ここまで来たものの……

「……やっべぇな」


「はは、そうですね……でも、個人的には自分たちに刺客が差し向けられただけで済んで良かったと思っています」


ダンジョンの中で暗殺者を差し向けられた。

どう考えても、最悪なピンチである。


「っ……貴族出身の私としては、何とも言い難い件ですわね」


「そうね、バルバラ。ねぇ、ティール君。家族に危害はなかったか、確認出来たの?」


「はい。この前実家に戻った時は、特に何ともありませんでした。まぁ……その時に地元の鍛冶師に色々渡したりしたんで、実力行使に来る分には……多分大丈夫だと思います」


何が大丈夫なのかちょっと解らないが、多分大丈夫なのだろうと思わせる妙な迫力があった。


「私としては、そんなバカな誘い、突っぱねるのは全然理解出来るけどね」


「それは俺も同感だな。自分が狙ってる獲物なのに、自分たちに協力しろとか、ふざけんなって話だろ」


気が強い組のゼペラとバゼスは、ティールとラストの対応が間違っているとは思わなかった。


「二人とも……貴族出身の私が言うのもあれですが、もう少し考えて行動した方が良いですわよ」


「バルバラの言う通りよ。バカは本当にバカななんだから……そのバカは実力までバカであっても、一緒に行動してる連中までお粗末とは限らないのよ」


実家の権力が自分の実力だと勘違いするバカはいる。


ただ、そのバカの親が正真正銘の馬鹿とは限らず、子供がバカよりのタイプだと解っているからこそ、優秀な騎士を世話係として同伴させることは珍しくない。


「んじゃ、今よりもっと強くならねぇとってことだな!」


「……ティール、私の話はあのバカに通じてると思いますか?」


「えっと……い、一応通じてると、思いますよ」


既にバゼスはBランクという地位まで上り詰めた。


Bランクという地位は、貴族とはいえ決して馬鹿に、無視出来ない存在である。

バゼスは少々バカな部分はあるが、その先頭に対して超前向きなところなどは上の似た様な考えを持つ先輩たちに気に入られやすく、そういった繋がりまで考慮すれば……ドラ息子が対立した場合、ドラ息子の実家の立場が危うくなってもおかしくない。


「つかよ、ティールとラストもBランクになったんだ! 今後はそんなバカな連中も減るんじゃねぇか?」


「そうだな。これまで同業者からも絡まれることも多かったが、多少は減ると……思うぞ」


ゴルダはバゼスの言葉に同意するものの、最後の方で過ごし濁した。


「「…………」」


シャーリーとバルバラも同意したかったが、ゴルダと同様……色々と察せられる部分があり、同意の言葉が出てこなかった。


「そうなると自分としても有難いんですけど、ランクが上がっても見た目までは変わらないんで、これからもそういった人達は減らないかと」


「なんでだ? Bランクって言えば、一般的にゃあ一流って呼ばれてる位置だぜ」


よく自分で言えるな、とツッコまれるかもしれないが、それは紛れもない事実である。


「俺は見た目がまだまだ子供ですから」


「上の人たちでも、そんな強そうな見た目じゃない人だっているけどな~~」


「そうかもしれませんが……俺の場合、年齢もあれなんで、ギルドカードを偽造してるんじゃないかって疑われることもあり得そうで……」


「なんじゃそりゃ……いよし!!! そんなバカな事を言ってる奴らがいたら、俺が思いっきりぶん殴っといてやるぜ!!!!!!」


「バゼスさん、その気持ちは嬉しいですけど、殴らなくて結構です。寧ろ変な悪名が出回りそうなんで」


「そうか?」


首を傾げるバゼスに、他四人が「なんで解らないんだよ」とツッコミの視線を向けるが……内心では四人も同じ気持ちだった。


しかし、本人が口にした通り、そんなことをすればティールに変な悪名が付いてしまうこと間違いなしである。

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