眼を離したら……
(ようやく、ようやく、ようやくだッ!!!!!!!!!!)
爆速、爆走、猛ダッシュ。
ティールは全速全快で雷鳥と思わしきモンスターがいる方向へ走った。
「ッ、しゃおらぁああああああああッ!!!!!!!」
「っ!!??」
そして……あっという間にロックオンしたモンスターがいる場所に到着。
猛ダッシュからのハイジャンプで、一気に雷鳥の位置まで跳び……豹雷を振るう。
「ハッハッ!!!! さすがに、一刀じゃ終わらない、か!!!!!」
何かが急接近してくる。
それには気付いていた雷鳥だが、ティールの接近するスピードがあまりにも速過ぎだ。
だが、それでも大振りな最初の一振りを躱すことに成功。
そして……空中は彼等のテリトリー。
飛べないティールにとっては格好の餌食となってしまうが……何故か、雷鳥はそのままティールを襲おうとはしなかった。
(? どうしてだ、なんで襲って来ない???)
本人は自分の状態に気付かない、というのはよくある事である。
今のティールは……形こそ人ではあるが、モンスターから見れば……自分を一口で丸呑みしそうな強大過ぎる猛獣。
相手が宙に跳び、不安定な状況とはいえ、迂闊に飛び込むことが出来ないほどの圧を放っていた。
(それならそれで、関係、ないッ!!!!!!)
普段のティールであれば、雷鳥との戦いに対して余裕を持って挑んでいた……かもしれない。
しかし、今のティールは待てと……待てと…………待てと、何日も待てをされた猛獣。
一切躊躇することなく、疾風瞬閃を抜剣。
雷鳥がどう攻めようか悩んでいる間に攻め込み、雷と旋風の斬撃が乱れ舞う。
どれも雷鳥を直接狙う斬撃ではない……が、避け方をミスすれば完全にダメージを負ってしまう。
それほど殺傷力が多い斬撃を避けるには、上に逃げるしかない。
「ぅおおおおらッ!!!!!!!!!!!」
「ッ!!!!???? ィ、ィ……ァ」
乱れ舞う雷と旋風の斬撃から逃れる為に、更に上に飛んだ。
その雷鳥の判断自体は……決して間違っていなかった。
ティールが消費する魔力を無視して放った斬撃であっても、範囲には限度がある。
しかし……雷鳥は、必要以上にティールが放つ斬撃を恐れすぎた。
「ぃよしっ!!!!!!!!」
ティールから眼を逸らし、全力で上へ逃げた。
それが悪手だった。
上へ逃げたこと自体は悪くないが、ティールから眼を逸らしてしまうと……当然ながら、ほんの少しではあるが、次に行う動作が確認出来なくなる。
それ程までにティールが放つ圧が、地上のモンスターよりも攻めっ気が強いモンスターたちでも恐れてしまうと言えばそれまでだが……とにかく眼を離してしまったのが良くなかった。
たとえ空に流れようとも、これまで高め続けてきた身体能力、そして強化系スキル。
加えてティールの最初の武器……投擲が重なり合えば、容易に届いてしまう。
「…………そういえば、脳って結構売れる素材だったよな……いや、両目が無事だったことを祝おう……ていうか、無茶苦茶早く終わらせちゃったな」
最後、疾風瞬閃をぶん投げ……雷鳥の頭を下から貫いて、結果として瞬殺してしまった。
「まぁ、結構溜まってたもんなぁ…………うん、仕方ない仕方ない。とりあえず回収して、ラストたちのところに戻ろう」
ティールはやや体勢を崩しながらも落下してくる雷鳥の死体をキャッチし、ひとまず疾風瞬閃を引き抜いて亜空間の中に放り込んだ。
そして歩いてラストとアキラがいたであろう場所に戻ると……そこには血の海が広がっていた。
「むっ、やはり直ぐに終わらせたみたいだな、マスター」
「あ、うん。結構溜まってたみたいで、色々と爆発しちゃった。それで……俺が走って戦ってる間に襲われた、って感じ?」
「あぁ、そんな感じだ。マスターが戻ってくるまでの丁度良い暇つぶしになった」
二人の足元にはフォレストゴーレムとオーガの死体が複数転がっており、雷鳥の死体も含めて、彼らはしばらくの間解体に勤しむのだった。
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