過去一の目覚め
「おはようティール、ラスト」
「おはようございます、シャーリーさん」
「おはよう」
昇格試験当日、三人は集合時間の十五分前には待ち合わせ場所に到着。
まだ待ち合わせ場所には誰もおらず、三人が一番乗りだった。
「いつも通り、リラックスしてるわね」
「そうかもしれませんね。シャーリーさんは……ちょっと緊張してますか?」
「そうね。Bランクの昇格試験ということもあるけど、これから戦うであろうモンスターを考えると、それなりに緊張してしまうわ。二人は……本当に緊張してなさそうね」
何かに挑戦する際には、それなりの緊張感を持っていた方が良い場合もあるが、ティールとラストはその緊張感が全くなかった。
「……あの恐ろしい存在に比べたら、っていう感覚があるからかと。なぁ、ラスト」
「ふふ、そうだな。嘗めて掛かるのは良くないのだろうが、あの存在を思い出すと……それだけで緊張感が消えてしまう」
「…………二人が言う、あの存在というのは、やっぱり岩窟竜……レグレザイアの事よね」
シャーリーはこれまでの冒険者人生の中でBランクモンスターには遭遇したことはあるが、Aランクモンスターには一度も遭遇したことはなく、離れた場所から見たこともなかった。
「はい、そうですよ。敵意や殺気を向けられたわけじゃないんですけど、その場にいるだけで存在感があって……なんと言うか、生物としての格が違う? っていう感覚を体験しましたね」
「……悔しくはあるが、似た様な感想だ」
加えて、二人は数十を越えるモンスターとの戦闘も経験している為、平均的な戦闘力が高いとはいえ、たかが数体程度の集団に対してビビるという感覚は一切なかった。
「その体験は、色んな意味で羨ましいわ。あっ、バルバラたちも来たみたいね」
三人に遅れて約五分後、バルバラとゼペラ、バゼスの三人が到着。
「あら、私たちが一番かと思いましたが、三人共随分とお早い到着ね」
「気合が十分あるってことでしょ。まっ、私も気合は十分あるけどね」
「ゼペラやバゼスには、もう少し気合以外にも冷静さを持ってほしいところだけどな」
「気合が危機を打破するものよ」
「それは解ってるけどなぁ……ところで、バゼスの奴はまだか?」
「そういえば、あいつには確か前科があるんだったわね」
ここで言う前科とは、犯罪歴ではなく、過去の昇格試験で数分とはいえ、遅刻したことを指す。
「えっ、そうなんですか?」
「そうよ。まぁ、その時は数分程度だったらしいけど、あんまり朝が強くないみたいだからね……もしかしたら、今回も多少は遅刻するかもね」
ティールからすれば、数分などシャーリーたちと話していればあっという間に潰れる為、特に気にはしないものの……上を目指す者として、遅刻は厳禁。
(シャーリーさんたちから話を聞いた感じ、そういうところは予想出来てたけど……もしかして、バゼスさんって俺と同じであんまり上を目指すことにはそこまで興味がないのか?)
同類かもしれない、なんて考えていると、集合時間の五分前にのんびりと歩きながらバゼスが到着。
「おっ、もう皆いるのかよ。はえ~な」
「あらバゼス、あなたにしては珍しく早い到着ね」
「なっはっは!! なんつーか、昨日からワクワクしっぱなしでな! 今までで過去一の目覚めだったぜ!!」
子供の様に明日が楽しみ過ぎて夜眠れなかった……ということにはならず、寧ろ夜もぐっすり寝ることができ、朝もスッキリ目が覚め……最高の朝を迎えることが出来た。
「んじゃ、さっさとキングワイバーンらをぶっ殺しに行こうぜ!!!」
「私としてはキングワイバーンの素材を使って新しい防具を造りたいから、あんまり派手に倒したくはないのだけど」
「お前ら、そういうのは目標のモンスターを倒し終えてからにするんだ」
纏め役であるゴルダは集合時間までに全員が集まったことにホッとしたものの、結局朝から多少な問題を抱えることとなった。
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