まだまだ飽きない日々
バルバラから、引退したら是非実家に来てほしいという再就職先を提案された翌日……二人はいつもの様に次の行き先の情報を集めず……気ままに旅立った。
「……マスター、ゆっくりと休める場所でも探すのか?」
「ん? どうしてそう思うんだ」
「いや、何だかんだで戦って戦っての日々を送っているだろう」
(雪で足止めを食らった時期や、実家に帰った時はそれなりに休んだと思うけど……まぁ、確かに体を動かしてない日はないかもな)
ラストの言葉通り、ティールは戦って戦っての日々を送っている。
ラストは……これからもずっと刺激ある日々が欲しいと思っている。
しかし、これだけそれなりの期間、共に行動しているからこそ……主人が、自分ほど戦闘欲が強いわけではないと悟っていた。
「故に、ゆっくり……本当の意味で休める期間も欲しているのではと思ってな」
「本当の意味で休める期間か……ベッドで寝転がって、腹が減ったら飯を食べて……他にどういう休みがある?」
ティールにとって、日々の生活の中でも十分休めているつもりだった。
偶に二度寝、三度寝を行う……それだけでゆっくりと休めている気がしていた。
(カジノは……あそこでしか味わえない高揚感? は確かにあった。楽しいとは思うけど、毎日通いたいかと言われると……微妙だな)
ティールがこれまで溜めてきた財産を考えれば、早々破産することはないが、それでも連日通い続けていれば……ボロ負けする可能性が高い。
結果、ただ大量のストレスが溜まることになり、全く休んだ気にならない。
(お、大人の店に行く? ジンさんにそういう店があるとは教えてもらてるけど…………なんか、今俺が行くのは良くないというか……いや、興味はあるけど……なんか、ダメな気がする)
そこそこダメな部分がある大人の言葉であるため、そう判断したティールの考えは決して間違っていない。
「……湯に浸かる?」
「悪くないな。でも、湯に浸かる時に得られる喜び? って、入る前にがっつり動いているからだろ」
「そうだな……中々、思い付かないものだな」
「確かに、思い返すと中々これってのがないな」
演劇に興味はなく、ショッピングは……武器や防具、マジックアイテムの類以外は殆ど興味がない。
(そういえば、女性たちは甘いお菓子を食べるのが好きだったか? 俺もあぁいうのは嫌いじゃない……甘味巡り、というのは悪くないかもな)
良い案を思い付いた!! となるものの、そもそも砂糖などは簡単に手に入る調味料ではなく、菓子屋は一般的な料理店と比べてかなり数が少ない。
「まっ、そういうのは長い人生をかけて見つけていけば良いだろう」
ティールはラストが思っているほど、戦って戦っての日々に飽きてはいなかった。
「聞いたか、ラスト。エルダートレントだってよ」
「あぁ、勿論聞こえたぞ」
道中で宿泊した街、トルトコの宿で気になる話を耳にした。
いきなり現れたエルダートレントがトレントを従え、人間やモンスター関係無しに攻撃を仕掛けていると。
エルダートレントと言えば、Bランクの魔樹。
二人が好むような戦闘スタイルではないが、何はともあれBランクという大きな脅威であることに変わりはない。
「特にこの街に滞在するつもりはなかったが……Bランクのモンスターがいるとなれば、放っておけないな」
「あぁ、そうだな……あれだ、ここでBランクの冒険者が何もせずに通り過ぎれば、腑抜けと後ろ指を指されるかもしれん」
※せっかくのBランクモンスターだ。強い事には強いのだから、是非とも戦いたい。
二人は翌朝にギルドで軽く情報を集めた後、直ぐに出現情報があった森へと向かった。
「ん? あれは同業者、か…………見たことがない、服装だな」
探索を始めてから数時間、雑魚は襲いかかてくるも、刺激を与えてくれる存在とは巡り合わない。
だが、ようやく……モンスターではないが、二人とも興味を引く存在を発見した。
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