まだまだどれも現役
「……二人は全く心配してないのね」
「個人的に、この状況は不味いという戦況を二回ほど潜り抜けてきたので、まぁ……正直、そこまで慌てる必要はないかと思ってます」
「強敵が増えるだけだろう。可能性としてAランクが含まれているのであればまだしも、Cランク……もしくはBランクであれば、そこまで怯える必要はないだろう」
既に何度もBランクのモンスターと戦った経験があるティールからすれば、面倒であってもビビる内容ではない。
パーティーメンバーであるラストは……ゼペラやバゼスと同じく常日頃から好戦的なタイプであるため、それはそれでウェルカムと考えている。
「お二人がいるだけで不安が和らぎますわね」
「……私としては、あんまり二人だけに頼りたくないけどね」
ゼペラは未だにラストに対してイラつきを感じている……訳ではない。
実際に手合わせまでして敗北したにも関わらず、自身の方が下だと認められない程しょうもないプライドは持っていない。
ただ、実際に手合わせをした結果も踏まえ……ラストの雰囲気から、自分はまだ習得出来ていない竜化のスキルを有していると感じ取っていた。
同じ竜人族で竜化を習得している冒険者と会ったことはあるが、それでも年齢が上という事もあって嫉妬心などを抱くことはなかった。
しかし、ラストは同年代……寧ろ少し歳下ということもあり、久しぶりに焦りを感じていた。
「俺は熱い戦いが出来れば十分だぜ!!!」
「お前らなぁ……全く、もう少しは自身の命を大事にしてくれ」
リーダーらしく若い者たちの身を案じる巨人族のゴルダ。
ティールから見ても、総合的な見解から……五人の中で、一番頼りがいがあると感じていた。
しかし、ゴルダの本当の強さを知る人物たちからすれば……お前の方こそ自分の命を大事にしろとツッコム。
「今日はここで休むとしよう」
「チッ! 今日中には見つからなかったか」
「そういう事もありますよ」
適当な過ごし場所を発見し、ティールは肉や調味料を取り出して夕食の準備を始めた。
「て、手慣れていますのね」
「基本的にラストと二人だけで行動してますからね。自薦とそれなりに出来るようにはなりました」
あくまで、ティールの料理の腕はそれなりの程度。
本職たちに比べればまだまだ二流三流レベル。
ただ、冒険者という職業に就いていることを考えれば、十分料理番を任せられるレベルの腕を持っている。
貴族出身という事もあり、そこまで料理の腕がないシャーリーとバルバラ……見えない、不可視な刃で深く斬り裂かれ、眼に見えて落ち込む。
「さぁ、食べましょう」
大した敵と戦っておらずとも、やはり腹は減る。
「おっは!! いやぁ~~、マジで酒場で出される料理と比べても変わらねぇぐらい美味ぇ!!! これでエールがあれが完璧だったな!!!」
「使っている肉のランクがそれなりに高いから、そう思うだけですよ。少なくとも、料理の腕は酒場で働いてる方たちの方が上ですよ。後、酒は勘弁してください」
「ティール君……これ、香辛料を使っているだろう」
「はい、そうですけど……もしかして苦手でしたか?」
これまで香辛料による味付けが苦手という者に会ったことがなく、首を傾げるティール。
場合によっては、別の肉でもう一度料理を作るつもりだった。
「いや、そんなことは無い。ただ……香辛料は良い値段がするだろ」
「そうですね。でも、お金は持ってるんで大丈夫です。俺たちは今のところ武器や防具に困ってないんで」
ティールは疾風瞬閃と豹雷……そして一応、オーバーサイズ。
ラストは牙竜を持っており、二人の共同武器としてブラッディ―タイガーの素材が造られたバスターソードにソードブレイカー、斬馬刀がある。
スカーレッドリザードマンとリザードマンジェネラルの素材から造られた皮鎧もまだまだ使える。
「だから、こういった事に金を使っても全然問題ないっすよ」
夕食の料理に香辛料をそれなりに使ったからといって、その代金を貰おうなどという考えは……そもそも生まれようがなかった。
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