?』
「知らなくとも自己防衛機能としてプログラムされているはずなんですが」
『ふうん。どうも鈍いな。火傷なんてこさえて』
「ええ。親に怒られていても何にも聞いちゃいねえ。手を冷やすより、頭を覚ませってんだ。鈍すぎるぜ、アイツ」
『
「……失礼しました。昔の名残が……」
ふう。危ない危ない。堅気じゃない恐竜共とやり合うには、それなりの覚悟がいったもので。つい、ね。危うく
言葉遣いは丁寧に。
我々は樹木に包まれているうちはさりとて、表にはみ出したりすると、それはもう食う食われるの前線に押し出されたも同然。
まあ、はみ出してハダカん坊になった時に、うっかり近づいてきた虫だとか鳥だとかを飲み込んで
何が言いたいかというと、剥き出しになっているからと言って、甘そうなものに迂闊に近寄っちゃ駄目ってことです。白熱灯のハダカ電球なんて輻射熱の固まりですし。もう製造されてないんじゃないかしら。まあ、ハダカはシンプルで解りやすく、温かみがあるとも言えますけどね。
『近い将来、白熱電球も博物館に展示されそうだな』
「あらゆるモノが過去の
そういったものを『物語』の一部に含めて
『過ぎ去る風は儚くも甘い』
「それを啜るのもまた愉悦」
というわけで、また来週。木曜2021に。
ですが次は五次元。時空の狭間がちらほらと見え隠れしますので、気軽に立ち入るのは危険です。言いましたよ。晒しますけども、安易に近づくと取り込まれてしまいますから。ご注意下さいませ。
では。
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