珍しいキング

「つーかさ、キングワイバーンが生まれるのって、めちゃくちゃ珍しいんだよな?」


目的のモンスターの姿がよく確認されている場所へ向かう道中、ふと思い出したようにキングワイバーンの情報を口にしたバゼス。


「そう言えばそうだったような、そうじゃなかったような」


「他のモンスターと比べ、上位種が生まれるのは珍しいな。色や属性が違う個体は場所によってそれなりに現れるらしいが、キング種に関してはあまり目撃例がないらしい」


キングワイバーンは他種族の上位種モンスターを従える力を持つ特殊な個体。


そういった能力を持ってるからか、ゴブリンやオーク、リザードマンなどのキング種よりも目撃情報が少ない。


「……つまり、私たちはある意味運が良いという事になりますわね」


「そうとも言えるな。しかも、既にそれ相応のモンスターを従えている状態だ」


「…………そのキングワイバーンは、何をしたいんでしょうね」


「ふむ……過去に、上位のドラゴンが手当たり次第に人の街を破壊し続けたという例はあるが、今のところそういった被害は出ていない」


遭遇した冒険者の大半は殺されてしまっているが、キングワイバーンたちが村や街を襲ったという情報はない。


「従える力があるなら、いずれその軍団で襲うんじゃないの?」


「確か、ゴブリンやオークにはそういった傾向が強かったわね」


「ん~~……ゴブリンやオークは一応理由がありそうですけど、ワイバーンに関しては……人の街を襲ったところで、って気がしますけどね」


いったい何を目的で動いているのか。

そんな事を考えていると、人間どもの会話など知らんと言わんばかりの勢いで数体のオークが襲い掛かって来た。


「豚か~~~」


「良いじゃねぇか、豚。美味いっしょ」


「こういったところぐらい、前に出ておこうか」


襲い掛かって来たオークの数と同じく、ゼペラとバゼス、ゴルダが前に出た。


(……多分じゃなくて、絶対に準備運動にならないだろうな)


ティールの予想通り、三人は一分どころか三十秒も掛けずにDランクのモンスターを圧倒した。


「ティール君、こいつの死体を保管してもらっていても良いか?」


「分かりました」


解体はとりあえず後回し。


六人はなるべく早く見つけたいと思いながら、目撃情報があった場所へと向かうが……どの地点にもキングワイバーンの影すらなかった。


(雨が降ったから、か? 嗅覚上昇を使っても匂いが追えないな……あいつに頼めば、追えるか? けど、呼んだら試験にならないし……というか、そもそもギルドに報告してないから、絶対に後で面倒なことになるよな)


ティールとラスト、戦闘力は抜群に優れており、その他の面もそれなりに……ではあるものの、追跡力などはそこまで高くない。


「はぁ~~~、中々見つからないわね」


「あんまり強い連中も襲い掛かってこねぇしな」


「バゼス、昇格試験中なのだから、そちらの方がありがたいのだぞ。キングワイバーンなどと戦う時に、万全な状態でなくて良いのか?」


「むっ…………そりゃ困るな。でも、あんぐらいのモンスターじゃ、あんまり体が暖まらねぇしな」


三体のモンスターが襲ってきた後も、数回の襲撃があった。


しかし、どれもEランクやDランクのモンスターばかり。

ティールとラストは当然、ゼペラたちにとっても大した敵にはなり得ない相手ばかり。


好戦的なゼペラやバゼスから不満が零れるのも仕方ない。


「…………あれですね。一番面倒な……嫌なパターンは、自分たちが探している間に、キングワイバーンが他のモンスターを従えることですね」


「ッ……それは、避けたい流れだな」


是非とも避けたい流れだが、絶対にあり得ないとは言えない。


確認出来ている内容を考えると、配下として増える個体は最低でもCランクのモンスター。

最悪の場合……Bランクのモンスターが配下として増える。


そのもしもの可能性にゴルダは頭を悩ませるが、好戦的な性格の二人だけはこっそりニヤニヤしていた。

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