二次元 色気のない蒼翠

 ごきげんよう。わたしの名は琥珀コーパル


 今日は色めいた話をしよう。



 まず、琥珀コーパル琥珀こはくは字が同じでも本質モノが違う。


 どちらも樹液(主に松脂)が固まり樹脂となり、土砂に流され海底に堆積し、地層の中で化したものだ。違うのはその熟成度。


 地層の成分や温度、圧力は勿論、埋まっていたが違う。


 世界各地で産出する琥珀こはくは、約6500万年〜168万年前(第三紀;恐竜ドラコが絶滅して哺乳類が台頭する時代)のものが多い。日本の岩手県久慈産の琥珀こはくは約1億4000万年〜6500万年前(白亜紀;超大陸パンゲアの分離が進み、恐竜ドラコの支配下にあった時代)のもので世界でも珍しい。


 一方、琥珀コーパルは数10万〜1000万年程度(諸説あり)。つまり琥珀コーパル琥珀こはくでは年季の入り方が違うのだ。



 琥珀こはくは化石だが、琥珀コーパルはその途上、半人前ならぬ半化石。



 琥珀こはくの色は飴色、黄褐色、蜂蜜色、白、黒、赤褐色と幅広く、鉱物に匹敵する硬度を持ち宝石として扱われることもある。一方で琥珀コーパルは檸檬色や橙色と比較的淡い色をしており、硬度が低いため傷つきやすく、アルコールにも溶けやすい。


 そういう意味では、あの蒼翠琥珀あおみどりこはくは敢えてそう名乗ることで、年季が入っていると見せかけて見栄を張っているのやもしれない。中身は琥珀コーパルほどだと言うのに。


 あの人のことはともかく、今日もわたしの相棒の話をしたい。




 相棒の名は蒼翠そうすい


 無職で人知れずこの世界の片隅に居るだけの蒼翠そうすいは、先週木曜日に目を覚まし、たっぷり一週間は目覚めの余韻を楽しんでいた。そろそろ頃合いだろう。



 因みに蒼翠そうすい蒼翠あおみどりは字が同じでも本質イロが違う。蒼翠あおみどりは『樹々が生い茂っている様子』のことである。深い森のようなイメージだ。この『青々と』というのはのことなのは言うまでもない。我々は信号の色の光を見てと呼ぶ。実に馴染みのある話だ。


 くどいようだが、敢えてごり押ししておこう。あおみどりも、系統の色なのだと。




 蒼翠色あおみどりということは、蒼翠色あおみどりの光を反射し、それ以外の光を吸収するがそこに在る、という証明だ。





 え? おまえさんの相棒の話をしろよって?


 そうそう。それが肝心。


 



 わたしの相棒である蒼翠そうすいには




 ああ、そう言えば先週も今週も誤字がありました。ここで訂正いたします。蒼翠そうすいがほぼ社会に認知されていないのはだからでしょう。無職とかなんとか関係ない話をして失礼しました。

 ま、無色ですから、無職でもありますけれど。




 蒼翠そうすい姿はありません。




 あらゆる可視光を。そういった『存在』を蒼翠そうすいと名付けたのです。そこに居る。それが蒼翠そうすいです。



思い描くのは、蒼穹そうきゅう翠嵐すいらん

それは青いと、山に吹く

目には見えずともそこに在る

見えぬことは、心ので描け



 わたしと蒼翠そうすいは小説の向こう側に広がる光景ほしを視る旅をしています。その道中、皆さんにお会いすることがあるかも知れません。



 星の巡礼の目的は『物語』の裏側に巧みに隠された仕掛けひかりを探し出すこと。



 とうとう今日も、蒼翠そうすいは一言も話しませんでした。

 でも、無口ゆえ、どうか大目に見てあげて下さい。




 それより、どうです?



 今、わたしが馬に跨って、青空の下、爽やかな風を浴びながら遊歩している様が眼に浮かびますか?


 乗り物や蒼翠そうすいとは、そのようなもあるのですよ。


 そうである、とは言ってませんけどね。



 では、懲りずに引き続き相乗りされる方は、また来週。木曜2021に。



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【参考文献】(琥珀について)

◉近山晶監修(2005). 『図解雑学 鉱物・宝石の不思議』ナツメ社

◉地質情報整備・活用機構編著, 青木正博監修(2009). 『宝石・鉱物手帳』JTBパブリッシング

◉宮脇律郎監修(2008). 『徹底図解 鉱物・宝石のしくみ』東京, 新星出版社

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