牽制牽制牽制牽制!!

(上手い!!!! ナイスな言葉選びです、ヴァルター様!!!!!)


ティールは変に勘繰られない様、顔に出ないようにグッと堪える。

しかし……本当はヴァルターの言葉選びを褒め称えたかった。


今回の一件、結果としてオリアスが命を落とすことがなければ、ヴァルターが命を落とすこともなかった。

二人の体のどこかが欠損したということもなく、最良と言える。


ただ、最後の……最後のオリアスが兄に対して投げかけた質問。

そこで返答を間違えてしまった場合……一勝埋まらない溝が生まれたかもしれない。

最後の最後でヴァルターが最高の言葉を……兄だからではなく、家族だからと伝えた事で、最悪の結果に至らずに済んだ。


とはいえ、一件落着とはならない。

ティールとしてはヴァルターが死なず、オリアスも無事で良かった良かったと言いたいところだが、騎士や魔術師から事の顛末を聞いたギャルバとしては頭痛の要因となった。


「そうか……報告後苦労」


「「「「「「「はっ!!!」」」」」」」


騎士や魔術師が部屋から出て行くと、ギャルバは一つ大きなため息を吐いた。


「……本当に、彼らには助けられたな」


「えぇ、本当に感謝しなければなりません。話を聞く限り、仮に護衛の騎士、魔術師たちが一か所に集まっていたとしても勝てるかどうか……」


興奮状態だったCランクのモンスターたちは痛覚が麻痺していたこともあり、ちょっとやそっとの攻撃では全く止まらず、四肢を切断されても命尽きるまで暴れ続ける凶暴さを有していた。


「敢えてヴァルターではなくオリアスを狙うとは……やはり、ヴァルターの精神を削るのが目的か」


「おそらく。しかし、今回のようなことが起きたとなると、実戦訓練は控えた方がよろしいのではないでしょうか?」


「……難しいところだな」


どの家が仕掛けてきたのか、ある程度候補は絞れている。

だが、候補を絞れたところで、報いを受けさせることが出来るかは別。


(私の手で守れない時が必ず来る。そうなった時……子供たち自身が強くなければ、守ることが出来ない)


それでもギャルバはただ守りの姿勢を取るだけではなく、交流がある者たちに今回の一件について、公の場で語ったりなど直接攻めることは出来ないが、何度も牽制を行った。



「いやぁ~~~~、本当に助かったよ!」


絶体絶命の危機が過ぎ去った日の夜、二人はシャーリーに誘われて酒場で食って呑んでいた。


「あれだね、まさに鬼の如き強さだった。いや、ティールの戦闘スタイルを考えれば……閃光の如きって言った方が良いかな」


「マスターであれば、どちらも似合うな」


ラストはどちらの表し方でも絶賛するが、ティール本人はひとまず前者は止めてほしかった。


(閃光の如きというのは、確かに高速で動いて敵を切断してってのが得意だから否定しないけど、鬼の如きは……ダメでしょ。あれだよ、鬼人族の人たちに失礼だよ)


順調に身長は伸び続けてはいるものの、当然ながらラストと比べれば色々と小さい。


「あれね、ティールには閃光っていう二つ名が似合うと思うわ」


「閃光って……どっかで聞いたことがある気がする」


「ふむ、確かにありふれた二つ名だな」


「いや、ラスト。別に俺はバカにしたいわけじゃないんだよ。ただな、仮にそういう二つ名で呼ばれるようになったら、既に呼ばれてる人から変な因縁を付けられそうだろ」


しょうもない面倒事を避けられるのであれば、普通に避けたい。


二つ名という呼び名に興味はあるが、それが要因で面倒が降ってくることは目に見えている。


「あら、ティールは二つ名で呼ばれたくないの?」


「……まだ若いんで」


実力云々は嫌味になると解っている為、口には出さなかった。


その後、シャーリーと呑んで喋っていることに妬いた数人の冒険者が酔った勢いで絡んでくるも、ラストが床に顔をめり込ませたことで鎮圧。


三人は場所を変えて呑み直すことにした。

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