今、恐ろしい
「マスター、今更だが潰してしまって良かったのか?」
数分前、二人は自分たちに敵意がある裏の連中を潰した後……彼らから聞き出したアジトに乗り込み、その場にいる組織のメンバーを全員殺した。
そして使えそうな書類を全て奪い、死体は亜空間の中に放り込み、今現在二人は森へと向かっていた。
「……ギャルバさんが困らないか、ってことか?」
「そういうことだ」
貴族であっても……権力を持つ者だからこそ、そういった組織の力を使うことがある。
「多分、困らないんじゃないか? ノンビーラ家がどの組織と繋がってるかなんて分からないけど、ギャルバさんとしても自分の息子を狙う様な組織、必要ないと判断すると思うけど」
「ふむ、それもそうだったな」
腹の内を理解しているわけではない。
親しい間柄でもないが、ギャルバが実の息子を……ヴァルターを殺そうとしているとは思えない。
それはラストも同じ考えだった。
「とりあえず、今回の一件で裏の組織を一つ潰したことになるんだけど……これで俺たちにかかるちょっかいは減ると思うか?」
「……何人か出来る奴はいた。そういった奴らが居る組織を二人で潰した。それを他の連中がどこまで信じるかは解らないが、警戒はするだろう」
「どうせなら、一生そのまま手を出さないでほしいもんだ」
タイマン勝負、もしくはティールとラストがいきなり勝負を仕掛けたりしなければ、もう少し戦えたかもしれないかった。
しかし……二人は派手な攻撃をしないと決めていたが、速攻で終わらせるために身体能力は全開の状態で奇襲を仕掛けた。
その結果、五分もしない内に裏の組織が一つ潰れた。
「っし、ここら辺で良いか」
周囲に人がいないことを確認すると、亜空間から瞬殺したクズたちを取り出し、一気に焼いていく。
匂いが周囲に向かわないよう、風の魔力で全て上空へ移動させながら完全燃焼。
そして善は急げといった様子で街に戻り、ノンビーラ家を訪れる。
「おや、お二人ともどうしたんですか?」
門兵は二人が今日は来ない事を知っていたため、突然の訪問に首を傾げる。
「実はですね、ヴァルター様関連で少し怪しいことがありまして」
「っ、かしこまりました。少々お待ちください」
門兵の一人が超速足で屋敷へと向かってから数分後……超速足で戻ってきた。
「どうぞ、中へご案内します」
すんなりと中へ通され、ギャルバの執務室へと入る。
そこには既に会話を行うセッティングがされており、二人の紅茶まで淹れられていた。
「まず最初に、自分たちはとある視線を感じ、離れた場所から自分たちを見ていた人物へ詰め寄りました。降参の意を示す、もしくは即座に謝罪があれば、別の対応を考えましたが、向こうが即座に抜剣しましたので結果的に二人とも始末しました」
「そうか。それは災難だったな」
年齢に合わない、常識はずれな存在ということは解っていた。
しかし、全く表情を変えずに同じ人間を始末したと、目の前の子供は口にした。
これまでに末恐ろしいと感じた子供は何人も見てきたが、目の前の子供ほど現時点で恐ろしさを感じさせる者はいなかった。
「それでですね、そいつらが情報を聞きだしてアジトに乗り込んだんです」
「……ん?」
「それなりに強い者たちもいましたが、二人だけでアジトに居る者は全員始末することが出来ました」
「…………」
ギャルバは紅茶を持っていた右手が止まり、目の前の少年が何を言っているのか理解出来ず、相槌すら打てない程固まっていた。
「その時にもしかしたらと思い、ギャルバ様の役に立てるかもしれないと……こちらの書類を持ってきました」
「………………そう、か。是非、見させてもらおう」
まだ完全には事情を飲み込めていないものの、下手な姿は見せられないという思いから、ようやく硬直が解け、取り出された書類に目を通し始める。
「あっ、因みにそいつらの金庫を持ってきました。これもギャルバ様に渡しておきますね」
「「…………」」
ギャルバだけではなく、取り出された金庫を見て当主をサポートしなければならない老執事まで数秒の間ではあるが、完全に固まってしまった。
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