7.女子高生、森の熊さんと出会う

「暇です…」

暇。

英語で言うとboring。

悪役令嬢、カレン・オルコットと入れ替わってから、1日たちました。

「君を助けだすために、出来るだけの手を打つつもりだ。また、来る。」

シルヴィオ王子は昨日、そう言ってくれましたが、隔離されている私のもとに、そう何度も来れるとは限りません。

状況は切羽詰まったものであるのに、軟禁されていて暇なのです。ままなりません。

鉄格子のはまった窓を見ると、見たこともない青い鳥がとんでいます。

お天気もよくて、やることもなくて

「ふわぁわわわ」

そう、欠伸も出てきてしまいそう…って、今の欠伸は私のじゃないです!

「ふわぁわわわ」

大きな欠伸がもう一度。扉の向こうから聞こえてきます。

…なんでしょう?

そーっと扉を開けると、大柄な甲冑をつけた兵士が船をこいでいました。なぜか、森の熊さんが頭の中を流れます。

男を避けつつドレスの裾をさばきつつ、華麗に走れば、この隙ににげだすことも出来そうです。

「おーい。兵士さん?暇ですね。」

でも、私運動苦手なんですよね。だから、情報収集することにします。

「うわぁお!ってなんだ嬢ちゃんか…」

あら、意外な反応。

「もっと驚くと思っていたのですが。罪人が逃げ出そうとしているんですよ?」

すると、熊さん(仮)は呆れたように言いました。

「罪人なぁ…よくやるよ。あのセージョサマをひっぱたくなんて。」

そうなのです。私が読んだ「せいプリ」では、カレンは主人公の聖女を舞踏会でひっぱたいていました。

それがきっかけで、髪を燃やしたりなどの聖女にしていた数々の嫌がらせが露呈し、追放に追い込まれたのです。

「えぇ、私も記憶が曖昧で…どうしてあんなことをしたのでしょうか?」

「いや、俺に聞かれても。まぁ、でもここだけの話、俺はあのセージョサマ苦手だね。色んな男の香水つけて、嫌な匂いがするしな。」

匂いって…

「まず、聖女様がどんな方だったかも覚えてないんですよね…」

熊さんはほうほうと頷いた後欠伸をしながらいいました。


「じゃあ、見に行ってみるか?」


そうですね。見に行けたら最高なんですけど。

「って、え!?」

「じゃあ、見に行ってみるかって聞いてるんだ。」

「そ、そんなことしていいんですか!?私、軟禁中ですよ!第一どうやって…」

すると、熊さんは甲冑を脱ぎはじめました。

「なんでぬぐんですか!?変態なんですか?」

「いいから、黙ってろって」

熊さんが甲冑を脱ぐと、裸…ではもちろんなくて兵士の服に身を包んだ、体格のいい男性があらわれました。野性味溢れる顔立ちに短髪が似合っています。

しかし、頭の上に…とても、とても不釣り合いなものが…

「…つっ…ふふ…か、かわいいですね。」

熊の耳が生えていました。音を聞き取ろうと、たまにピョコピョコ動いています。

「笑うんじゃねぇ。俺の固有魔法が熊に変化することなんだよ。身体能力もアップするからとりあえず耳だけのこしてるだけだ。」

「はぁ。」

そういえば、この世界は一人がひとつ固有魔法を持っていました。確かカレンは炎…でしたかね?

「でも、それでどうやって聖女を見に行くんです?」

「まず、甲冑を扉の前に置く。これで、俺がいるように見えるな。」

「ふむふむ」

大柄な甲冑は、ただ置くだけで、そこに人がいるように見えます。

「それで、変化の力で嬢ちゃんの周りの光をねじ曲げて、嬢ちゃんが保護色になるようにする。」

「ふむふむ」

カメレオンみたいなものですかね?変化、便利。

「で、後は俺と保護色な嬢ちゃんで、セージョサマを見に行くって寸法だ。」

「なるほど…!」

凄くリスキーではありますが、のほほんとこの男に言われると、出来そうな気がしてきます。

「やりましょう!」

「おう、そうと決まれば出発だ!」

早速、保護色にしてもらいました。

「見えてませんかね?」

「おう、多分な」

…不安もありますが、

聖女様を見学し隊、出発です!

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最強の悪役令嬢、現代日本の女子高生と入れ替わる!?~今度こそハッピーエンド勝ち取ります~ 渡 亜衣 @watasi-ai

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