用意出来るのか
「だっひゃっひゃっ!!!! そんなにハッキリとリースからの頼みを断ったんか」
「師だからといって、曖昧な答えを返すのも良くないと思って」
「はっはっは! 変なところが真面目だな~。まっ、それだけハッキリと断られたら、リースも再度頼み込むことはなさそうだな」
リースに大量の魔石等を渡した日の夜、ティールは先日とは違ってジンとラストの三人で晩酌を楽しんでいた。
「けど、リースがお前にそういうのを頼みたくなるのも解るな」
「……まず俺に頼む前に、ジンさんに頼むべきじゃないですか?」
「俺がいない間に、村に面倒なモンスターが襲撃してきたらどうするんだよ」
「なるほど。確かにそれはアウトですね」
もう一人の師の言葉にハッとさせられる。
とはいえ、「そっか、そういう理由があるなら……まっ、仕方ないか。リースさんの頼みだし、引き受けよう」とはならない。
「でも、面倒事になるのが目に見え過ぎている依頼を受けるのは避けたいですね」
「だっはっはっは!!! それもそうだって話だな。ラストも同じ考えか?」
「ふむ…………学園には、強者たちが多いのか?」
「親から預けられている生徒を守る立場でもあるからな。それなりに強い奴らは多いと思うぜ」
ジンの言葉に嘘はない。
それを踏まえて上で十秒ほど考え込むが……首を横に振り、メリットがないと判断。
「それなり、では困るな。加えて、マスターはともかく、俺は他者を指導することが得意ではない」
「メリットが感じられないってことだな。ってなると、学園がお前らを諦められなかったとしたら、どういった報酬を用意するかによるよな~」
「…………そうですね。リースさんの頼みを断った手前あれですが、魅力的な報酬を提案されたら、依頼を受けても良いかと思ってます」
さすがに態度が傲慢過ぎる?
二人にはそれほどの実績があるため、元冒険者であるジンからしても、ティールの態度は至極当然。
(二人を釣るってなると、おやっさんやリースの奴にモンスターの素材を大量に渡すぐらいだから、本当の本当に……マジのマジでそこまで金に執着はない。ってなると、武器に使えそうなモンスターの素材や魔石、鉱石になってくるよな)
白金貨を何十枚、仮に黒曜金貨を用意したところで、二人は気分が乗らなければ受けることはない。
ただ、二人が納得するモンスターの素材や魔石、鉱石を用意するのも……それはそれで非常に困難。
(Bランクのモンスターであれば、間違いなく二人は倒せる。他の個体と比べて強さが二回りぐらい高くても、二人でなら確実に討伐出来るだろう。鉱石に関しては……学園側がミスリル以上の鉱石を用意出来るかどうかだよな~)
二人は以前にミスリルゴーレムを討伐しており、ミスリル鉱石に関しては全く困っていない。
造る鍛冶師側にとって……使う戦闘者側にとっても一流の素材、証であるミスリル。
当たり前だが、用意するのは簡単ではない。
「でも、俺たちなんかを相手に、そこまで学園側が特別な報酬を用意することはないと思います」
「お前の考えてることも解るが……ティール、お前は自分が極めて特例的な存在だってのは理解してるだろ」
「それは理解してる」
「…………今すぐではなくても、半年後か一年後には……向こうがお前ら二人が納得する物を用意するかもな」
ソロでBランクモンスターの討伐が可能。
リーダーであるティールだけではなく、パーティーメンバーのラストもその偉業を達成できるだけの戦闘力を有している。
加えて、十五階層とはいえボスモンスターがBランクモンスターであるダンジョン、森林暗危を何度も最下層まで攻略している。
多少とは言え貴族との関りがあり、いきなり襲い掛かってくるような屑人間たちとの戦闘経験もあり、単純な裏の人間に襲われた経験もある。
そこまで冒険者人生が充実している二人であれば、リースが諦めても学園側が諦めない可能性は十分にある。
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