格が足りずとも
「あんた……剣士や拳士よりのタイプじゃ、なかったのかい?」
「いやぁ~~~、えっと……あれなんですよ。師匠は二人いて、その内の一人がエルフなんですよ」
「そ、そうなんだね……」
師匠にエルフがいる。
という理由で簡単に納得出来ることではない。
(この子……平民出身っぽいけど、もしかして貴族の令息……いや、隠し子なの?)
これまでティールと関わって来た者たちの殆ど思った。
こいつは、実は貴族の令息なのではないかと。
ワンチャン……隠し子なのではないかと。
しかし残念と言うか、残念ではないと言うか……ティールは正真正銘、あの村の遺伝子を脈々と受け継いできた子供である。
「マジかよティール!!! 俺、ほんのちょこっとは魔法に憧れがあるからよ~、ちょっと頑張った時期もあったけど、全然なんだよ!!!」
バゼスは一部の魔法スキルを習得はしているものの、使える技術は体に纏うことのみ。
バルバラやシャーリー、ティールの様にちゃんとした攻撃魔法を扱うことは出来ない。
「ん~~、最初は掌に魔力を集めて、玉や槍を発射する。それを繰り返していけば、何かしら使えるようになるかも……しれませんよ? ただ、バゼスさんみたいなタイプの方なら、生み出した玉や槍を掴んで、ぶん投げた方が威力は出るかと思いますけど」
「ほほぅ~~~? ぶん投げるか……そりゃ面白そうだな!! いっちょ試してみるぜ!!!」
「あっ……行っちゃった」
模擬戦の連続で体力は消耗したものの、魔力はそこまで減っていなかったこともあり、直ぐに訓練を始めた。
「……それで、どうしようか」
「そうですね……最初はバルバラさんと同じく後衛。その後はケースバイケースで前衛として動いた方が良いかと」
「マスター、リザードマンジェネラルの相手は俺がやっても良いか」
「ん? あぁ、別に構わないけど…………そうか、そうだな」
どうせ戦うなら、まだ戦ったことがないモンスターと戦った方が良いのでは? と考えたが、そもそも今回の昇格試験で戦うモンスターの中で、まだ一度も戦ったことがないモンスターはキングワイバーンのみ。
そしてラストは過去に一対一の勝負でリザードマンジェネラルを討伐した経験がある為、討伐をスムーズに……安全に終わらせるためにも、それがベストな選択と言える。
「そういえば、ラストは以前リザードマンジェネラルを倒したことがあったわね」
「……しかし、ラストさんがリザードマンジェネラルの相手をするとなれば、誰がキングワイバーンの相手をするのでしょうか?」
標的はリザードマンジェネラルの他に、オークジェネラルとコボルトジェネラル、グレートウルフがいる。
そしてティール側の前衛はラスト以外にゼペラ、バゼスにシャーリー……一人足りない状態となる。
「となると……キングワイバーンの相手はティール君にしてもらうことになる、か」
ティールとしては全く構わない。
まだ出会ったことがないキングワイバーンに興味はある。
しかし……ティールは今回の戦闘が、昇格試験ということを忘れていなかった。
「俺は前衛として戦っても良いんですけど……それは他の方たちは、どう思いますか」
「……私は、キングワイバーンと戦ってみたいね」
自分ではまだ格が足りないと解ってはいるが、その足りない格を埋める為に戦いたいという意志を示すゼペラ。
「私も自慢の攻撃魔法をキングワイバーンに叩きこみたいですわ」
「ん~~~~……そうね。私も、強敵を相手に逃げたくはないわね」
「全く、お前たちは……おそらく、バゼスも同じ考えだろうな」
本人に尋ねずとも、どういった答えが返ってくるかは解っている。
「ふむ……………ティール君、君の役割が重くなってしまうが、頼めるだろうか」
「えぇ、全然大丈夫ですよ。それが出来れば、俺もそれなりに活躍したということになるでしょう」
ゴルダが何を頼みたいのか直ぐに察し、ティールはそれをノータイムで了承した。
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