なさけない連中

「あんたらだな。俺たちをこそこそと見てたのは」


「ッ!!!」


目立たない衣装を身に付けていた男は即座に短剣を抜くものの、それよりも先にティールの手が動いた。


「なっ!?」


「降参しない。ジロジロとこっちを見てたことに対して謝罪をしない、か」


抜剣しようとした短剣はまだ鞘から抜かれておらず、瞬時に動いたティールの手によって抑え込まれていた。


「それで抜剣するってことは、もうそういうことだよな」


「まっ、あがっ!!??」


まだ違付いた瞬間に降参の意を示す、もしくは即座に謝罪していれば……拳が腹にめり込むこともなかった。


「逃がさないからな」


自分に対して敵意があると解かると、まず両手を潰しに掛かる。


高価ではあるが、即座に使用者は別の場所に転移するマジックアイテムがあるのを知っている為、まずは逃げられることを防ぐために両手……もしくは両腕を潰すことが最優先。


(な、なんなんだこのガキは!! この俺の速さを、上回るだと!?)


男は自身の速さにそれなりの自信を持っており、まず冒険者と言えど子供に上回られることはないと油断していた。


「いっ!? がっ!!??」


「ちゃんと逃がさないから安心してくれ」


「っ!!??」


魔力の刃で切傷をつくると、そこから麻痺毒をぶち込む。


「そっちも終わってたか」


「お疲れ、ラスト」


ティールが倒した男は手と腕だけが破壊された状態だが、ラストに倒された男は両腕と両足が破壊され、完全に逃げられない状況に追い込まれていた。


「ふ~~~ん……絶対に何が何でも口を割らないって顔してるな。まっ、別に良いんだけどさ」


見た目は子供、中身も一応子供ではあるが、そういった事が出来ない訳ではない。


現在ティールたちがいる場所は人気のない裏路地。

そこで更に風の結界を展開し、声が周囲に聞こえないようにする。


「それじゃ、ちゃちゃっとやるか」


ニコニコ笑顔……ではないものの、先程までと全く変わらない淡々とした表情で作業が進められる。


「「~~~~~~~~~~~っ!!!???」」


「変に我慢するんですね。まっ、こっちとしても声を出さないのは有難いですけど」


そう言いながら風の針をぶすぶすと刺し、体内で小さな破裂を起こす。


他にも細かい魔力操作で爪を剥がしたりなど、痛みが途切れない拷問が続く。


「そろそろなくなってきたな……回復させるか」


「「っ!!??」」


回復範囲を上手く調整し、骨折などは直さない程度になくなった爪などを治していき……再び拷問を開始。


失血死してしまうと情報を引き出せなくなってしまい、回復魔法でもそのあたりはどうしようも出来ない。

そのため、出血量が少ない拷問を何度も何度も繰り返し……リミットを迎えたのは男たちの方だった。


「同じ伯爵家からヴァルター様の殺害を頼まれた。んで、最近別の貴族が送ってきた刺客を潰した俺たちの動向を探り始めたってことか」


「ノンビーラ家と同じく武家の貴族からの依頼とは……自分たちの地位を脅かす目は先に積んでおきたいということか……なんとも情けない連中だな」


「ヴァルター様の性格からして、他の武家を見下したりはしないと思うが……まっ、他家からすればそんな個人の性格や感情なんて関係無いってことか」


「た、頼む! もう知ってることは全部話した!!! だからっ!」


大の大人が鼻水を垂らしながら涙を流し、子供に見逃して欲しいと懇願。

状況を知らない者からすれば、なんとも情けない光景に思えるだろう。


「えぇ、そうですね。色々と話してくれたので、ちゃんと殺してあげます」


「「……」」


激痛を何度も何度も浴びても、精神は壊れていなかったからか……全てを話せば助かるというありもしない希望を持っていた男たちに対し、一切の希望を与えることなく首を切断。


死体を灰にした後、男達が所属していた組織が街内にあるということで、日が暮れる前に迷うことなくアジトへ向かった。

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