推しの復活?

「ところで、そちらのお二人は……はっ! もしや、ようやく固定のパーティーを組んだのですか!!」


「違うわ、バルバラ。二人は偶々依頼された場所? が被って知り合ったの。そしたら、その依頼が終わった後に丁度Bランク昇格試験を受けることになったから、ニュパートンまで一緒に来たの」


「あら……そうだったのですね」


「こっちがティールで、こっちがラスト。とても頼りになる同業者よ」


シャーリーが二人の名前を教えた瞬間、バルバラの表情が揺れた。


「っ、あなた達が……あの、岩窟竜を倒しと噂の!!??」


ティールは思わずズッコケそうになった。


「あの、岩窟竜を倒してませんよ。提示された条件を達成したので、ドラゴンの涙を譲ってもらっただけです」


「あら、そうでしたのね。これは失礼……しかし、なんとも不思議な雰囲気をお持ちですね」


元々貴族令嬢であったバルバラはこれまで多くの実力者と対面する機会があり、その中にはとても実力者とは思えない見た目の者もいた。


そういった経験があったからこそ、侮ることなく直ぐにティールが見た目通りの冒険者ではない事を察した。


「せっかくこうして再開したのだから、一緒にご飯でもどうかしら」


「えぇ!! 勿論よくってよ!!!!」


「あの……」


「行きましょう、ティール君。ラストさん」


「あ、はい」


その一緒という言葉には、当然の様に二人も含まれていた。


こうして悪い意味で面倒な同業者に絡まれることはなかったが、ギルドから出て行く際……多くの野郎冒険者たちが

二人に嫉妬の眼を向けることとなった。



「まぁ! お二人はあのヴァルター様の指導係をしていたのですね!!!」


昼食の際、お互いの冒険譚を語る中、バルバラは二人がヴァルターの指導係をしていたことに驚き、やはり二人は他の冒険者と色々と違うのだと改めて感じた。


「……ヴァルター様、と呼ぶんですね」


バルバラはヴァルターと同じく伯爵家の令嬢。

四女ではあるものの、立場的にはそこまでヴァルターと大差はないため、その呼び方に少し引っ掛かった。


「ティール、ヴァルター様はその先天性スキルが明確になってから、令嬢たちの間ではこう……白馬の騎士? の様なイメージを持たれていたんだ」


「な、なるほど……そ、そういう事でしたか」


正直、あまりよく解らない。

よく解らないが……納得出来ないこともなかった。


「して、お二人の指導で遂にヴァルター様の実力が開花されたと!!!!」


「聖剣技と暗黒剣技に関して、俺は特に何もしていない。解決したのは全てマスターの指導あってだ」


一応、間違ってはいない。

その説明で間違ってはいないが、どことなく丸投げしたい感が強い。


「いや、あの、そんなに凄い特別な指導とかはしてませんよ。ただ、どういった気持ちで……心構えでそれらの力を使えば良いのかを教えただけですから」


「……ですが、これまでそれを教えられる方がいなかったからこそ、ヴァルター様はその二つのスキルを扱うことに苦戦していたのですよね?」


「うっ……まぁ、そうらしいですが」


「流石ですわ!!!!」


相変わらず純粋な賞賛が苦手なティール。


しかし、バルバラからすればティールは膝から崩れ落ちそうになっていた白馬の騎士を支え、もう一度歩き出す力を与えた陰の立役者。


称賛するなというのは無理な話だった。


「しかし、ヴァルター様だけではなくヴァルター様の弟まで狙う不届き者がいるとは……」


「バルバラ、勢い良く肉にフォークを突き立てるのははしたないぞ」


貴族令嬢であるバルバラにだからこそする注意。

だが、自分たちのアイドル? の様な存在であるヴァルターを……その家族を狙う者がいると知ってしまえば、一ファンとして怒りを抑えろというのは無理な話だった。


(……ヴァルター様。あなたが知らないところにも、味方? はどうやらいるようですよ)

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