切っても問題無し
(ふむ……この男とは、対立しても構わないのだな)
アキラから見て、ヒツギという男は……異性として見た場合、アリかナシかで尋ねられれば、一応アリの部類には入る。
しかし、異国の地で……自分を幼少期から知る知人などがいない地で許嫁意外と交際する気はサラサラない。
普段のアキラであればバッサリと断っていたが、今現在アキラはティールたちのパーティーに身を置いている。
自分がパーティーの戦力になっていないとは思わないが、それでも中心となるべき人物は自分ではなくティールだと思っている。
そんなティールの、冒険者として活動する上での考えは……なるべく同業者たちと険悪な関係にはなりたくない。
全員と仲良くなりたい訳ではないが、わざわざ完全な悪感情を向けてきてない相手に、喧嘩を売る様なことはなるべくしたくない。
そういった考えを聞いていたこともあって、中々上手く対処する為の言葉が出せなかった。
しかし……目の前で、ティールはヒツギという男性冒険者に対し、敵対しても構わない。といった意志を含む発言を行った。
であれば、わざわざ上手く避けて流す言葉を探す必要はなかった。
「ティール、すまないな」
「? 何がですが、アキラさん」
「いや……また後で話す。さて、ヒツギ……申し訳ないが、私は君に興味があまりない」
「うっ」
面と向かって、あまり興味がないと伝えられたのは……ヒツギにとって、初の経験だった。
その光景に多くの女性冒険者たちは信じられない!! といった表情を浮かべ、殆どの男性冒険者たちは……大爆笑。
「多少ある興味も、それは君の強さにしかない。とはいえ、期待の大きさは今パーティーを組んでもらっているラストやティールよりも下だ」
「なっ!!?? そ、その少年、より…………俺の方が、下、だと」
ここでティールに対し、一瞬で感情を爆発させない辺り、まだ自意識が高い者たちの中でも、感情をコントロール出来る方であることが窺える。
「見かけで判断される。君にも、その経験があったと思うが」
「…………」
アキラの言う通り、かつてはそういった経験を何度も体験してきたヒツギ。
クランに所属するようになった今でも、ダンジョンを有する街ということもあって、冒険者の出入りも多く……今でも偶にバカに絡まれることはある。
「あの、ティールさん。ご自身のことは、お伝えにならないのですか?」
換金が終わったことを伝えに来た受付嬢はティールに、切れる手札を切らなくても良いのかと伝えた。
受付嬢が何を言っているのかを直ぐに理解するも、その手札を切るのか迷う……迷うも、既にギルドには仕事帰りで多くの冒険者たちがいて、その視線が自分たちに向けられていることを把握。
(……この後、調べられたら直ぐにバレることだし、問題はないか)
小さくため息を吐きながら、ティールは自身のギルドカードを取り出し、ヒツギに見せ付けた。
「俺、これでも一応Bランクなんですよ」
「「「「「「「「「「っ!!!???」」」」」」」」」」
ヒツギやその仲間だけではなく、ティールの言葉が耳に入った冒険者たちは一斉に驚き、表情が崩れる。
「あっ、何か卑怯な手を使ったんだろ、とかそういう文句は丁度……丁度今、皆さんは冒険者ギルドにいるので、是非ともギルド職員の方に、現在仕事中なのかは分かりませんが、ギルドマスターに文句を伝えてください」
誰かが言おうとした内容を、速攻で封じ、黙らせる。
「ふふ、彼は非常に頭が回るだろう。少年とは思えない……勿論、実力もだ」
そう言いながらヒツギに向けるアキラの眼は……冷たさと憐みが含まれていた。
本人が口にした通り、ヒツギの強さは一応興味が持てる。
アキラ自身は大して興味はないが、その容姿に惹かれる者が多い。
ただ……アキラから見て、ティールと比べれば酷く魅力に欠けている。
比べることが、可哀想に思えるほどに。
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