最高の相棒だからな
「あまり、調子に乗るなよ!!!!!!!!」
激哮を放つと……大剣使いの女の体に炎のような刺青が走り……それと同時に、女の筋肉が肥大化。
「っ!!」
「ぬぉおおらあああああああ!!!!」
そしてラストの腕を掴み……思いっきりぶん投げた。
「あっちゃぁ……マジか」
ブチキレた、と思ったら随分と的確な行動を取られてしまった。
(こりゃ向こうは援護出来ないな)
距離が離れれば離れるほど、援護しにくくなる。
加えて、ラストが投げ飛ばされた位置的に……そもそも見えないので、援護することが出来ない。
「ねぇ、あんたの相方が行ったあれ、もしかして呪い的な奴?」
「さて、どうだろうな。答えると思うかい?」
アキラと距離を取った短剣使いの男は、お返しとばかりティールの質問に答えず、口端を上げながら笑う。
「それもそうか。あそこまで移動されたら、さすがに俺も援護できない。悪くない判断とは言えるけど……あんた、この状況で勝てると思ってるのか?」
確かにここからではラストの援護は行えない。
だが、ラストと大剣使いの女が離れたことで、明確に二対一という状況がつくられた。
「お前はあの竜人族の仲間だろ。あっちにいかなくて良いのか?」
「ん~~~…………なぁ、あんたさっきラストが戦ってた様子が、全力だと思ってるのか?」
「……違う、と言いたげな顔だな」
「そうだよ、全然違う」
ティールは隠すことなく素直に答えた。
それは暗殺者であろう男に絶望を与える訳ではなく……純然たる事実だから。
「勿論、エルダートレントと戦ってた時のラストも全力じゃない。もし、あの呪術? みたいなやつがあの女の切り札なら、まず負けない」
「随分とお仲間のことを信じてるんだな」
「当然だろ。ラストは最高の相棒だ。まぁ……もっと楽にあんた達を潰す方法はあるけど……ねぇ、アキラさん。アキラさんはどうしたい」
「ふむ……」
どうしたい、という問いがどういう意味なのか、ティールやラストと同類のアキラは直ぐに察した。
「私としては、一人で倒したいと思う部分はある」
別の大陸に居た頃は、先程まで戦っていた暗殺者タイプの者と戦り合う機会はなかった。
アキラは認めていた。
ティールを身勝手な理由で奇襲する屑ではあるが……それでも、猛者であることに変わりはない。
だからこそ……燃え上がるところがある。
「なら、決定だ。まっ、絶対に手を出さないとは断言出来ないけどね」
「それで構わない。では……お喋りを止めて、そろそろ再開しようか」
「チッ……本当に向こうに行かねぇのか」
演技ではなく、本当に予想が外れた。
大剣使いの女が発動した能力は、ただ筋肉を肥大化させて腕力や攻撃力を上げるだけではなく、痛覚を鈍くする効果もある。
効果が終了した後にデメリットはあるものの、無茶をすれば相手が二人がかりであってもなんとか出来ないことはない。
(クソ、逃げてぇな!!!!)
心の整理を待つことはなく、アキラが距離を詰めて抜剣。
男はギリギリで躱しながら思考を巡らせる。
(こりゃ、どう考えても逃げるべき、なんだが……あのガキ、既にロックオンしてやがる)
基本的にアキラ一人で戦わせる。
だが……男が逃げようとすれば、話は別。
ティールは男が何かしらのアイテムを使用して逃げようとした瞬間、待機させている魔法を発動し……そのまま殺すことも視野に入れている。
「おや、寂しいな。もう少し私を意識してほしいものだ」
戦闘が再開されてから既に数十秒が経っている。
それだけの時間があれば……ティールはウィンドランスに細工を施し、通常のウィンドランスよりも更に速い速度でぶっ放すことが出来るようになる。
しかも、徐々にその風槍の数は増えていく。
目の前の女侍に意識を集中させたいのは山々だが、それ以上に丁度良い距離を保ち続けて移動する少年が非常に恐ろし過ぎた。
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