残りの面子

「ところでシャーリーさん、今回の昇格試験に参加する他の方々を知っていますか」


「いえ、知らないわ。バルバラは既に把握してるの?」


「えぇ、勿論ですわ!! 今日は特別に教えて差し上げますわ!!!」


一々テンションが高くなるものの、ティールはバルバラのそういうところが嫌いではなかった。


「一人はゼペラというラストさんと同じ、竜人族の方ですわ」


「……知らないな。おそらく、同郷の者ではないだろう」


「良かったな」


顔を合わせても変な空気にならないのは有難い。


「女性ではありますが、Cランクの中では飛び抜けて槍の扱いが上手な方の様です」


「中間距離で戦うのが上手いんですね」


「彼女の場合、武器を失っても素手での殴り合いでCランクのモンスターを鎮めたことがあるようです」


バラバラの説明で……ティールの頭の中で、勝手に筋肉ムキムキな竜人族の女性像が形成されていく。


「ですが、素手での戦いが強いという点に関しては、残りお二方も同じかもしれませんね」


「人族じゃないってことですか」


「その通りです。二人目の方は巨人族のゴルダさん。男性の巨人族で、大盾と戦斧で攻防を行う一応タンク専門の方らしいです」


「巨人族でタンクとか……凄い頑丈ですね」


「Bランクモンスターとの戦闘経験もあるらしいですが、その戦闘では同業者への攻撃を幾度も防御し、強力な攻撃を防ぎ、受け流し続けたようです」


「ゴルダさんね。会ったことはないけど、名前は聞いたことあるわ」


Cランク冒険者の中で、Bランクモンスターとの戦闘経験がある者は自然と噂が広まるのが早い。


当然……ティールとラストの名前も本人のところで広まっている。


「そして最後は獅子人族の男性、バゼスですわ」


「……バルバラさん、もしかしてあまりそのバゼスって人の事、あまり好きじゃない感じですか?」


「良く解りましたね」


「ま、まぁ……それだけ顔に出てたら」


ティールの言葉通り、バルバラの顔には嫌悪という感情がハッキリと現れていた。


「あぁ……あのバゼスか」


「シャーリーさんも知ってるんですか?」


「前に一緒に仕事をしたことがあるんだ。実力は確かなんだが……こう、遠慮がない性格なんだ」


「遠慮がないというと……俺を見れば、お前チビだな、とか思ったことを直ぐに口にしてしまうってことですか」


「うん、そうね……容易に想像出来てしまうわ」


あまり面白くない当時を思い出し、シャーリーだけではなくバルバラも大きなため息を吐く。


「……それなら、ラストがそのバゼスって人と喧嘩にならないように気を付けないとですね」


「…………大人の態度で、冷静な頭で対応する」


「そういう感じで頼む」


「俺としてはマスターをバカにするのであれば殴り飛ばしたいが……試験前であれば、遠慮すべきか」


暴走列車の様な部分が大きいラストだが、ティールからの教えで割とそういう部分のブレーキが効く。


ただ……抑えなければ、余裕でちゃんとした場で半殺しにしてしまう可能性大。


「それは有難いですが、おそらく……いえ、必ずティールさんに対して面倒な絡み方をしますわ」


「でしょうね。私としては、一発解らせるのも一つの選択肢だと思うけど」


「ん~~~~……でも、Bランクへの昇格試験を受けられるレベルなんですから、こっちがその気の圧を出せば、とりあえず大人しくなるんじゃないですか?」


「……あいつの場合、ますます面倒な絡み方をしそうですわ」


「本人に悪気がないところがまた良くない……まぁ、あいつの対応についてはラストに任せるよ」


「もしかすると、最年長であるゴルダさんが止めてくれるかもしれません」


ルーキー同士、もしくは同年代の喧嘩をよく仲裁することがあるゴルダ。

本人の性格がそう動く要因でもあるが……なにより、その大きな体は本人にその気がなくとも酔いを醒まさせる圧がある。

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