別の大陸

「……俺たちが助ける必要は、なさそうだな」


「うん、そう……だな」


二人の視界には、四体のフォレストオークを圧倒する一人の女性が移っていた。


(綺麗だな………………あれって、もしかして……侍、っていう人、なのか?)


女性冒険者の中には、当然ロングソードや短剣などをメインの武器として、軽装で戦う者もいる。


服装は違うが、現在フォレストオークを圧倒している女性は殆ど防具を纏っておらず……棍棒による重い攻撃を食らえば、吹き飛んでしまいそうに思える。


「しかし、強いな」


「うん、強いね…………もしかして、名のある冒険者なのかな」


「そうかもしれないな」


二人はまだ冒険者として活動を初めて三年も経っていない。


そもそも有名な冒険者たちの情報を集める癖などはなく、そこまで興味もない。


(ラストの言う通り、本当に強い。あれぐらいのレベルなら……動きも単調なんだろうけど、それでも四体を相手に一度も受けることなく圧倒してる……持ってる武器は違うけど、多分……シャーリーさんやニーナさんたちよりも、強い)


四体のフォレストオークは腕や脚、腹を切断され……最後は首を切断され、数分後には全滅。


「こんなものか……それで、そこの二人は私に何か用か?」


「「ッ!!」」


バレていない……バレない距離から観察してるつもりだったが、二人の存在は刀を操る侍にバレていた。


(ここで出て行かないのは、悪手だよな……)


ティールは苦笑いしながら女性の前に姿を現し、あなたに敵意を持っていないと示す為に、軽く自己紹介を行った。


「すいません、特に用はありません。ただ、あなたとフォレストオークとの戦いに見入っていて……自分は、ティールと言います。こっちのラストと一緒に冒険者として活動してます」


「ラストだ。良い戦いだった」


説明のあれこれは任せ、ラストはただ女性が先程と戦っていたフォレストオークとの戦闘を褒めた。


(……こちらの子が、リーダーということで良いのだな?)


女性は一目でティールとラストが普通ではないと見抜いた。


ただ、竜人族である青年は一目で……強く、猛々しい猛者であることが伝わってくる。

それに比べてリーダーと思わしき青年……少年? は普通ではない雰囲気こそ持っていれば、一目でどういった強さを持っているのか……感じないのではなく、感じさせない不思議な空気を持っていると感じた。


「ありがとう……君の方が、リーダーで合ってるか?」


「はい、そうです」


「俺はマスターの奴隷だからな」


ティールは心の中で「言わんでも良いのに!!」とツッコムが、その説明を聞いたことで侍の女性は納得がいった表情を浮かべた。


(なるほど、そういう関係だったか。どこかで見たことがある眼だと思っていたが……この子の忠臣だったか)


奴隷とは口にしているものの、ラストの言葉や表情からその立場に居ることに不満を感じない。

寧ろ……その立場であることに誇りすら感じさせる。


「そうだったか。私はアキラだ。君たちと同じ、冒険者として活動している。とはいえ、この大陸に来たのはここ一年ぐらいの話だがな」


「この大陸?」


「私は別の大陸から来たんだ。今は武者修行中といったところだ」


別の大陸……最近まで村で生活していたティールからすれば、全く意識することがない言葉。


冒険者として活動している今であっても、大陸中を冒険したいという気持ちはあっても、別の大陸までは意識が向いていなかった。


「私は今、この街に出ると言われているエルダートレントという名の魔物……モンスターを討伐しようと行動している」


「っ!!?? アキラさんも、ですか」


「ふむ……そうか。二人ほどの実力者なら、目的が同じであってもおかしくないか」


目的が同じであると知り、まだ会話が終わらない……ように思えたが、アキラはその前に討伐したフォレストオークの解体を行いたい進言。


二人はその間、他のモンスターが襲って来ないように見張を行った。

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