良い評価は揃ってる

「そういえば、私そろそろBランクに昇格すると思うんだけど、二人はそういう情報はギルドから伝えられてないの?」


カラン、と氷とグラスがぶつかる音を立てながらゆっくりと顔を向けるシャーリー。


(……いやぁ~~~、ダメだ。なんかこう……うん、ダメだ)


とりあえずダメという考えが頭を埋め尽くす中、なんとか言葉を絞り出す。


「この前……岩窟竜の一件で、ウリプールのギルドマスターから、可能性は十分にあるって伝えられました」


「あらそうなの? それなら、タイミング的に一緒に昇格試験を受けることになりそうね」


「…………どうでしょうか。ギルドとしては、あんまり俺を上のランクに上げるのはどうか? って思う人もいるかもしれません」


「もしかして、過去に大きめの問題でも起こしたの?」


知り合って間もないが、ティール……そしてラストが自分から問題を起こすタイプには思えず、軽く首を傾げる。


「まぁ、意中の女性にモテたい? そんな理由でグリフォンに挑もうとした令息がいたんだ。そいつらが俺とラストに依頼するから、自分の一時的に部下になって戦え的なことを言われたんだ。


「それは中々に傲慢ね。それで、思いっきり殴っちゃったの?」


「そこまで考え無しに動きませんよ……まぁ、結果的にダンジョンの中で裏の連中に襲われることになりましたけど」


「上手くいかない事があると、直ぐに暴走するわよねぇ」


ダンジョンの中でモンスターではなく人間に襲われると、人によってはトラウマになりかねない。

そんな出来事を笑い話にしてしまうティールのメンタルに驚嘆を覚える。


「後は……岩窟竜とあれこれする時に、実際にぶつかり合った訳じゃないんですけど、ちょっと高ランクの同業者と揉めそうになったんですよ」


「あら、それは……確かに、ギルドとしても困るわね」


今のタイミングで昇格試験を行い、本当にBランクに昇格した場合……ギルドのお偉いさんたちもバカではない為、どういった問題が起こるか予想出来てしまう。


「だから、ギルドが自分たちをBランクに上げようと考えていたとしても、もっと後になると思います」



翌日の昼手前……次の目的地は何処にしようか、もしくは適当にぶらぶらと進もうか考えていると、ギルド職員に捕まり、ギルドへと案内され……先日、あれだけシャーリーに「俺たちが今Bランクに上がる事はないですよ」と言っていたにもかかわらず、ご案内が届いてしまった。


「……それは、マジですか?」


「はい、大マジです。今回の昇格試験に合格すれば、最年少でのBランク昇格になります」


「そう、なんですね」


最年少記録……それだけ聞けば、喜び打ち震える内容である。

しかし、ティールはその最年少ながら人間の黒い部分をそれなりに知ってしまっている。


(……こういう部分が足りないんじゃないですか、みたいな事を言っても無意味だよな~)


ギルドはこれまで二人が討伐してきたモンスター、ダンジョンでの活動記録。

そして今回指名依頼という形で受けていた指導系の依頼で高評価を得ている。


確かに年齢という点は一応論点となったものの、結果として冒険者ギルドが冒険者を本当に動かしたい時に動かすには……現時点で上げておいた方が良いという結論に至った。


「勿論、ラストさんも一緒に受けられますが……」


「マスターが受けるのであれば、俺も受けよう」


なんだかんだで、ランクが上がれば多少は嬉しいものがある。

ラストとしては割と乗り気ではあった。


「…………分かりました。受けます」


「本当ですか!? あ、ありがとうございます!!!」


ティールはあまりランクを上げたがらない? という情報がギルドに広まっていたため、個室で明確に昇格試験を行うと伝えた受付嬢は受けてくれるのかドキドキであった。


仮にティールが拒否した場合は……上からあの手この手を使って受けてもらえという指示を受けていたが、幸いなことにあの手この手を使わずにミッションを達成した。

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