教えたくなる

「そうですね……聖剣技と暗黒剣技、どちらも剣技ですから……おそらく、ロングソードでなければ使えないという縛りなどはありませんよね」


「……多分、問題無いと思います」


「それでは、短剣……もしくは双剣を学んでみませんか」


ティールとしてはそちらの方がそれなりに教えられる技術であり、理論的にどういったメリットがあるかなどを伝えられる。


「短剣技に双剣技……分かりました。その二つを、教えてください!!」


「えぇ、任せてください」


早速レクチャーを開始。

ティールは短剣技、双剣技に関してデメリットらしいデメリットは他の武器に比べ、リーチの短さと攻撃力の低さぐらいしかないと思っている。


(ヴァルター様は反応速度も良いし、敵の動きを冷静に捉えられる眼も持ってる……って、そう考えると本当に色々と持ってるな。まっ、血統とかを考えたら絶対にあり得ないってわけではないか)


自分の得意分野ということもあり、まだ幼いヴァルターが全てを理解出来るかはさておき、ティールは自身に教えられる事をどんどん教えていく。


「あ、ありがとう、ございました」


「はい。それではまた明日の朝に来ますね」


「よ、よろしく、お願いします」


高速移動中に攻撃魔法を詠唱なしで放つ高等技術を教えている時よりも活き活きしており、それに気付いたヴァルターは何故か嬉しくなり、必死でティールの教えを吸収しようと……少々頑張り過ぎた。



「ふふ。とても活き活きとしてたな、マスター」


「そ、そうか? 確かに、ちょっとハイペースで色々と伝え過ぎたかもな……ヴァルター様は優秀だから、教えられることはどんどん教えたくなるんだよな~」


「……物分かりが良く、素直なのもそう思わせる点なのだろうな」


ラストもティールと同じ気持ちであり、模擬戦の最中でもちょいちょいアドバイスを挟むことが多い。


「素直にこっちのアドバイスを受け入れるてくれるのは本当に嬉しいというか有難いというか……ん?」


「どうした、マス、ター…………チッ!」


まず最初にティールが違和感に気付き、次いでラストも直ぐに同じ違和感に気付いた。


(これはあれだよな……絶対にすれ違ってる大多数の人たちの視線じゃないよな)


(陰から見てるということは、冒険者や騎士の類ではなく裏の連中か……戦る気か?)


これまで何度も多くの者たちから一度に視線を向けられたからこそ……ダンジョン内で黒い連中に狙湧荒れたことがあるからこそ、どういった連中が自分たちに視線を向けているのか察することが出来る。


「……弟子関連だと思う?」


「…………六割はおそらくそれ関連だろうな」


「残りの四割は?」


「以前俺たちに裏の連中をけしかけてきた貴族、もしくはヤドラスの遺跡で遭遇した謎の四人組関連」


「あぁ~~~、そっか。そういう可能性もあるか」


二人が黒い者たちに絡まれたのは過去に二件。

今回の意見も含めれば、三件目となる。


(……一番楽なのは、以前俺たちに裏の連中をけしかけてきた貴族の坊ちゃん関連だな)


再び自分たちを始末しようと人を寄越すのであれば、今度はクララ・インタールの実家だけではなく、トリンス伯爵とノンビーラ伯爵にもこの一件を伝える。


そうなれば……もはやグリフォンという怪鳥に敗走した坊ちゃんに逃げ場は亡くなったも同然。


しかし、他二つの件であれば、ささっと片付けようと決めて動く訳にはいかなくなる。


(俺たちが派手に動けば……父さんたちはどうなる?)


知性のスキルを持ってることもあり、結果として自分の行動がどういった惨事に繋がるか予想出来てしまう。


「…………………………いや、思い知らせた方が効くか」


「「ッ!!??」」


考えが纏まった瞬間、ティールは周囲の通行人、住民たちに迷惑が掛からない様、地面を蹴った。

主人の言葉に耳を澄ませていたラストも同じく、瞬時にティールが跳んだ方向とは別方向に跳んだ。

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