大義を得た
「お前は、人を見た目で判断するタイプなのか?」
精神年齢がらしい年齢になってしまっているティールの状態を察し、前回と同じく一歩前に出るラスト。
「っ……君がそういう言葉を投げかけるという事は、本当にこの子がリーダーの様だね」
竜人族という、非常に強いと解り易い外見をしている。
立派な筋肉も見えているため、ヒツギはアキラがリーダーでないのであれば、ラストがパーティーのリーダーなのかと予想していた。
「アキラは、お前の様に人を見た目で判断する男は好まない」
「それは、本当に彼女の本音かな?」
失礼な事をしてしまった自覚はあるものの、だからといって……引き下がる気は欠片もなかった。
「なら、お前は自分の外見だけで判断するのを好むのか? 人の好みは人それぞれだ。悪いとは言わないが……個人的には良いとも言えないな」
「っ!!」
普段のティールの考えをコピーしたのか、すらすらと正論パンチが出てくる。
そんなラストの前に、ヒツギの仲間である岩男が一歩前に出てきた。
「お前、随分と好き勝手言ってくれるな。ヒツギは、お前の言葉じゃなくてそのアキラって女の本音を聞きたがってるんだよ」
「聞かなくても解るだろ、と俺は伝えたつもりなんだがな……ところで、いきなり割り込んできたお前は誰なんだ」
「俺はヒツギの仲間だ。良くも知らない奴に仲間が侮辱されて、黙っていられるわけがないだろう」
立派な仲間意識だ。
と言いたいところだが、今日のラストは一味違う。
「他人からの評価など、そんなものだろう。少なくとも、俺は今感じた評価を口にしただけだ」
「正論を言えば、どうとでもなると思っているようだな」
「どうとでもなると思っているか…………さて、お前はどうしようかと考えているのか?」
挑発。
明確な悪意などが含まれている訳ではないが、冒険者の世界で生きている者であれば……冒険者ではなくギルド職員であっても、ラストが挑発したと解る。
「ふんっ!!!!!!!!」
ゴングは……ラストの挑発、というしかないだろう。
「ふ、ふっふっふ……はっはっは!!!!!! なんだ、なかなかどうしてやるじゃないか」
「ぬっ!」
岩男が放った拳はラストの顔面に当たる前に止められた。
だが、拳の勢いをその場に殺そうとした結果、床が少し陥没した。
(ただの出しゃばり、口だけの男ではなかったか)
この男とであれば、喧嘩をしても良い……そう思える感触が、拳を止めた手に残る。
「本筋からは外れてしまうが、どうだ。お前の意志を貫き通したいなら、戦るか?」
「ッ!!!!!」
ここで退けば、男として……冒険者として廃る。
上等だ!!!!! と口にしようとしたところで、事態をある程度把握しながらも、一人の受付嬢が間に入って来た。
「ティールさん、査定の方が終了しました」
「あ、はい」
急にティールたちの空気に入って来た受付嬢に対し、岩男な冒険者は邪魔するな……といった視線を向けるも、そこはベテラン受付嬢。
「あんた……何か文句あんのかい」
「ぬっ」
「ヒツギ!!! 普段はまともに活動してるからと言ってね、他の冒険者に迷惑を掛けて良い理由にはならないのよ!!!」
「い、いや。俺は迷惑を掛けている訳では」
「ティールさん、こいつらは本当に迷惑ではありませんか?」
受付嬢からの質問に……大義を得たと思い、満面の笑みを浮かべて答えた。
「迷惑です!!!」
歳相応の笑みを浮かべながらの回答に、周囲の冒険者たちからは…ヒツギ達に対する失笑が零れる。
「あっ、でも。これからこのヒツギという冒険者が、自分は相手がいる女性でも気にせずアタックする面倒なナルシスト野郎だと公言するなら、迷惑だとは思いません!!!」
「なっ!!!」
アキラには相手がいる。
それ実態はヒツギも知っており、それでもなお攻めようという気持ちを持っていた。
だが、それを承知で攻めようと思っていても、大勢の同業者たちがいる前でバラされるのは……割と致命的な一撃だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます