美人だしね

(……この二人であれば、あの岩窟竜を倒せたのではないか?)


二人が全力で戦うところを見たわけではない。

しかし……たった二人で裏の組織を潰した。

その功績から二人の戦力はAランクモンスターに匹敵するかもしれない。

ギャルバがそう思うのも無理はなかった。



「……」


「マスター、暗い顔だな」


「ん? まぁ、そうだな……」


「俺たちで一つの組織を潰してきたんだ。バカは減ると思うぞ」


ラストの言葉は解かる。

ティール自身もそう思いたいが……考える力があるからこそ、最悪のパターンが頭に浮かんでしまう。


「……とりあえず、実家に手紙を送っとかないとな」


「ふむ……その方が良いかもしれないな」


「ラストは送らなくても良いのか?」


ティールがラストという竜人族の青年と共に行動し、パーティーを組んでいる。

それは少し調べれば解かる事であり、必然的にそちらへ危機が及ぶ可能性が生まれる。


「……対応出来なければ、自分たちが弱かった。そう思う種族であり、その思考が強いからな……慢心してはいない。おそらく、大丈夫だろう」


実家、生まれ育った村でごたごたがあったとはいえ、ラストとしても多少は心配に思う気持ちはある。


だが、それはそれでこれはこれ。

幼い頃からそういう教訓を受けてきこともあり、次第にその心配は薄れていく。


「それに、少しでも調べれば俺たちが貴族との付き合いがあることも解る。マスターが貴族を嫌っているというか……敵対するのであれば倒す。そうでなければ普通に接する。その辺りが分かれば、今は関りがない貴族たちもマスターを守ろうとするのではないか?」


「…………いざという時、力を貸してくれるかもな」


貴族と敵対したのであれば、殺してしまえば良い?


それはそうなのだが、現実的に考えて不可能に近い。

ティールとラストの戦闘力であれば物理的な問題は解決出来るかもしれないが、法的に犯罪者になってしまう為、結果として不可能という結論に至る。


(……もっと、もっと力がいるな)


ティールの眼に闘志が宿る。


それを感じ取ったラストにも飛び火する。


「ねぇ、あなた達……ティール君とラストさんで合ってるかしら」


「ん? あっ……あなたは、シャーリーさんですよね」


「あら、私の事を知ってくれてるみたいね」


後ろから二人に声をかけてきた人物は、現在ノンビーラ家で四男のオリアスを指導しているCランク冒険者、シャーリー。


「良かったら、これから一緒にご飯でも食べない?」


「……分かり、ました」


何を考えてるのか、まだ解らないし読めない。

ただ、本能的に気に入った美人と食事できるのであれば、断る理由はない。


三人は洒落たカフェに入り、適当に料理を頼む。


「二人は……まだ冒険者として歴は長くないのよね?」


「そうですね。一年ちょっとってところです」


「……もしかして、高ランクの冒険者から指導を受けてた?」


「一人は……冒険者じゃないですけど、エルフの先生がいました。もう一人は……あんまりしっかり教えてもらった訳じゃないんで先生、師匠とは言い難いですけど、元Bランクの冒険者と模擬戦をしてました」


「それは色々と凄いわね。いや、あの家の騎士たちが、あなた達二人は子供への指導が上手いって話を聞いたから、何か秘密があるのかもと思ってね」


オリアスへの指導は……順調と言えば順調である。

オリアスも個人指導係となったシャーリーにはまだツンツンしながらも、指導内容に対して文句はなく……彼を幼い頃から知っている者であれば、寧ろ意欲的に取り組んでるのがバレバレである。


ただ、ヴァルターほどの成果が出ているとは言い難かった。


「二人は普段、ヴァルター様とどういった訓練を行ってるの? あっ、勿論情報料としてここのご飯代は私が出すわ」


有難い提案である。

とはいえ、二人は何から話せば良いか……パッとこれは良い訓練だよな! と思える出てこなかった。

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