予定変更

森の中で一日を過ごした後、ティールたちは再び標的であるキングワイバーンたちを探し始める。


「「ッ!?」」


そして朝食を食べ終えてから数時間後、バゼスとティールの鼻が何かを感じ取った。


「これって……」


「おっ、ティールも感じ取ったか?」


「はい。多分……向こうに居ますよね」


「そうだな!! けどよ、ちょっと多いよな」


何故、ティールが感じ取ることが出来たのか。

その点に関して問うことはなく、全く気にしていない。


それよりも、自身の感じ取った気配に違いがないかを確認したかった。


「そう、ですね」


「ってことはだ……良い予想が当たったって事だな!!!!」


「……バゼスさん。良い予想じゃなくて、悪い予想ですよ」


「はは、まぁどっちでも良いじゃねぇか! 行こうぜ!!!」


二人に続く、ゼペラたちも走る。


(どんなモンスターが増えたんだろうな……どちらにしろ、一旦予定変更してバルバラさんの守りはゴルダさんだけに任せて、俺は増えた一体の相手をしないとだな)


キングワイバーンを相手にあまり手を抜いてられないが、それでもティールたちはティールたちで色々と考えており……増えた一体を瞬殺してしまうと、それはそれで面倒が増える結果になってしまう。


「あれは……バイコーンね」


二つの角を持つ暴馬、バイコーン。

捻じれた二つの角を持ち、破壊的な突進で敵を貫く。


「っしゃッ!!!!! いくぞお前ら!!!!!」


「あっ、ちょ!! 全く、バカにも程がありますわ!!!!!」


キングワイバーンに付き従いながら動いているバイコーンは通常の個体よりも体が大きく、誰がどう戦う……まずどのタイミングで仕掛けるかなどを再度……十秒程度で構わないので、話し合う必要があった。


しかし……バゼスはそれを完全に無視し、自身の標的であるオークジェネラルに向かって走り出した。


「私たちも行くぞ!!!!!」


もう奇襲やあれこなど知ったことかと言わんばかりに、ゼペラも身体強化を発動しながら地を駆け、自身の標的であるコボルトジェネラルに向かって剛力一閃を放つ。


「バイコーンは俺が相手をします」


「頼んだわ!!!」


シャーリーはもう色々と諦めた表情を浮かべながらも、瞳の奥では闘志を燃え滾らせながら駆け出し、グレートウルフに挨拶代わりの斬撃刃を放つ。


「……これはこれで冒険者らしいと、諦めるしかないのでしょうか」


「残念ながら、そういう諦めも時には必要かもしれないな」


バルバラは気を取り直して攻撃魔法の準備を始め、ゴルダは魔砲台を守る様に大盾を構える。


因みに、ラストはバゼスがオークジェネラルに向かって走り出したのを見て、下手に考えて動く必要はないと判断し……同じようにリザードマンジェネラルに向かって駆け出した。


(一体増えているというのは確かに想定外だが、マスターがいれば大した問題にはならないだろう)


一見……押しつけの様な考え方に思えるかもしれないが、これは確かな信頼であり、決して面倒事は全て上司に押し付けよう、などとはこれっぽっちも考えていない。



「ブルゥアアアアッ!!!!」


(マッチョな馬だな~~~)


戦場で考えるような内容ではないことを考えながら戦っているが、強烈な突進や捻じれた角による攻撃は全て回避しながら、カウンターで少しずつダメージを与えていた。


(それで……キングワイバーンは自分が好きなタイミングでブレスを放ったり、魔力の斬撃を放つ、か……完全に、こっちを警戒してるわけではなさそうだな)


ティールは万が一に備え、バイコーンとの戦闘では使用しないものの、疾風瞬閃を左手に持っていた。


キングワイバーンの最大火力を瞬時に相殺、もしくは妨害できるかは怪しいところだが、備えていて損はない。

しかし……チラチラとキングワイバーンの方に意識を向けるその行動は、思いっきりバイコーンの怒りを買っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る