どう力を振るうか
「そうか、二人もエルダートレントを探してこの街に来ていたのか」
「エルダートレントがいると知ったのは本当に先日の話ですけどね。どうせなら、二人で倒そうかと思っていて」
「…………どうせなら、一緒にどうだ。という提案をしたいのだが、どうかな」
「っ!!」
ティールとしては……全く構わなかった。
エルダートレントというモンスターと真正面から戦いたいという思いはあったが、珍しいモンスターではあるものの……特定の場所に向かえば、出会えなくはない。
ただ、今自分はソロで旅をしているのではなく、ラストという頼れる仲間と共に行動している。
そのラストの考えを無視する訳にはいかない。
(……マスターに、久しぶりにその機会が来た、のかもしれないな)
出会って、何年……何十年も経っている訳ではない。
しかし、今回の反応は常に傍にいるということもあって、非常に解り易い変化だった。
「マスター、俺はそれでも構わない。元々狙っていたモンスターという訳でもなく、偶々耳に入っただけだからな」
「そ、そうか。それじゃあ……よろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそよろしく頼む」
この後、三人は日が沈む手前まで適当に遭遇するモンスターと戦い、自分がどういった戦い方をするのか見せ合った。
そして日が沈む前に街へ戻り、冒険者ギルドで素材を売却し……三人はそのまま酒場へと向かい、夕食を食べ始めた。
「そうか。ティールには、腕の立つ師匠が居たのだな」
「そうですね。元Bランク冒険者ということもあって、本当に強かったです。まぁ……それ以外の部分は、少しどうなのかと思いますけど」
正確がクソゴミという訳ではない。
今でも戦闘に興味がある子供たちを鍛えたりしており、慕われているのが解るが……人生のアドバイス、的な内容が今になって……ティールは「それ、そんな子供に教えるものなのか?」と疑問を抱くものが多かった。
「強者と言うのは、誰でも一癖ぐらいはあるだろう。とはいえ、師が良くてもあそこまで強くなれたのは、君の努力が実った結果だろう」
「……ありがとう、ございます」
「当然の称賛さ。ラストも同じく、生まれながらに得た強さではないだろう」
「マスターの元に居れば、刺激的な戦いを送れる。だからこそ、今の強さがあるだけだ。俺は……恵まれているだけだ」
ティールという少年に、主人に出会えた。
幸運に巡り合えたからこそ、ただ強くなるのではなく、主人の隣に立ち……いざという時に守れる強さが欲しい。
そんな自分以外の為に強さを求める原動力を得られた。
「ふふ、二人はとても謙虚なのだな。私の故郷では…………半々といったところか。君たちの様に謙虚な立ち振る舞いをする者もいるが、ただただ己の強さを確認し、満足したいがために力を振るう愚か者もいる」
アキラは……大きな力は、弱者を助けてこそ意味がある……と、そこまで暑苦しく堅苦しく、人によっては偽善だと言われる様な考えは持っていない。
自分勝手に力を振るうとしても、結果として誰かを助けるならば、それも力が活きる形だと思っている。
だが、ただ力を乱暴に振るい、人に迷惑を掛けるだけの屑は……モラルが、一般的な常識というものが無ければ、その手で斬り捨てたい。
「二人は……何だかんだで、困っている者を助けそうだな」
「俺はただ、マスターの意に従って動くことが多いだけだ。マスター心優しいが故、阿呆な絡み方をしてきた愚か者を適当にいなすだけの場合も多い」
「いや、そりゃあいつもあの時みたいに両手両足を叩き折ってるわけじゃないけど」
「俺なら、二度とその気が起きないように潰す」
容赦ない考えだと思われるかもしれないが、アキラはそのストレートな感情、考えに対して否定的な思いを持つことはなかった。
(い、今話題を変えるのは、変かな? でも、どこかで聞いておきたいし……ぃよし!!!)
ビビったら負けだぜ。
何故か急に思い出したジンのアドバイスに従い……勇気を振り絞った。
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