モテモテになる?
「それなりに貯金が溜まったら、貴族の私兵になるのもありじゃないですか?」
無理にパーティーを組んだ方が良いとは言えない。
ティールもある時期まではソロで活動し続けていた。
だが、これまでの交流から、シャーリーが自分やラストの様に、刺激ある何かを……日々を求めているわけではないことは解っていた。
そんな彼女が安全で……尚且つ、これまで得てきた経験を活かせる再就職先。
といったあれこれを考えた際、ティールは貴族の私兵になるのが良いのでは? と思った。
「そうね……あんまり他家とバチバチじゃないところなら、お願いしたいわね」
安全面という部分では、確かにティールの案は悪くない。
元々シャーリーは貴族出身という事もあり……そこまで面倒なあれこれに巻き込まれることは……おそらくない。
「でも、そういうお誘いは私よりもティール君とラストの方が来ると思うわよ」
「……普通に遠慮したいですね。今のところ、そんなに安定した生活というのは求めてないですし」
最近では、特にこの女の子に……女性に惹かれる!! という出会いもない。
シャーリーにはオリアスの件がなければ惹かれていた可能性は高いが、後々のことを考えれば……ノンビーラ家から離れたとはいえ、そういう気が起きることもない。
ただ、楽しく刺激のある生活を求めている。
「そうよね。でも、このままいけば……貴族の令嬢からモテモテになる日は、そう遠くない筈よ」
「……シャーリーさん。俺、本当にただの平民出身ですよ」
自分がそこら辺の同年代の子供と同じではない。それはもう重々承知している。
己が普通の子供だとは思っていないが、両親は本当に普通の平民である。
簡単に言えば、ティールは血統を遡って見ても……突然変異。
ティールが普通ではない成長を遂げているとはいえ、ティールの子供が同じように一般的では考えられない成長をするとは限らない。
「だとしても、あなたはこれからも順調に強くなり続けば、Aランクという頂きに到達するのは間違いないわ。そうなってくると、そこら辺の令息たちよりも、よっぽど魅力的な存在に思われる」
「それは……確定、ですか?」
「ほぼ確定ね。貴族の令息たちは……エリートであっても、誰もが羨む地位に上り詰められるのは、っほんの一握りの者たちだけ。どこかの裕福で高い爵位を持つ家の当主、もしくは近衛騎士団に所属しているか……宮廷魔術師として活動している人であれば多数の令嬢から思いを寄せられるでしょうけどね」
「それ以外の人たちと比べると、Aランク冒険者の男の方が魅力的だと」
「騎士はそれなりの安定した給料を貰えるけど、その給料以上の金額を稼ごうとなると、任務で功績を得たりしないと他に収入が入ってこないの」
「……つまり、稼ごうと思えばがっつり稼げる冒険者の方が、収入面ではそこら辺の騎士よりも上回っていると」
「そうなるわね。だって、一般的に討伐依頼を受けてもその達成報酬と、素材を売却した金額が入ってくるのよ」
素材の売却で収入を増やすのであれば、モンスターをどうやって丁寧に倒すかという技術力が重要になってくるが、間違ったことはい言っていない。
「特にあなた達は二人だけで行動してるから、他の冒険者たちよりも一人あたりの収入が多いでしょ」
「まぁ、それなりにはあるかと」
二人がその気になれば……ダンジョンに潜って潜って潜り続け、大貴族の個人的な収入よりも稼ぐことは、決して不可能ではない。
「でもあれじゃないですか、そういった理由で寄ってくるってことは、その人たちの実家が俺やラストといった戦力を引き入れたいって欲もあっての行動になるんじゃないですか?」
特に貴族出身ではないティールからすれば……貴族のそういった考え方を否定する気はないが、巻き込まれたくはないというのが本音である。
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