ティールには凶器
「シャァアアアアッ!!!!!」
「フッ!!!!」
道中、リザードマンと遭遇したティールは自分から戦うと宣言し、爬虫類戦士もその気であり、タイマン勝負が行われた。
「ジャッ……ァ!!??」
しかし……リザードマンが油断していたからか、普段は少し遊び心があるティールがそれなりに本気を出して肉体を強化して挑んだからか……試合が始まってから秒で終わった。
今回はいつもと同じでラストと行動してるのではなく、アキラと共に行動している。
加えて、お互いに同じ目的があるということもあって速攻で戦闘を終わらせた。
(……本当に速い。抜刀の速さであればまだ自信を持てるが……素の素早さでは、ティールの方が上か? それに、圧倒的に戦い慣れている……良い師が居たと言っていたが、私の師以上に厳しい人物だったのか?)
解体中のティールの邪魔にならないように質問せず、声に出さずに以上に戦い慣れている様子について考えるアキラ。
(強いのは解っていたが、それでも……戦い慣れていなければ、あそこまであっさりと倒すことは難しいだろう。本当に無駄がなかった)
ティールの強さについて、考えれば考えるほど同じ戦闘者としての尊敬の念が深まる。
また、どれだけ尊敬の念が深まったを聞けば……ティールの喜びゲージが上がるのは間違いなかった。
「お待たせしました」
ニ十分も経たないうちに解体は終了し、今度はアキラが戦うと決めて再び探索開始。
すると、週数分後に二体のブラックウルフと遭遇。
(先程……おそらくだが、ティールは私に気遣って直ぐに戦闘を終わらせたのであろう)
であれば自分もと思ったアキラは居合の構えを取る。
「「グルルルルゥ……」」
一歩前に出て構えたアキラに対して、二体は既にロックオン。
ブラックウルフは相手が飛び出してきたタイミングで咬みつこうと考えていたが……標的が直ぐに飛び出してこず、二体はあっさりと予定を変更して自ら飛び掛かり、鋭い牙をのぞかせる。
「シッ!!!!!」
「…………綺麗、だな」
アキラが行った斬撃は……一振り、と言えた。
最初に片方のブラックウルフの頭部を口から切り裂き、そのまま流れるように二体目の咬みつきを躱し、首を一刀両断。
(マスターの言う通り、美しいと感じさせる流れるような一刀だった…………マスターも似た様な武器を使うが、技術面では……いや、そもそもマスターの得物は刃のが差が違う、か)
忠誠を誓う奴隷故か、主人より技量は上ではない……と思いたい葛藤が生まれる。
しかし、その技術は美しさは認めなければならない。
認めなければ……今でもなお、主人を妬む連中と同じ穴の狢になってしまう。
「お、お見事でした」
「ありがとう。いやはや、ティールの先程の動きを見てしまったら、私も頑張らねばと思ってつい張り切ってしまった」
「いや、本当に……良いものを見させてもらいました」
「ふふ。あれぐらいで良ければ、いくらでも見せるさ」
(ッ……笑顔一つとて、今の俺には凶器だな)
当然、アキラにそのつもりはない。
他の男性からしても、もしかしたら一目惚れしてしまう切っ掛けになってしまうかもしれないが、決して凶器とは感じない。
だが……神速の如き速さで恋破れたティールにとっては、自分の規律に反する行為に……気持ちが僅か揺れてしまうほど、気持ちを揺さぶるキラースマイルとなっていた。
(む~~~~……マスターが嬉しそう? なのは俺としても構わないのだが、このまま一緒に居て……本当に大丈夫か? 俺としては婚約者という存在を無視してマスターがアピールして略奪しても良いと思っているが、仮にそうなれば後で良心に押しつぶされないか?)
ティールの行動を隣で見てきたラストからすれば、これまで積んで来た善行……助けてきた命などを考えれば、それぐらいはっちゃけても構わないのではと、割と本気で思っている。
しかし、はっちゃけてしまった結果、ティールがこれまで通りのメンタルで過ごせるか……結局大きな問題が残ってしまうと予想出来てしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます