何の試し?

「ティールさんとラストさんで宜しいでしょうか」


バルバラとの食事を終え、その後は解散。

泊る宿も違い、久しぶりに二人で新しく訪れた街を散策していると、服装からしてギルド職員であることが窺える。


「はい、俺がティールです」


「俺がラストだ。それで、ギルド職員が休暇中の俺たちに何か用か?」


特に待ちに待った休暇などではない。

しかし、自分たちにギルド職員が声を掛けてきたという状況から、主人が嫌う面倒な何かに巻き込まれるのでは? と即座に判断。


故に休暇中という言葉を強調して牽制した。


ギルド職員もラストの意図を把握しながらも、仕事なのでここで圧に押されて要件を離さない訳にはいかない。


「申し訳ありませんが、是非ともギルドに来ていただきたいのです」


「…………それは、今回自分たちが受ける昇格試験に関する内容ですか?」


「はい、その通りです」


「……分かりました。ただし、昼飯ぐらいは奢ってくれますよね」


「勿論です!!!!」


昼食を奢ってくれるなら、という事でティールはギルド職員からの頼みを承諾。


二人は冒険者ギルドに向かい、中へ入ると……そのまま普段は使われることのない、地下の訓練室に案内された。


(こんな場所があるのか。もしかして、今回の昇格試験に関わるから、あまり他の同業者たちに知られたくないとか?)


色々と考えるティールの前には……実年齢は三十半ばだが、明らかに二十代にしか見えない元冒険者のギルド職員が武器を持って佇んでいる。


「お待たせしました!!!!」


「うん、ありがとね。初めまして、噂のスーパールーキーたち。僕はロズル、元冒険者の現ギルド職員」


「初めまして。Cランクのティールです……俺たちをこの訓練室に呼んだ理由は、実力テストですか?」


「うん、まぁそんなところだね。三分だけで良いから、二人とちょっと戦っておきたいなと思って」


「三分だけですか……分かりました」


ティールは訓練室に置かれている武器から二つのロングソードを取り出し、開始線に立つ。


「準備運動はいらないのかい?」


「実戦で、敵はそういう準備までは待ってくれないので」


「はは! 良い回答だね。それじゃあ……始めようか」


二人を訓練室まで案内した職員が砂時計を倒し、模擬戦がスタート。


(とりあえず、普通に攻めれば良いよな)


ティールはロズルが二刀流だからという理由で、敢えて自身も二刀流で挑んだのではない。


ただ単純に、自身が本気で敵に挑むときは疾風瞬閃と豹雷を使うため、二刀流で挑んだ。


「はっはっは!!! 良いね、本当に強いよ!!! 噂通り……いや、噂以上だね!!!!」


「どうも、有難うございます」


「それじゃ、ギアを上げていくよ!!!」


一分半ほど過ぎたあたりで、スキルと魔力の使用を解禁。


互いに訓練室が壊れない程度に、徐々に徐々にスピードとパワーを高めていく。

そして……流れ的にはここからが本番!!! といったところで、三分が経過。


「うん、良いね。凄く良いよ! お疲れ様!」


「うっす」


ティールの模擬戦が終わった後……次はラストの番。


ロズルは特に休憩を挟まず、そのままラストとの模擬戦を行う。

その流れにラストは嘗められていると感じることはなく、ただただ集中力を高めていく。


(予測を……高めろ)


最初こそティールと同じく、純粋な身体能力と技術によるぶつかり合い。


「これは、これは……本当に、びっくりだね!! ここ数年、感じてなかった、驚きだよ!!!」


「それは、光栄だと、言っておこう」


手数、スピードでは二刀流のロズルが勝っているものの、大剣を扱うラストは降りかかる斬撃を冷静に……時に紙一重といったギリギリの距離で躱し、カウンターを叩きこむ。


そして今回も同じく途中から両者のギアが上がり、模擬戦は更に加速。


「ふぅ~~~。いやぁ~~~、これでまだ完成してないんだもんなぁ。まさに末恐ろしい逸材だ!!!」


「ルーキーたちからすれば、現役を引退しているあんたがここまで動けることの方が恐ろしいだろ」


模擬戦終了後、二人とも互いの実力を賞賛し合い、一先ず初っ端から険悪な仲にならずに済んだ。

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